SCAT:美容業界のシステム全般をカバーする独自ポジション、潜在市場開拓とM&Aによる非連続な成長に注目
*14:48JST SCAT:美容業界のシステム全般をカバーする独自ポジション、潜在市場開拓とM&Aによる非連続な成長に注目
SCAT<3974>は、美容業界向けのITソリューションの開発・販売などを主たる事業(美容ICT事業)とする、1969年に設立された企業である。同社は、7拠点を有し全国展開している美容ICT事業に加え、中小企業へ事務代行・経理代行などを提供するビジネスサービス事業と介護サービス事業を、本社のある栃木県における地域密着型のビジネスとして運営している。2024年10月期における事業別の売上高比率は、美容ICT事業が59.6%、ビジネスサービス事業が12.5%、介護サービス事業が29.0%である。美容ICT事業の競合は、タカラベルモント、エクシードシステムといった未上場企業となる。
同社の主要事業である美容ICT事業の最大の特徴は、美容サロン、美容ディーラー、美容サロン顧客といった美容業界の全ての主要プレーヤーにソリューションを提供していることだ。競合企業の多くが美容サロンなど単一のプレーヤー向けのソリューション提供にとどまっている中、同社のソリューションは美容業界のネットワークを構築、美容業界のワンストップ・ソリューション・サービスとなっている。同社の美容サロン向けシステムのカバーする業務は、レジ精算や予約管理にとどまらない。顧客カルテによる来店履歴・購入履歴や仕上がりの写真データなどの確認、店舗別・スタッフ別の売上日報・売上月報の作成、シャンプーなど商材の在庫管理やスタッフの勤怠管理といった機能も持ち合わせている。さらに、同社のソリューションは、店舗やスタッフ、顧客ごとの売上、顧客の来店回数・サイクルなど蓄積された様々なデータをもとに、様々な分析を自動的に行う機能を具備。店舗の売上拡大やスタッフのモチベーションアップ、顧客満足度の向上を目指す美容サロン経営者にとって、価値あるコンサルティング機能を提供していると言える。
2024年10月に公表された厚生労働省の「令和5年度衛生行政報告例」によると、2023年度の全国の美容サロン(美容所)は274千件。過去5年間、減少傾向にある理容所と異なり、美容サロン数は2019年度の254千件から一貫して増加している。同社の主要な顧客である大型店舗及び複数店舗を運営する美容サロンの店舗は、このうち約1割の27千件程度。同社の顧客となっている美容サロンの総店舗数約5千件の5倍以上であり、美容ICT事業の成長余地はまだ十分にあると見て良いだろう。
2025年10月期第1四半期の売上高は674百万円(前年同期比7.1%減)、営業利益は29百万円(前年同期比33.9%減)となった。主力の美容ICT事業において、当四半期は受注の獲得に注力、売上がWindows10の入替需要のある下半期に集中したことが主な要因であり、当初の計画通りの進捗とのこと。ビジネスサービス事業および介護サービス事業は、増収増益となっている。通期業績予想は、売上高2,718百万円(前年比4.8%増)、営業利益215百万円(前年比45.8%増)との見込みである。
2025年10月期は、2026年10月期を最終年度とする中期3カ年計画(中計)の2年目の年度にあたる。最終年度の財務目標数値は、売上高30億円、経常利益3億円、経常利益率10%、ROE8%、PBR1倍である。既存事業の拡大と深化に加え、スピード感のあるさらなる成長に向けて、同社はM&A・アライアンスにも積極的に取り組む方針だ。2024年10月期に、同社はエム・エイチ・グループ<9439>との資本提携を強化、両社ソリューションの連携拡大を図るとともに、美容業界のBtoBクレジット決済の普及に取り組んでいる。今後は、美容ICT事業の開発力向上に寄与するソフトハウスや、介護サービス事業の拡大に資する介護施設などが、買収のターゲット候補だ。
同社は株主還元にも積極的であり、当初13円としていた2025年10月期の年間配当予想を14円に修正した。同社は業績に応じた継続的かつ安定的な利益配分を基本方針としており、2020年10月期から4年連続の増配を達成、今期も予想通りとなれば5年連続の増配となる見込みだ。10倍割れのPER、1倍割れのPBRといった指標の水準は、株価に対してサポート材料となることが期待できる。美容ICT業界を中心に成長余地が十分にあり、M&A・アライアンスによる非連続的な成長を期待できる銘柄として、同社の今後の動向には注目しておきたい。
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