アクシス Research Memo(7):ITコンサルへのシフトに向けて、人材育成やM&Aなど成長投資を積極化
*11:07JST アクシス Research Memo(7):ITコンサルへのシフトに向けて、人材育成やM&Aなど成長投資を積極化
■アクシス<4012>の中長期の成長戦略
● 中期経営計画と進捗状況
(1) 中期経営計画「Vision 2027」
同社は中期経営計画「Vision 2027」において、事業構造の大きな変革を目指している。中核となる経営方針は、SI事業で培った技術力と顧客基盤を生かしつつ、事業の軸足を付加価値の高いITコンサルティングへとシフトすることである。
DXやクラウド、AI関連のIT投資が国内で拡大を続けるなか、同社は単なるシステム開発にとどまらず、顧客の経営課題解決に直接貢献する提案型のビジネスモデルへの転換を図る。具体的には、事業戦略として「ITコンサルへのシフト」「成長性の高い領域(AI、FinTech、クラウド等)の拡大」「クラウドサービスの拡充」の3本柱を掲げている。これらにより、顧客との関係性を強化し、プロジェクトの全工程(コンサルティングから開発、運用・保守まで)を一気通貫で支援することで、収益機会の拡大と利益率の向上をねらう。
(2) 財務目標と投資計画
本計画の最終年度である2027年12月期において、同社は以下の財務目標を設定している。
1) 売上高:12,000百万円以上
2) 営業利益:1,500百万円以上
3) 営業利益率:12.5%以上
4) ROE:15%以上
5) 配当性向:35%以上
2025年12月期の業績予想の売上高8,593百万円、営業利益919百万円をベースにすると、売上高、営業利益ともに相応の距離感はある。一方で、直近3年間(2021年12月期〜2024年12月期)の売上高成長率16.0%、営業利益成長率16.1%を踏まえると、挑戦的であるが十分に達成可能な水準であろう。
加えて、同社は目標達成に向け、戦略的な投資を計画している。総額55億円の投資枠を設け、内訳としては、M&A30億円、人材投資20億円、サービス開発投資5億円としている。今後、ITコンサルティングへのシフトと成長領域の拡大を加速させるため、高度スキル人材の採用・育成、業域の拡大や技術・人材獲得を目的としたM&Aが成長のカギを握ると考える。
また、株主還元についても、安定配当を継続しつつ、2027年に配当性向35%以上を目指す方針を明確にしており、成長と還元の両立を目指す姿勢を示している。
同社は、中期経営計画の目標達成に向け、「ITコンサルティングへのシフト」を重要課題として認識している。顧客が抱えるビジネス課題に本質的に向き合うためには従来のSI事業から、ITコンサルティングへのシフトが必要であり、結果として高単価・高付加価値な案件獲得につながると考えている。
具体的な施策として、コンサルティングファームとの協業推進と、PM(プロジェクトマネージャー)やPMO(プロジェクト・マネジメント・オフィス)といった上流工程を担える高度スキル人材の採用・育成強化を進めている。協業によってコンサルティングのノウハウを吸収し、自社の人材をリスキリングすることで、提案力の強化を企図している。
今後の展望として、人材戦略が計画どおりに進み、上流案件を継続的に獲得できる体制を構築できるかが焦点となる。また、SI事業とITコンサルティング業務に明確な境目はないため、高度人材の育成が、既存のSI事業においても成長性・収益性が高い案件獲得につながっていくことが期待される。
また、M&Aについても、ITコンサルティング能力や成長領域の技術・人材を持つ企業はシナジー効果が見込めるため、成長を加速させるアップサイド要因になろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 三浦 健太郎)
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