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銘柄/投資戦略 2025/02/21 13:08 一覧へ

インテリックス Research Memo(8):2025年5月期通期業績を上方修正、2期連続増収増益の見通し(2)

*13:08JST インテリックス Research Memo(8):2025年5月期通期業績を上方修正、2期連続増収増益の見通し(2) ■インテリックス<8940>の今後の見通し

(2) 先行投資事業の拡充
同社は中期的な成長戦略として、快適な住まいと電気代の節約、CO2削減といった環境への貢献を実現する省エネリノベーション「エコキューブ」を業界に先駆けて投入した。省エネリノベーションを差別化商品とすることでシェア拡大を図るとともに、不動産流通市場のDXを支援するFLIE事業を新たな収益源として育成し、中長期的に持続的な成長を実現する経営基盤の構築を目指す。

a) 省エネリノベーション「エコキューブ」の普及拡大に向けて
住宅の省エネ化についての国の制度は新築住宅で進んでおり、2023年9月に改正建築物省エネ法に基づき省エネ性能表示制度のガイドラインが公表された。2024年4月から新築住宅において省エネ性能表示が開始され、2025年4月以降は省エネ基準に適合することが義務化される。省エネ性能表示とは、住宅のエネルギー消費性能や断熱性能、年間の目安光熱費などを所定のラベルを用いて表示するものである。

既存住宅についても検討委員会が開催されたが、同社はこれに先立って独自に省エネ性能を計算し、“見える”化した商品「エコキューブ」を販売している。同社の子会社であるTEI Japanが温熱計算などを行い、「省エネルギー性能レポート(以下、省エネレポート)」として目安光熱費やCO2削減量などを数値で可視化することで、省エネ性能値での住まいの比較検討を可能にした。

ただ、高効率の熱交換換気システムや新たな断熱工法を導入するため、「エコキューブ」の販売価格は割高となっており販売実績もまだ少ない。同社ではこうした状況を考慮し、2025年2月に「エコキューブ」の登録商標を(一社)リノベーション協議会に無償譲渡した。「エコキューブ」を省エネリノベーションの業界統一基準とすることで認知度向上を図り、省エネリノベーションを加速度的に普及させることが目的だ。リノベーション協議会では従来、住宅の断熱性能や消費エネルギー性能基準等により「R1住宅エコ」基準を設けていたが、同基準のなかでも「省エネ基準適合住宅相当」のより省エネ性能値が高い基準※について「エコキューブ」という名称に変更した。「エコキューブ」については引き続き「省エネレポート」が提供される。同レポートについてはTEI Japanが作成していたが、今後同業他社が「エコキューブ」を販売する場合、「省エネレポート」はTEI Japan以外で作成することも可能となっている。

※ 「RI住宅エコ表示」を断熱性能や消費エネルギー性能基準により4段階(★の数が0~3個)に分けて表示しており、このうち★1個以上の住宅を「エコキューブ」の名称に変更した。

省エネリノベーションについては、脱炭素への取り組み意識の高い大手不動産会社において関心が高いようで、今後は同社がメーカーと共同開発した熱交換換気システムや新たな断熱工法を採用した「エコキューブ」の販売が拡大するものと期待される。同社にとっては、自社の「エコキューブ」の販売増に加えて、「エコキューブ」の内装工事や熱交換換気システムの販売、新断熱工法の使用許諾料等の増加が見込まれる。

b) FLIE事業
子会社のFLIEで、売主・不動産仲介会社の業務効率化を支援するオンライン・オフライン一体型のDXサービス「FLIE ONE」と、売主と買主が自由に安心して直接取引ができる不動産売買プラットフォーム「FLIE」の2つの事業を展開している。

なかでも2023年10月より開始した「FLIE ONE」については、今後の安定収益源に育つ可能性のある事業として注目される。主要サービスとして、物件確認から内見予約(24時間受付可能)、資料請求、価格変更までをWeb上で一元管理できる「フリエde物確」、物理鍵が不要で鍵の受け渡しに関連するリスクが低減するセルフ内見システム「Smaview」、物件清掃や写真/動画撮影などの販促支援サービスがあり、2026年5月期にも単年度黒字化が見込める状況となっている。

特に、「フリエde物確」については導入後に電話対応時間が約65%減少するなど導入効果が確認されており、三井不動産リアルティ(株)をはじめ大手不動産仲介会社を中心に相次いで導入が進んでいる。2025年1月からは宅建業法の改正により「囲い込み」営業※が処分対象となり、不動産取引の透明性が今まで以上に求められる環境となってきたことも追い風となり、今後業界標準となる可能性がある。

※ 仲介会社が売却物件を自社で独占的に取り扱おうとする行為。仲介会社が自社の利益を最大化するために、売却物件を他社に紹介せず自社の買主と成約させ、他社からの問い合わせを意図的に遮断することで、値下げを促し最終的に仲介会社自身によって買い取るケースなどが問題視されている。2025年1月より宅建業者には物件の取引状況をレインズ(不動産流通標準情報システム)に登録することが義務付けられ、その内容に虚偽があれば処分対象となる。

「Smaview」に関しては、次世代のスマート入退室管理サービス「Smartview2.0」の提供を2024年9月より開始した。スマートフォンのWebアプリでオートロックを含むあらゆる物件の解錠が簡単にできるほか、管理者は物件の入退室記録をリアルタイムでオンライン管理できるなど、セキュリティ対策を強化した。機能強化により、対象市場も賃貸物件の内見だけでなく、マンスリーマンション・民泊運営、施工管理、オフィスビル管理、倉庫・物流センターなど、鍵を使って入退室が発生するあらゆる場所に広がり、成長ポテンシャルが高まった。三菱地所レジデンスをはじめ導入企業が続々と拡大している状況だ。また、宿泊業界向けに特化した専用管理システムについても現在、テスト稼働中で、問題が無ければ本格運用に移行する。

一方、不動産売買プラットフォーム「FLIE」に関しては、売主直販となるため仲介手数料(取引物件価格の約3%)が無料となり、購入者は従来よりも低コストで住宅を取得できるメリットがある。中古マンションの掲載物件数は2025年2月末時点で自社及び他社物件あわせて2千件超、登録会員数で9千人超と中古リノベーション不動産売買専門サイトとして業界最大級の規模となっている。「FLIE」を通じた販売実績は他社物件含めて月数十件ペースと徐々に増え始めている。自社物件は現在首都圏のみだが、今後大阪支店を新設し京阪神エリアの物件の取り扱いも開始する予定だ。

(3) 人的資本経営の推進
創立30周年を迎え、次なる成長を見据えた次世代人財の育成と体制づくりに着手している。具体的な取り組みとして、2024年春より積極的な新卒採用を開始したほか、新人育成や階層別研修などの人財育成プログラムを強化し、中長期的な成長を実現するための人的リソースの拡充に取り組んでいる。また、宅建や一級建築士などの資格取得のための支援制度(資格取得費用の補助等)を導入したほか、グループ社員のモチベーション向上施策として譲渡制限付き株式の付与や、拠点長の評価制度の見直し(各拠点の収支状況に応じたインセンティブ付与)を実施した。管理部門スタッフの賞与体系見直しについても、2026年5月期に実施する予定だ。そのほか、創立30周年プロジェクトとしてリノヴェックスマンションのブランドロゴ刷新や会社案内動画の制作、各種PR施策の実施等によるブランディング向上に取り組んでいる。同社では、これらの取り組みと併せて定期的に従業員に対するエンゲージメント調査を実施し、課題の抽出と改善施策を立案・実施することでエンゲージメントの向上を図る。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)

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