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銘柄/投資戦略 2025/12/11 12:11 一覧へ

ノムラシステム Research Memo(1):2025年12月期はプライム案件比率が高まり、上方修正の公算大

*12:11JST ノムラシステム Research Memo(1):2025年12月期はプライム案件比率が高まり、上方修正の公算大 ■業績動向

ノムラシステムコーポレーション<3940>は1986年2月の設立以来、企業のオープン化コンサルティング業務などを展開してきた。ITの急速な進化に対応し、ソフトウェア設計請負中心の事業構造から、ERP(基幹系統合システム)パッケージ導入コンサルティング業務へと経営資源をシフトした。同社が注力する次世代戦略事業部ではライセンス販売を積み重ねており、これをベースにシステム更新需要などによるストックビジネス化を通じた安定的な収益確保を目指す。ストックビジネスの増加は、業績の着実な向上につながる。同社は、国内ERP市場やクラウド、ビッグデータ市場の拡大を見込んでおり、コンサルティング企業として成長余地は大きい。

1. 2025年12月期第3四半期の業績概要
2025年12月期第3四半期累計決算は、売上高が2,487百万円(前年同期比2.2%増)、営業利益が432百万円(同8.6%増)、経常利益が439百万円(同10.2%増)、四半期純利益が299百万円(同9.6%増)となった。

通期予想に対する進捗率は、売上高が71.6%にとどまる一方、利益の項目はいずれも100%を超過した。これは、既存取引先の追加発注により全体に占めるプライム案件※の比率が向上し、採算性が向上したためと言える。

※ クライアントから直接受注し、全工程を同社のコンサルタントが担当する案件のこと。プライム案件は利益率が高い。

個別案件では、(株)NHKエンタープライズから受注したSAP S/4HANA導入プロジェクトが納入期限までに完了した。同社の強みであるプロジェクト成功率100%を具現化した事例である。一般的に、この種のプロジェクトは1~2年の遅延が生じることが多い。納期どおりの納品が評価され、業務改善提案による追加受注にもつながった。さらに、大手自動車部品メーカー、公立大学、大手製薬会社などからの受注が順調に推移し、プライム案件やPMO(Project Management Office)サービス案件が業績をけん引した。このほか、(株)OKIソフトウェア、ボッシュ・グループの傘下企業との3社共同で国内製造業向け「SAP Cloud ERP」テンプレートの開発を開始した。

既存のFIS(Function Implement Service)が減少する一方、同社はプライム案件へのシフトが続いている。FIS案件は外注コストがかかるため売上高全体は伸びが鈍化したものの、近年では利益率が改善傾向にある。これは、全体の売上高に占めるプライム案件の増加が顕著となったためである。

これにより利益率が上昇し、計画を上回る進捗率を達成した。数年前は3割台で推移していた全体に占めるプライム案件の比率は現時点では6割に上っている。従来型のFIS案件のように部分的な支援業務と比べてプライム案件は売上総利益率で10ポイントほどの差が生じるため、今後はプライム案件の受注確保が課題となる。

一方、次世代戦略事業部のDX事業への先行投資も強化している。DX事業への投資によりコスト上昇につながる可能性はあるものの、今後の成長につながる先行投資と位置付けられる。

2. 2025年12月期の業績予想
2025年12月期の業績予想は、売上高が3,472百万円(前期比6.0%増)と引き続き増収を見込むが、営業利益は417百万円(同18.9%減)、経常利益が417百万円(同18.9%減)、当期純利益が285百万円(同22.3%減)と2ケタ減益を予想している。しかし、進捗率を踏まえれば、利益項目は通期計画を上回ることが予想されるため、上振れる公算は大きい。同社は、必要な場合には業績予想を見直すとしている。

当面も収益向上のカギとなるプライム案件は着実に増加する見込みである。「高付加価値ソリューションの提供」を目指し、重点施策を推進する。具体的には、「SAP S/4HANA」のリプレイス需要を取り込むため、SAP認定コンサルタントの資格取得を推進し技術力を強化する。さらに、「SAP SuccessFactors」拡販のためのクラウドソリューション強化も図る。また、既存のシステムについてクラウドを導入していない企業が多いことから、クラウドへの置き換えを進めるなど、新たなビジネスチャンスの拡大が見込まれる。



■当面の事業展開

後継製品にリプレイスする2027年までを飛躍の期間に

現在の主力である「SAP ERP 6.0」が2027年にメンテナンス終了予定である。この、いわゆる「SAP 2027年問題」を控え、同社は「SAP S/4HANA」へ完全移行が完了する2027年までを大きな成長期として位置付けている。「SAP S/4HANA」を土台に、SAP ERPとビッグデータ分析、AI、IoT、クラウドといった先進技術を組み合わせる、競合優位の確立を目指す。これを実現するため、レベルの高い人材育成及び採用が課題となる。

1. 次世代戦略事業部によりDX事業の推進
DXサービスを展開する次世代戦略事業部の活動を強化している。次世代戦略事業部単独での引き合いが活性化しており、今後はストックビジネスの受注拡大を目指す。人材面では、引き続き、現在3%前後となっている離職率の抑制に努める。同時に、コンサルタントの育成に重点を置き、成長を目指す。

2. PMOサービスへの注力
同社は、戦略的ERP導入コンサルティングのノウハウと開発プロジェクトの経験を基に、プロジェクト成功率を最大化するPMOサービスを提供している。大企業を中心とした顧客基盤を持ち、累計売上規模は約140兆円に上る。大企業の平均的なIT予算を2%と仮定すると、2.8兆円の市場規模が存在する。今後も営業基盤の強化を図る。

3. 製品戦略
製品戦略としては、自社ソリューションの開発に注力し、訴求力のあるテンプレートを開発することで、プライムプロジェクトの受注増を目指す。特に注目すべきは、2023年6月にプロトタイプが完成した著作権テンプレートである。著作権に関するビジネスは、NHKエンタープライズのプロジェクトで実績を挙げたほか、引き合いが活発化している。



■株主還元

2025年12月期は3.25円配を継続。自社株買いを3期連続で実施

無借金経営及び事業規模に照らすと、キャッシュリッチな企業と評価できる。2024年12月期末時点の自己資本比率は87.8%と極めて高い。同社は安定配当を継続する方針で、2024年12月期の年間1株当たり配当金3.25円の配当を2025年12月期も継続する。配当方針としては、内部留保の充実を図る一方で、配当性向40%以上の安定配当を継続的に行う。2024年12月期の配当性向は40.8%であった。

一方、自社株買いを3期連続で実施し、今後も株主還元について前向きに対応する方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)

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