トヨクモ Research Memo(6):2025年12月期は「NotePM」の拡販動向に注目
*13:06JST トヨクモ Research Memo(6):2025年12月期は「NotePM」の拡販動向に注目
■今後の見通し
1. 2025年12月期の業績見通し
トヨクモ<4058>が属するクラウドサービス市場においては、業務の効率化や生産性の向上を実現するためにDXの重要性が高まっている。また、コロナ禍を契機にリモート勤務をはじめとする多様な働き方が普及し、今後も時間や場所にとらわれず利用が可能なクラウドサービスの需要は増えていくと見られる。弊社では、こうした状況を背景に企業のITへの投資が増加し、なかでもクラウドサービス市場は今後も高成長を続けると見ている。
2025年12月期の業績見通しは、売上高で前期比46.2%増の4,600百万円、営業利益で同20.4%増の1,400百万円、経常利益で同20.4%増の1,400百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同30.7%増の1,100百万円である。売上高については、安否確認サービスとkintone連携サービスの有償契約数の伸長が引き続き見込まれている。営業利益率は前期の36.9%に対して30.4%と低下する見通しだが、これは社員数を例年の採用ペースどおり20名程度の採用を計画していること、積極的に平均賃金の引き上げを進めていることなどが影響している。加えて、2025年1月にプロジェクト・モードを買収したことによる償却負担も発生する見込みである。詳細な金額は算定中のため第1四半期決算のタイミングで開示予定としているが、償却期間7年程度、通期で2億円程度の償却費用を織り込むもようである。このほか、同社は高い売上成長を持続しながら中長期的に営業利益率30%以上を継続するため、売上比率で30%を目途とした人件費及び営業利益率30%を意識した規律ある広告投資を両立する計画である。同社では期初計画をやや保守的に発表する傾向が強く、2022年12月期~2024年12月期ともに第3四半期決算発表時に通期業績予想の上方修正を発表した。kintone連携サービスの価格改定効果により直近の月次売上高は大幅に増加しており、このペースが続けば計画比で上振れでの進捗になると推察される。
2025年12月期の注目点は、2025年1月8日に子会社化したプロジェクト・モードが展開するマニュアル作成・ナレッジ管理SaaS「NotePM」の拡販である。「NotePM」は、業務マニュアルやノウハウの投稿、強化した検索機能により必要な情報入手を容易にする社内wikiツールである。これまで社内wikiツールは主にIT企業を中心に導入されてきたが、「NotePM」は使いやすさと課題解決力を有し、非IT企業を中心に支持されている。ナレッジマネジメント市場は拡大期にあり、同社のコア事業である安否確認サービスよりも市場規模は大きく、成長ポテンシャルを有している。また、同社とプロジェクト・モードのビジネスモデルが極めて近く、シナジーを最大限に発揮することで今後の事業拡大が期待される。
ビジネスモデルを磨き上げ、「ITの大衆化」を目指す
2. 中期成長戦略
(1) 経営戦略
同社は、IT初心者においても、簡単でシンプルで分かりやすいサービスを提供する「ITの大衆化」の実現を目指している。現在のクラウド型のビジネスモデルを突き詰めることで、中期的に大きな成長を目指す戦略である。具体的には、ビジネスサイクル(トライアルモデルで低価格にサービスを提供→効率的な業務で高収益を確保→給料を高くし優秀な人材を採用→能力が発揮できる環境→簡単便利なサービスを創出)を意識し、日々の活動を続けている。
(2) 事業戦略
a) 安否確認サービス
従前、安否確認は自社従業員に対して行うものとして考えられていたが、企業が災害時に事業活動の継続を検討するためには、取引先も含めたサプライチェーン全体での安否確認が必要である。同社のサービスは安否確認におけるどのような用途にも利用できるため、新たな活用方法として既に導入された企業を事例としてサプライチェーン全体に訴求し、需要の獲得を目指す。
b) kintone連携サービス
同社は複数のkintone連携サービスを提供している。それらのサービスは互いに連携し合うことでより便利に利用できるため、サービス連携による活用事例などを分かりやすく紹介することで、引き続きクロスセルによる顧客当たりの売上単価の向上を進めていく。
c) トヨクモ スケジューラー
社外の担当者との予定調整もできるというコンセプトで、同社は海外展開が狙えるサービスと考えており、今後は海外への展開も注目される。
(3) 製品開発
同社は、創業以来、様々な法人向けソフトウェアを開発してきた。創業時はカテゴリー数も多くあったが、その後収れんし、2024年12月期時点でのカテゴリー数は3カテゴリー(安否確認サービス、kintone連携サービス、トヨクモ スケジューラー)、サービス数は8サービスとなっている。2025年12月期には、買収したプロジェクト・モードの「NotePM」が加わり、4カテゴリー、9サービスの提供になる。今後も簡単でシンプルで分かりやすい法人向けクラウドサービスを提供するという同社のポリシーに沿って、サービスを拡充していくと思われる。
■株主還元策
2025年12月期の配当は6.0円増の20.0円を予想
同社は、財務体質の強化及び事業競争力を確保するため、将来の事業拡大に必要な内部留保の充実を優先しており、設立以来配当を行っていなかった。ただ、成長投資を優先し、事業拡大を目指していく方向に変更はないものの、株主への利益還元も重要な経営課題と認識している。同社は、2021年12月期より配当を実施することを決定した。
配当方針としては、期末当期純利益の20%程度の配当性向を基準として、株主への継続的な利益還元を実施する方針としている。今後は、同社の業績や取り巻く環境及び財政状況や将来の事業展開等を総合的に勘案し、適宜見直しを行っている。なお、同社の剰余金の配当の決定機関は、期末配当は株主総会、中間配当は取締役会となっている。また、同社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めている。
2021年12月期の1株当たり配当金は5.0円(期末配当)、2022年12月期の1株当たり配当金は2円増の7.0円(期末配当)、2023年12月期の1株当たり配当金は10.0円(期末配当)、2024年12月期の1株当たり配当金は14.0円(期末配当)であった。2024年12月期業績は期初計画から上振れて着地したが、配当金は期初計画どおりとなった。一方、200百万円を上限に自己株式を取得する計画(取得期間は2025年2月13日~2025年4月30日)で、配当金総額152百万円を上回り、総還元性向は約42%に達する見込みである。また、2025年12月期の1株当たり配当金は6.0円増配し、20.0円の予想としている。配当性向は2021年12月期の17.7%、2022年12月期の16.6%、2023年12月期の16.8%、2024年12月期の18.1%に対して、2025年12月期は19.9%の予想となっている。ただし、同社業績予想は保守的に作成されていることから、前期と同様に最終的に期初会社計画からの業績上振れ、配当は期初予想から据え置きとなった場合は、最終的な配当性向は19.9%を下回る可能性がある。同社では配当性向20%程度を目途に、安定して増配を継続する意向である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 星 匠)
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