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銘柄/投資戦略 2025/01/23 12:06 一覧へ

エヌ・シー・エヌ Research Memo(6):住宅分野の受注が回復、環境設計分野等も堅実に成長(2)

*12:06JST エヌ・シー・エヌ Research Memo(6):住宅分野の受注が回復、環境設計分野等も堅実に成長(2) ■エヌ・シー・エヌ<7057>の業績動向

2025年3月期、同社グループが手掛ける木造店舗等が続々オープンしている。2024年9月には、持分法適用関連会社であるMUJI HOUSEが設計施工した、「無印良品」初の木造建築店舗となる、床面積2,000m2規模の「無印良品」2店舗がオープンした。SE構法において最高ランクのZEB認証(建築物のエネルギー効率に特化した評価に関する認証制度)を取得した、国内初の2,000m2以上の大規模木造建築となる。また、同社が構造設計を行った物件として、2024年8月には「ブルーボトルコーヒー 豊洲パークカフェ」が、2024年9月には沖縄県に宿泊施設「YAWN YARD Kouri Island」がオープンした。同社と翠豊によるコラボ案件もスタートしている。同社のSE構法と、翠豊の有する大断面集成材特殊加工(湾曲集成材の加工技術)CLTパネルを組み合わせて設計施工を行う案件が動き出しており、シナジー発揮による受注拡大が期待される。翠豊の強みである高い木材加工技術と木材の球面加工等、湾曲集成材の製造技術を様々な木造建築に活用することで、需要拡大につなげる考えだ。木材加工について、現状ではまだ人手に多くを依存するが、重要部分の機械化により合理化を進める方針である。

環境設計分野の売上高は147百万円(前年同期比13.5%増)だった。2021年4月より住宅の省エネ性能の説明が義務化されたのをうけ、木造住宅や非住宅木造物件、及びリノベーション物件向けに受託した一次エネルギー計算書の出荷数が1,742件に達し、前年同期比で11.0%増加した。特にリノベーション案件については、2025年3月期中間期に115件を受託するなど増加しており、新築に比べて割安なリノベーション需要の拡大を背景に、今後の伸びが期待できる。従来から手掛ける長期優良住宅申請サポート件数は270件(同25.6%増)となり、売上高の増加に寄与している。また、2025年3月期よりマンションの省エネルギー計算の受注を開始した。2025年4月に始まる省エネルギー計算義務化の対象は新築マンションのみだが、対象外の中古マンションの省エネルギー計算義務化は脅威となるため、自主的に中古マンションのリノベーションに省エネルギー計算を付与して販売する業者の増加が予想される。2025年3月期の業績貢献は軽微だが、省エネルギー計算需要の増加による収益寄与への期待は大きい。

10年以上前から省エネルギー計算に取り組む同社は、豊富な経験をもとに、2025年3月期以降省エネ基準適合義務化への対応で優位性を発揮すると見られ、同セグメントの売上成長は続くと弊社は考えている。

DX・その他の分野の売上高は53百万円(前年同期比62.6%増)と大きく伸長した。木造建築向けITソリューションを開発・展開する子会社MAKE HOUSEでは、2021年10月に開設した「MAKE HOUSE BIM BASE(メイクハウス ビムベース)」を拠点に事業拡大に向けた人材育成を行い、BIM技術を活用した高画質建築空間シミュレーションサービス「MAKE ViZ」の営業活動を進めているが、2025年3月期中間期は受注が好調に推移し、同6.8%増の125件を受注した。MAKE HOUSEの提供する「MAKE ViZ」では、二次元の設計図面から精緻な3Dパース(視覚的な表現手法)を作成できる。ハウスメーカーや工務店では、設計だけでなく販売活動におけるプレゼンテーション資料向けとしても効果を発揮し、受注増加の要因になっているようだ。大手ハウスメーカーでは、富裕層向け高級住宅セールスにあたり、3Dパースを動画に変換して外見や間取り等を立体画像として説明するなど、販売促進機能で好評を博している。加えて設計書類の電子化が今後さらに進む見通しで、BIM(建築物のモデリング手法)技術の活躍機会の増加が期待される。

3. 財務状態
(1) 財政状態
2025年3月期中間期末における資産合計は6,511百万円となり、前期末比788百万円増加した。これは主に現金及び預金が454百万円、仕掛品が207百万円、無形固定資産が49百万円、投資有価証券が32百万円増加したことによる。負債合計は4,349百万円となり、同770百万円増加した。これは主に買掛金、電子記録債務が498百万円、未払金が108百万円、未成工事受入金が176百万円それぞれ増加したことによる。純資産合計は2,162百万円となり、同18百万円増加した。これは主に親会社株主に帰属する中間純利益の計上68百万円、非支配株主持分の増加15百万円、及び配当金の支払い65百万円による。

(2) キャッシュ・フローの状況
2025年3月期中間期末の現金及び現金同等物は2,649百万円となり、前年同期末比158百万円増加した。

営業活動によるキャッシュ・フローは633百万円の収入(前年同期は54百万円の収入)となった。主な要因は税金等調整前中間純利益の計上119百万円、売上債権の増加124百万円、棚卸資産の増加205百万円、仕入債務の増加498百万円、前受金の増加167百万円等である。

投資活動によるキャッシュ・フローは62百万円の支出(前年同期は217百万円の支出)となった。主な要因は有形固定資産の取得による支出12百万円、無形固定資産の取得による支出38百万円、投資有価証券の取得による支出9百万円である。

財務活動によるキャッシュ・フローは116百万円の支出(前年同期は179百万円の支出)となった。主な要因は配当金の支払65百万円、長期借入金の返済による支出37百万円、リース債務の返済による支出14百万円である。

2025年3月期中間期は、売上高が前年同期比わずかに減少したものの利益計上等もあって営業活動によるキャッシュ・フローはプラスとなった。これまでに蓄積した厚い内部留保を活用し、関係会社における成長領域での連携強化やサポート体制の構築に向け、投資活動を積極的に実行した。

(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)

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