jig.jp:持続的な利益成長の割にPERは10倍割れと割安、株主還元も積極化
*10:39JST jig.jp:持続的な利益成長の割にPERは10倍割れと割安、株主還元も積極化
ライブ配信サービス「ふわっち」を運営するjig.jp<5244>の株価に割安感が強まっている。好調な業績、積極的な株主還元に比して、株価は決算および株主還元の発表前を下回る推移となっている。
2月14日に発表された2025年3月期第3四半期決算は、売上高で前期比13.1%増の10,244百万円、営業利益で同19.0%増の1,538百万円となった。広告宣伝効果による新規課金ユーザーの獲得やイベントの盛り上がりに比例して継続課金ユーザーの増加に成功しており、足元の課金ユーザー数は反転して増加傾向。ARPPU(課金ユーザー1人当たりの平均課金額)は堅調に推移しており、ユーザーの課金疲れ等による反動はなく、持続可能な適正水準での成長を実現している状況。また、同時に株主還元も従来の「配当性向10%程度」から還元を強化して「総還元性向30%以上(ただし、配当性向10%以上を維持)」を目指す方針を発表している。
恐らく、株価の上値を押さえているのは、3Q(10-12月期)の利益成長が鈍化していることとなろう。3Qのみの営業利益は前年同期比8.0%増の444百万円となり、伸び率が鈍化している。通期予想(売上高は前期比10.2%増の13,500百万円、営業利益は同10.8%増の2,000百万円)に変更もないとなれば、4Q(1-3月期)のみの営業利益は前年同期比9.6%減の462百万円となる。
ただし、この利益鈍化はでポイント関連費用(配信者への還元等)及び広告宣伝費割合が一時的に増加したことが要因となる。アプリ内決済と比較して手数料率が低いブラウザでの決済を促進する各種施策の継続実施により、売上高対比の決済手数料割合の減少は3Q(10-12月期)で前期比4ptにも達しており、売上高向上施策へ積極的にコストを投下できている点、それが来期の数値につながってくる点を評価すべきだろう。
現状、PERは9.6倍となっており、成長株としてのみならず、市場平均の評価すら受けていない。この是正だけでも、相当な水準訂正が期待され、成長株としての評価が定まれば、さらなる株価の上昇が期待できることとなる。
なお、同社はライブ配信サービス「ふわっち」を運営している。「ふわっち」ではスマートフォンやPCを用いて誰でも簡単にライブの視聴、配信を行うことができる。ライブ配信中に視聴ユーザーが使用するアイテムの販売が同社グループの主な収益となる。「ふわっち」はアマチュアの配信ユーザー(芸能・ライバー事務所に所属しない普通の会社員、主婦、シニア、学生等)がメインで利用するサービスで、一般の方が配信を始めることの敷居が低く、日々ユーザーの流入が続いている。また、各配信ユーザーのバックグラウンドが多種多様であることから配信内容に多様性があり、ユーザー層の裾野が幅広く、都心だけでなく地方のユーザーが多いこともユニークな特徴である。
2015年のサービス開始以来、課金者及び配信者の主力世代は30~50代となっている。競合他社が中核とする10~20代と比較すると「ふわっち」のメインユーザー層である30~50代はARPPUが高い。また、2024年12月の1カ月間で1配信あたり10分以上視聴した平均視聴者数は13.4人と小規模なコミュニティで、配信者との距離が近く、居心地の良さと熱量を生み出しやすい点も特徴となっている。
国内動画投稿・ライブ配信市場は急速に市場が拡大しており、2025年度には1兆円を上回る市場規模まで拡大する見込みとなっている。また、動画共有・配信サービスにおいては、「ライブ配信型の動画共有サービス」の利用率は全年代で8.2%と、他サービスと比較して成長余地が大きい。特に「ふわっち」の中心ユーザーである30~40代以降の年代における利用率は30代11.2%、40代6.7%、50代4.1%と、今後も市場拡大余地が大きい(2024年6月総務省公表データ)。加えて、「ふわっち」の成長だけでなく、VTuber事業やAR/VR事業を始めとした新規事業にも注力しており、今後の収益源の多角化及び更なる成長を図っている。
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