アーバネット Research Memo(6):2025年6月期中間期は想定どおりの減収減益。用地仕入れは順調に拡大
*15:06JST アーバネット Research Memo(6):2025年6月期中間期は想定どおりの減収減益。用地仕入れは順調に拡大
■アーバネットコーポレーション<3242>の業績動向
2. 2025年6月期中間期の業績概要
2025年6月期中間期の連結業績は、売上高が前年同期比30.3%減の7,965百万円、営業利益が同87.9%減の100百万円、経常損失が232百万円(前年同期は720百万円の利益)、親会社株主に帰属する中間純損失が210百万円(前年同期は510百万円の利益)と、売上計上見込みが第4四半期に集中※する計画であることから中間期時点では減収減益となるも、想定どおりの進捗である。
※ そもそも同社の売上計上時期は四半期ごとにバラツキが大きく、特に下期偏重の傾向が見られるが、2025年6月期中間期はとりわけ顕著となった。
「不動産事業」については前述のとおり、不動産開発販売において、主力の都市型賃貸マンションの売上計上が第4四半期に集中するため、販売戸数は1棟50戸(前年同期は5棟342戸)に留まり大幅な減収となった。一方、ケーナインの連結化等に伴い、アパート(1棟11戸)、戸建(6戸)、テラスハウス(10戸)の販売や用地売却(5件)※が業績に寄与した。不動産仕入販売では買取再販1件を計上したほか、その他事業(不動産賃貸・仲介等)はケーナイン連結化により大きく底上げした。「ホテル事業」については好調なインバウンド需要等に支えられ、稼働率・客室単価がともに上昇し増収を確保した。
※ 開発用地に対して好条件でのオファー(買取意向)があった場合は、プロジェクト継続による採算性と、売却による利益や早期資金回収のメリット等を比較検討のうえ、用地売却も選択肢の1つに入っている。
利益面でも、第4四半期偏重の計画に伴う大幅な減収により大きく出遅れたものの、通期では増益を確保する見通しである。用地価格や建設資材価格の高止まり、工事関連人件費の増加など厳しい収益環境が続くなかで、採算性を重視したプロジェクト推進により高い粗利益率水準を維持した。ただ、販管費が増加したのはケーナイン連結化による費用増に加え、人的資本強化を目的とした給与引き上げ、本社オフィスの移転※に係る費用等が理由である。また、順調な用地仕入れに伴う有利子負債の拡大や金利上昇により支払利息(営業外費用)が増加した点も注意すべきポイントと言える。
※ 2024年7月8日付けで本社オフィスを霞が関ビルディング(35階)に移転した。M&Aを含む、さらなる人員拡充を見据えたオフィス面積の増床(約2倍)、優秀な人財の確保、より働きやすい環境の構築などが目的である。
財政状態については、順調な用地仕入やプロジェクトの進行により販売用不動産が大きく増加し、総資産は前期末比21.8%増の57,217百万円に拡大した。一方、自己資本は中間純損失の計上や配当金の支払いが新株予約権の行使による増加分を上回ったことで前期末比1.6%減の14,820百万円とわずかに減少した。その結果、自己資本比率は25.9%(前期末は32.1%)に低下した。また、有利子負債(リース債務を除く)は長短合わせて前期末比34.9%増の39,339百万円となった。もっとも、短期の支払い能力を示す流動比率は268.8%、長期の有利子負債比率は59.4%とともに高い水準にあり、財務の安全性に懸念はない。
※ 2023年9月11日付で発行した新株予約権(合計62,000個)のうち、2024年12月末までに22,500個(合計約7.8億円の資金調達)が行使されている。なお、そのうち2025年6月期中間期における行使分は8,500個(3.2億円の資金調達)となっている。
キャッシュ・フローの状況については、営業キャッシュ・フローが順調な用地仕入れに伴い大幅なマイナスとなったほか、投資キャッシュ・フローも本社移転に伴う有形固定資産の取得等によりマイナスとなった。一方、財務キャッシュ・フローはプロジェクト資金の調達及びシンジケートローン契約締結に基づく長期借入金によりプラスとなったが、これらの結果、2025年6月期中間期末の現金及び現金同等物残高は7,259百万円(前期末比1,250百万円減)に減少した。
3. パイプラインの状況
2024年12月末時点のパイプラインの状況は、順調な用地仕入れに伴い2025年6月期下期の販売予定分を含めて、約2,000戸を確保しているようだ。したがって少なくても2026年6月期から2027年6月期については高い業績水準を維持できるとの見方ができる。厳しい仕入れ環境が続くなかで、ここ数年取り組んできた用地仕入れや人財の育成が軌道に乗ってきたことに加え、実績のあるキャリア採用との相互作用もうまく機能しているようだ。また仕入れ物件のなかには、同社初となる千葉エリア(行徳プロジェクト)も含まれており、今後も東京都南西部及び神奈川県(川崎・横浜)を地盤とするケーナインとの連携を含め、都心以外の優良な開発用地※の取得に向けた検討を進めている。
※ 都心へのアクセスが良いことが条件。
4. 2025年6月期中間期の総括
以上から、2025年6月期中間期を総括すると、業績面では2025年6月期は第4四半期偏重の計画により出遅れ感が目立つものの、前提となる契約販売戸数は確保できており、実態として業績の後退を示しているわけではないことに注意が必要である。一方、1) シナジーを含めて、ケーナインの業績が好調に推移していること、2) 仕入れ面における積み上げも順調であること、3) 新規事業でも同社初となるヘルスケアアセットの開発などで成果を上げており、今後の成長に向けた事業基盤の強化や事業展開の方向性の一端を具体的に示すことができたと評価している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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