ジェネパ Research Memo(6):主力のECマーケティング事業に加え、海外子会社の受注が好調(2)
*13:06JST ジェネパ Research Memo(6):主力のECマーケティング事業に加え、海外子会社の受注が好調(2)
■ジェネレーションパス<3195>の業績動向
2. セグメント別業績
(1) ECマーケティング事業
ECマーケティング事業については、売上高13,287百万円(前期比3.6%増)、セグメント利益290百万円(同15.3%増)となった。増収増益の要因として、D2C商品の販売増加、「リコメン堂」の展開強化、物流施策等のコスト削減策といった点が挙げられる。1点目のD2C商品の販売増加策としては、同社がこれまで蓄積してきたECマーケティングデータを活用し、低価格で品質面に優れた実用的な商品をオリジナルブランドとして企画開発し、価格競争力を高めつつ、これまでのECモールだけでなく量販店へも販路を拡大することによって消費者に訴求する取り組みを進めた。オリジナルブランドの1つである「s!mplus」は2024年10月期末には累計出荷台数が38万台に達するなど人気ブランドに成長したが、同社は2024年10月期中も次々と新製品を投入した。対象はシンプルな機能と操作性を併せ持つ扇風機や多機能な電子レンジ、電動回転モップ、マルチロースター、ダイヤル式ノンフライヤー等、シンプルながら使い勝手の良い商品ラインナップを充実させている。特にバケツ式洗濯機は小型で安価な製品ということもあり、単身者のちょっとした洗濯やベビー用品・ペット用品向けの専用洗濯機等として消費者ニーズを取り込み、人気商品となったようだ。また「カクシング」は革新的な素材や機能によって使い勝手の良い寝具を提供しているが、夏場には寝苦しさを解決する接触冷感寝具シリーズを投入するなど、価格面だけでなく機能面でも他社製品との差別化を図っている。これらのD2C商品は自社ブランドであるだけに利益率が高く、同社の利益率向上のための有力商品として成長することが今後も期待される。
2点目の「リコメン堂」の販売増加策として、従来の自社サイトや主要なECモールに加えて、他のECモールにも出店したことが挙げられる。具体的には、ギフト特化型のモールである「Giftmall」やANAホールディングス<9202>の子会社であるANA X(株)が運営する「ANA Mall」、ぐるなび<2440>が運営するお取り寄せサイトである「ぐるすぐり」といった出店である。これらの店舗はギフトや取り寄せ商品等、それぞれのテーマを持って出店するものであり、顧客層を多様化するほか、これまでリーチできなかった顧客層の取り込みに有益なものであると考えられる。同社としては今後も同様な出店を行い、モール内マーケティングを強化する。
3点目のコスト削減策については、いわゆる物流の2024年問題を受けて上昇傾向にある物流コストを低減すべく、提携倉庫との協力を受けて商品配置の最適化や輸送時のコンテナ積載量の改善等を行った。複数の業者に対して入札方式を導入する等のコスト削減策も併せて実施している。主要なECモールでは翌日配送が強化されるなど物流面の状況は厳しいが、同社としては売上増加に向けて翌日配送向け対応を積極的に行うためのコスト増は受容しつつ、その他の部分でのコスト削減に向けた対応策により抑制を図っている。
2024年10月期は、新たな事業として「USP事業」の開始に向けた準備を進めたことも押さえておきたい。これは独自のコンセプトを持つ商品群や特定テーマの下で運営されるEC店舗を複数運営し、それらを自社のプラットフォームにおいて有機的に結合させる、いわば自社運営のECモールを運営する事業である。2024年10月期は3サイトをオープンし、テスト運営による実証を終えた。売上も順調に推移したことから引き続き店舗数の拡大を行っており、2024年12月までに当面の目標であった10店舗までの増加を図った。以降はさらなる店舗数の増加と、本格的な事業展開フェーズへの移行を進めている。
(2) 商品企画関連事業
商品企画関連事業については、売上高2,899百万円(同30.6%増)、セグメント利益82百万円(同78.1%増)と大幅な増収増益となった。主な要因は中国子会社の業績が好調であったこと、ベトナム子会社であるGenepa Vietnamの事業活動が本格化して販売面での復調となって表れてきたことである。中国子会社である青島新綻紡貿易では、主に日本国内の大手小売業等からの受注を受けて機能性の高い寝装品やインテリア商品を製造・販売しているが、この受注が好調であった。また、新たな取り組みとして、青島新綻紡貿易が現地の大学と連携して開発したオリジナルの機能性繊維を用いた商品の生産拠点をラオスに構築した。ラオスは中国の隣国であるが、開発拠点の近隣で、かついわゆるチャイナリスクを回避した事業活動を行うために生産拠点を構えることとしたものだ(2025年10月期にはラオスでの生産開始)。ベトナム子会社であるGenepa Vietnamは2019年の設立直後にコロナ禍に見舞われ、日本国内からの支援が停滞したこと等により事業活動が低迷していたが、新型コロナウイルス感染症の5類感染症への移行を受けて活動が本格化した。当初は早期に成果を挙げるために新規取引先を積極開拓し、小ロット生産案件を多数受注した影響から納期が集中し利益率が低下した時期もあったが、その後は回復を遂げ、通期での事業全体の増収増益に寄与した。前述のとおり、2024年10月期は固定資産の回収可能価額を見積もった結果として認識された減損の損失処理を行ったが、これを受けて2025年10月期はさらに業績の拡大が進むことが期待される。
(3) その他
同社は報告セグメントとして、ECマーケティング事業及び商品企画関連事業以外のものを「その他」の区分に含めている。「その他」の区分によるもののうち、従来の受託開発事業に関わるものについては、主に国・大学・企業の研究機関との共同研究のための受託開発や技術支援、運用保守作業が該当し、従来「その他事業」に区分していた非物販事業としてのWebメディア事業も本区分に含まれる。「その他」の区分に関わる売上高は127百万円(前期比57.7%減)、セグメント利益は7百万円(同91.1%減)となった。受託開発事業関連においては内閣府より「エビデンスシステムe-CSTI※の保守」に関する業務を受託した一方で、非物販事業においては一部大手サービスの終了等により減収傾向となったほか、Webメディア関連の掲載記事数やPV数の拡大に向けた人員増加等の投資を優先した影響から減収減益となっている。
※ e-CSTI(Evidence data platform constructed by Council for Science, Technology and Innovation):大学等の研究機関における「研究」「教育」「資金獲得」に関するエビデンスを収集し、インプットとアウトプットの関係性を「見える化」するための各種分析機能を開発し、関係省庁や国立大学・研究開発法人等の関係機関に対して分析機能・データを共有するプラットフォーム。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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