クラボウ Research Memo(7):事業ポートフォリオの強化に加え、積極的な株主還元や政策保有株式の圧縮も推進
*12:07JST クラボウ Research Memo(7):事業ポートフォリオの強化に加え、積極的な株主還元や政策保有株式の圧縮も推進
■資本収益性の向上及び次期中計の方向性、サステナビリティへの取り組み
1. 資本収益性の向上に向けた取り組み
クラボウ<3106>は、2024年5月に「資本収益性の向上に向けた取り組み」を公表した。資本コストや株価を意識した経営を実現するための課題としてROEの改善を掲げており、「長期ビジョン2030」の従来の目標を前倒し、次期中期経営計画期間内(2028年3月期まで)にROE8%以上を達成するとともに、2031年3月期には10%以上の実現を目指している。具体的には、収益性が高く成長が見込める「半導体製造関連市場」や「自動化・制御装置市場」、「メディカル市場」へ経営資源を集中し、「長期ビジョン2030」に掲げる「持続的成長を実現する事業ポートフォリオの構築」に取り組んでいく。同時に資本効率を意識し、1) 規律ある資金配分の実践、2) 政策保有株式の圧縮を進める。1) については、現 中期経営計画で進めている総還元性向50%以上を実践するとともに、成長投資を実行したうえで余剰資金のさらなる株主還元も検討していく。2) については、政策保有株式を、まずは連結純資産の20%以下まで段階的に売却し、そこで得たキャッシュを自己株式の取得のほか、事業ポートフォリオの組み換えのため、M&Aを含む成長投資などに充当していく考えだ。
2. 次期中期経営計画の方向性
また、2024年11月には現在策定中である次期中期経営計画の方向性が示された※1。改めて「半導体製造関連市場」や「自動化・制御装置市場」、「メディカル市場」へ経営資源を集中し、収益性の高い事業ポートフォリオを目指す考えを明らかにするとともに、同社の強みであるビジョンセンサーや遺伝子解析技術などを基盤にグループシナジーを発揮し、医療や自動化・ロボット、食品など幅広い分野に拡大する構想を打ち出した※2。また、資金配分についても、成長投資を優先するとともに、その上で資金余剰が生じる場合は、総還元性向の目標をさらに引き上げることも検討していく考えだ。なお、次期中期経営計画の公表は2025年5月頃を予定している。
※1 2024年11月19日開催の第2四半期(中間期)決算説明会にて発表。
※2 具体例として、ビジョンセンサー技術(ロボットビジョン)と撹拌脱泡装置(バイオメディカル)の組み合わせによる調剤自動化(業務効率化、人手不足解消等)などに取り組んでいる。
新価値創造を通じてより良い未来社会に貢献。脱炭素や循環型社会を推進
1. 基本的な考え方
同社は、創業以来、サステナブル経営を実践するとともに、独自技術の開発やイノベーションの創出により発展してきた。同社グループの事業活動は、経営理念「私たちクラボウグループは、新しい価値の創造を通じてより良い未来社会づくりに貢献します」に基づいており、その目指すところは、SDGsにも通じている。現 中期経営計画「Progress’24」においても、SDGsに掲げられた目標9「産業と技術革新の基盤をつくろう」、目標11「住み続けられるまちづくりを」、目標12「つくる責任、つかう責任」など、同社グループが貢献すべき分野を明確にし、事業計画の中に具体的に落とし込んでいる。
2. マテリアリティの特定
経営理念の実現という目的のもと、資源を有効に活用して事業活動の持続可能性を高め、企業価値を向上させるために、マテリアリティ(重要課題)を特定した。具体的には、1) 安心・安全で快適な社会の実現、2) 地球環境への配慮と循環型社会への貢献、3) 多様な人材の活躍推進と人権尊重、4) 持続的な成長に向けたガバナンス・CSRの強化をマテリアリティとして、その実現に向けて様々な施策に取り組んでいる。
3. 環境問題への取り組み
同社は、1998年に「クラボウ環境憲章」を定め、環境に対する基本方針と社員が取るべき行動指針を明確にした。また、2022年にカーボンニュートラルロードマップを策定したことを機に、重要課題として気候変動対策に取り組んでいる。具体的には、政府目標である2030年度のCO2排出量46%削減(2013年度比)、2050年度のカーボンニュートラル達成に向けて、CO2排出量削減のための体制を強化し、具体的な施策を進めるとともに、その進捗を有価証券報告書や統合報告書等を通じて開示している。また、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、同提言に基づく情報開示も開始した。さらに資源の有効活用と再資源化の推進にも取り組んでおり、廃棄物ゼロエミッションの推進を通じて再資源化率97%(2025年3月期目標)を目指している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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