ステップ Research Memo(4):2024年9月期は生徒数が想定以上に増加し、会社計画を上回る増収増益に
*16:04JST ステップ Research Memo(4):2024年9月期は生徒数が想定以上に増加し、会社計画を上回る増収増益に
■ステップ<9795>の業績動向
1. 2024年9月期の業績概要
2024年9月期業績は、売上高で前期比4.5%増の15,098百万円、営業利益で同10.0%増の3,511百万円、経常利益で同10.5%増の3,564百万円、当期純利益で同4.3%増の2,508百万円と、いずれも会社計画を上回る増収増益となった。高校及び大学受験における高い合格実績などを背景に新規生徒の募集が順調に進み、期中平均生徒数が同3.9%増と順調に拡大したことが増収要因となった。利益面では、教師の増員や処遇向上に伴う人件費増があった一方で、前下期に計上した学習環境整備のための投資費用(約2億円)が一巡したことで原価率が改善し、営業利益率で前期比1.2ポイント上昇した。なお、当期純利益の増益率が1ケタ台にとどまったのは、賃上げ促進税制による税額控除分が前期の151百万円から68百万円に減少したことが要因だ。
(1) 売上高の増加要因
売上高の内訳を見ると、小中学生部門が前期比3.8%増の11,975百万円、高校生部門が同7.6%増の3,123百万円といずれも過去最高を更新した。期中平均生徒数は、小中学生部門で同3.7%増、高校生部門で同4.8%増となった。授業料については前期からほぼ据え置きとしたため※1、平均単価の変動は学年構成比の変化によるものと見られる。特に高校生については単価の高い受験学年の生徒数が伸び、平均売上単価が同2.6%上昇した。小中学生部門については少子化が進む神奈川県西部や横須賀市などで募集が停滞したスクールがあったものの、横浜市や川崎市の生徒数がスクールの新規開校効果もあり順調に拡大し、全体の伸びをけん引した。特に、小学生が約8%増と高い伸びとなった。中学生で満席となるスクールが全体の約3割※2に達しており、難関高校への進学で高い実績を誇る「STEP」への通塾のタイミングがこうしたエリアでは早期化していることが一因と見られる。また、開校10年目以上の111スクールのなかで、30スクールが2024年10月末時点で過去最高の生徒数を記録したことも特筆される。長い期間にわたって、地元で高い評価と信頼を維持し続けていることの証左となる。
※1 2024年春より小学生部門で月額数百円の値上げを実施するなど微調整は行ったが、全体的な影響は軽微であった。
※2 145スクール中、満席で募集を打ち切っているスクール数(11月1週時点)は中学1年生で43スクール、2年生で56スクール、3年生で35スクールとなっている。
一方、新規校舎での生徒獲得状況も2024年は過去に例をみないほど好調だった。校舎展開では小中学生部門で4スクール(うち、1スクールはHi-STEP)を2024年3月に重点エリアである横浜市(東戸塚平戸、日吉本町)と川崎市(鹿島田、Hi-STEP新百合ヶ丘)に開校し、2024年10月時点の生徒数は546名だった。1スクール平均で130名超となっており、ここ数年の平均値(70名前後)に対して大幅に上回る状況となっている。
このうち東戸塚平戸スクールについては、東戸塚スクール(現 東戸塚名瀬スクール)の規模が300名超と大きくなったため、JR東戸塚駅を挟んで反対側に新設したスクールで、東戸塚スクールから移った生徒も含まれているため200名超と初年度から多くの生徒数を獲得した。ただ、同スクールを除いたとしても1スクール当たり100名を超える水準となっている。特に、日吉本町スクールが150名超と近年の新規開校スクールでは最多の生徒数を集めた。生徒数1,000名を超える日吉台中学校のすぐそばの立地ということもあるが、近隣に「STEP」がなかったことも考えれば想定以上の滑り出しとなった。また、Hi-STEP新百合ヶ丘スクールは、満席が続くステップ新百合ヶ丘スクールと駅を挟んだ反対側に開校したが、こちらも110名超と好調な滑り出しとなっている。Hi-STEPの場合、初年度は50名程度が通例であり、新百合ヶ丘エリアでの人気の高さがうかがえる。鹿島田スクールは注力中のJR南武線沿線にあり、川崎市幸区で2校目のスクールとなる。生徒数は70名弱と平均的な滑り出しとなった。
なお、2024年3月に藤沢市の綾瀬スクールを長後スクールに統合した(スクール名は長後/綾瀬スクール)。両スクールの距離が50mほどしか離れておらず(いずれも賃貸物件)、今後の少子化の影響を見越しての対応となる。神奈川県西部エリアなどでは今後、少子化の進行が見込まれており、状況を見ながら対応を進めていく方針だ。
高校生部門では新規開校がなく、2023年11月に相模大野校、2024年3月に横須賀校の増床を実施した。高校生部門については主要駅で規模の大きい校舎を展開しており、現在は増床などで生徒数の増加に対応している。校舎当たりの平均生徒数は、小中学部門は前期比1.5%増の190名、高校生部門が同4.8%増の405名となっており、高校生部門については2019年に15校体制となってからは新規開校がなく、既存校舎の生徒数増加によって売上成長を続けていることがうかがえる。ただ、横浜校では全学年・全教科で満席の状態が続いており、入塾が適わず近隣の競合塾に流れる生徒が一定数いることも事実であり、こうした状況を解消すべく、2024年12月に増床を実施している。
(2) 費用の状況
売上原価は前期比2.6%増の10,713百万円となり、売上原価率は71.0%と同1.3ポイント低下した。主要項目別で見ると、売上原価の約7割を占める人件費が社員数の増加並びにベースアップを実施したことにより同5.1%増、対売上比率で同0.2ポイント上昇したほか、教材費も紙の値上げの影響により同7.6%増、対売上比率で同0.1ポイント上昇した。一方で、水道光熱費が同7.5%減、対売上比率で0.2ポイント低下したほか、備品費を含むその他が同21.5%減、対売上比率で1.6ポイント低下し原価率の改善要因となった。前下期は学習環境の整備、向上を目的にノートPCの購入や自習室の設置工事等で約2億円の費用を投下したが、2024年9月期は通常の支出に戻ったことがその他の減少要因となった。
販管費は前期比8.2%増の873百万円となり、販管費率は5.8%と同0.2ポイント上昇した。給与水準の引き上げ等により人件費が同2.8%増となったほか、積極的な採用活動により求人費が同27.4%増、その他費用が同14.2%増となった。その他費用の増加については、個人株主数が約2倍に増加したことによる証券代行手数料の増加が主因だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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