propetec Research Memo(6):厳選仕入などの効果で業績向上
*13:06JST propetec Research Memo(6):厳選仕入などの効果で業績向上
■property technologies<5527>の業績動向
1. 2024年11月期の業績動向
2024年11月期の業績は、売上高41,612百万円(前期比12.6%増)、営業利益1,362百万円(同2.8%増)、経常利益1,019百万円(同3.7%減)、親会社株主に帰属する当期純利益635百万円(同3.9%減)となった。一見すると苦戦のようだが、前期は一過性の利益(営業外収益に計上される受取配当金、特別利益に計上される保険解約益)が計上されていたこと、更に固定費を抑制しつつスタンダードマンションの厳選仕入や長期在庫の販売加速、プレミアムマンションの立ち上げなどの施策が機能したこと、売上高・利益ともに期初予想も超過達成したことから、中期経営計画初年度として順調なスタートを切ったといえる。
日本経済は、社会経済活動の正常化を背景に設備投資や雇用環境が緩やかな回復基調で推移した一方、エネルギーや原材料価格の高騰による物価上昇、マイナス金利解除による家計や企業への影響には当面注視が必要で、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いている。主力の中古住宅再生事業が属する中古住宅流通市場においては、在庫件数が前年同期比微増で推移するなか、首都圏中古マンションの成約件数は在庫件数を上回る伸びとなり、コロナ禍後に膨らんだ流通在庫の調整が業界内でも徐々に進んでいることが伺われる。一方、戸建住宅は、全国的に着工数が減るなかでパワービルダーが一定の在庫を持ち続けており、厳しい環境が続いているようだ。
このような環境下、同社は中期経営計画に沿って、全国主要都市15拠点を軸にマンション買取再販事業に注力、長期在庫の積極的な販売に努める一方で厳選仕入を徹底したほか、プレミアムマンションの仕入も開始した。また、ポータルサイト「KAITRY(カイトリー)」では、効率的な運用と仲介会社への情報提供機能の強化を図ることで差別化を強めた。特に金融機関向け「KAITRY finance」は新たに5行に導入され、のべ導入先が8行と順調に拡大した。このほか、岡山県の空家等対策推進協議会に登壇したり、尾道市に空き家対策を提案するなど事業活動を積極的に行った。また、テレビ東京のWBS(ワールドビジネスサテライト)のマンション実家じまい特集で「KAITRY(カイトリー)」が紹介された。
この結果、販売決済件数は1,245件(前期比21.8%増)となった。売上高は、過剰な流通在庫の調整の影響による戸建住宅事業の低迷はあったものの、中古マンション買取再販が順調に拡大したことで2ケタ増収となった。なお、スタンダードマンションを厳選仕入した一方、プレミアムマンションの仕入を開始したことで、仕入決済件数は1,186件(前期比14.2%減)にとどまったものの、仕入契約額は販売契約額(同10.3%増)を上回る同13.2%増となった。特に第4四半期には、高額のプレミアムマンションの仕入が加速したことで仕入契約額が前年同期比41.2%増、厳選して仕入れた物件の販売強化により販売契約額が同25.0%と大きく伸びた。なお、戸建住宅子会社2社については、地盤が特に業況の厳しいエリアではあったが、歴史が長く地域に密着しているうえ毎期商品を開発しているため一定の需要は確保できたようだ。
利益面では、長期在庫の販売促進により売上総利益率は低下したが、マンションの販売増によって総利益額を確保した。なお、マンション買取再販の粗利益率は、第2四半期は長期在庫の販売を強化したことで粗利額は確保した一方で低下、第3四半期は長期在庫の販売強化を継続しつつ改善傾向となり、第4四半期は厳選仕入の効果もありさらに改善傾向となった。販管費については、販売額が増加した分、仲介会社に対する販売手数料が変動費的に増加した。また、プロダクト強化に向けてエンジニアとディレクターの採用を推進した一方で、プレミアムマンションを立ち上げたことで計画していた新規出店や営業の増員を抑制したため人件費が微増にとどまったほか、市場環境を考慮して広告宣伝を控えたことで、固定費を抑制できた。この結果販管費率が大きく改善したが、スタンダードマンションは今後も厳選仕入を続け、プレミアムマンションの販売を拡大する方針を踏まえると、人件費などにかかる固定費の増加は抑制的となると見込まれることから、今後も販管費率が大きく上昇する可能性は低いと考える。なお、経常利益以下が減益になったのは前年度に計上していた一時的な収益が剥落したことによる。また、期初予想に対して売上高で1,212百万円、営業利益で132百万円超過達成となったのは、マンションが想定以上に売れたことで戸建住宅の低迷をカバーしたことが要因である。
戦略的対応が長期在庫を減らす
2. 環境変化に対する戦略的対応
中古マンション在庫はコロナ禍以降2024年1月まで増加を続け、その後も高水準を続けているが、金利の反転上昇により受給バランスが悪化して長期在庫が増加、同社以外の多くの事業者が値下げによって在庫調整を進めることとなった。これに対して同社は、ライフステージの転換点で不動産を取得する傾向の強い30〜40代の一次取得者層にターゲットを絞っているため、遠からず需要の戻りを想定したこと、販売用不動産で賃料収入を得る仕組みを持っていることから、戦略的に他社の値下げに追随しなかった。このため2023年11月期は、販売数・売上高が伸び悩み、同社においても長期在庫が増加することとなった。
こうした長期在庫に対する戦略的対応として、同社も2024年11月期に入って粗利率を落としても長期在庫の販売を加速する一方、仕入の厳選を強化した。また新たな事業としてプレミアムマンションの買取再販を立ち上げた。特に2023年11月期第4四半期に開始した厳選仕入により、売上高に直結するスタンダードマンションの仕入数は減ったが、回転日数や粗利率など新たに仕入れた在庫の内容が良化し、長期在庫を発生させない仕組みとして機能し始めた。また、2024年11月期中に構想から仕入、本格販売へと急展開したプレミアムマンションは富裕層に狙いを絞った高額の再販買取で、ピンポイントながら非常にニーズが強い新事業として、また件数は少なくても粗利額も粗利率も取れるビジネスとして、順調に立ち上げることができた。2026年11月期以降のスタンダードマンションの再拡大のため、2025年11月期の上期には厳選仕入を継続しつつ、粗利率を少し下げてでも長期在庫の販売を加速することで在庫のリフレッシュを進める方針であり、これにより、2025年11月期下期には長期在庫が適正水準まで下がる一方、厳選仕入やプレミアムマンション本格販売による利益貢献が強く現れるため、粗利率が適正値へと上昇すると見られる。
なお、金利に関しては、多少上がったとしても、主力顧客である一次取得者層にとって「月々の家賃支払いよりも少ない返済額で家が持てる」という魅力は変わらず、富裕層にも現状の金利水準であれば大きな影響を与えるとは考えづらい。このため、金融機関の与信態度にも大きな変化は見られず、同社も長期の借り換えや2025年11月期の仕入枠の確保ができていることから、当面、資金調達面で特段の懸念材料は見当たらない。さらに、2024年7月末に資本政策の柔軟性・機動性の確保を目的に減資を行ったが、安定配当と子会社の税負担の適正化という効果が大きく、特に配当に関しては、減資により配当可能利益が約30億円となるため株主還元の安定性と継続性は高まったと考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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