クリアル Research Memo(8):「CREAL」のプラットフォームを最大限に活用し、各サービスの成長を目指す
*13:08JST クリアル Research Memo(8):「CREAL」のプラットフォームを最大限に活用し、各サービスの成長を目指す
■成長戦略
1. 成長戦略
クリアル<2998>では全体の成長を「CREAL」がけん引していることから、積極的なマーケティングとIT投資を継続する方針である。また、SBIホールディングスとの提携が業績拡大に大きな効果を与えている状況を踏まえ、中期目標として2027年3月期に年間GMV800億円、累計投資家数18万人の達成を掲げた。目標に向け優良なアセットマネジメント収益を確保するため、2024年5月にホテル運営事業への参入を決定したほか、有力他社との業務提携を進めている。
同社の競争優位性は、リピート投資率すなわちロイヤリティの高いユーザーをオンラインで累計8万人以上抱えていることにあり、その資産を最大限に活用することが成長のカギとなる。具体的には、まず成長原資となる投資経験層の「CREAL」ユーザー数をSBI証券との提携で拡大する。次に、「CREAL」をより大きなプラットフォームへ成長させるため、投資未経験層(投資エントリー層)の獲得に向け、有用なマス広告に注力する。富裕層や機関投資家などの大型投資家の取り込みについては、不特法に基づく3号及び4号事業者のライセンス取得から始める。ライセンス取得により、SPCを利用したクラウドファンディングでの案件組成が可能となり、原則的に物件のオフバランス、アップフロントフィー等の各種手数料の即時売上計上が可能となるため、同社の貸借対照表の軽量化、倒産隔離などが実現できる。これにより投資対象としての適格性が向上し、個人投資家に加えて金融機関や機関投資家などの参画が促進され、投資主体の幅と投資額が大きく拡大すると見込まれる。ほかにも、ノンリコースローンによるレバレッジ効果によって「CREAL」の投資家の利回りが向上し、同社の収益性向上も期待できる。同社はこのライセンス取得を経営上の最優先課題として取り組んでいる。
一方で、対面での取り組みにも注力している。これは「CREAL」で組成するファンドの対象物件をバルクで機関投資家に一括販売し、同社は引き続きアセットマネージャーとして関与することで、収益機会を継続させ「CREAL PRO」の売上高を増加させる。また、オンライン投資家のためにより長期的な資産形成としての商品を「CREAL」の顧客に提案(クロスセル)し、「CREAL PB」の売上高の増加につなげる。SBIホールディングスとの提携により、同社のサービスが法人の投資対象として注目を集めていることから、法人向けの対応に注力する。
このように同社の特長である「CREAL」のプラットフォームを最大限に活用して、各サービスの増収増益を図る。将来的には、投資エントリー層、投資経験層、資産形成層、富裕層、機関投資家といったあらゆる顧客層の投資家ニーズに応える資産運用会社として、DXプラットフォームを通じて効率的に提供・運営を行い、不動産を中心としたオルタナティブアセット全般を資産運用のニーズに応える形で顧客に提供する考えだ。
また、同社では会員基盤の拡大、物件の発掘とオペレーション力の強化に加えて、海外での事業展開もにらみ、M&Aについても積極的に検討している。以上のような取り組みによって経営基盤の拡大を強力に推進できると弊社では見ている。
2. ホテル運営事業「CREAL HOTELS」が始動
同社は2024年5月14日にホテル運営事業「CREAL HOTELS」への参入を発表し、同年7月19日にクリアルホテルズを設立した。同社の成長継続にはGMVの伸長が不可欠であり、それには優良なアセットが必要とされる。急速なインバウンド拡大でホテル需要の急増に加えて、日本政府が2030年訪日外国人旅行者数6,000万人、消費額15兆円を目標に掲げていることも後押しし、ホテル需要の一層の高まりが予想される。インバウンドニーズを的確に捉えたホテルは少ないため、同社は第4の柱になりうるとして、ホテル運営事業に参入した。「限定的/セルフ型×中~高価格帯」をターゲットに強みのDXを生かし、斬新で自由な顧客体験価値を重視した、ハイグレードなアパートメントホテルやサービスアパートメント、観光地型ヴィラ等の展開を計画している。
2024年11月13日には第1弾として、インバウンドニーズの高い沖縄・那覇エリアにて、新ブランド「LACER」による2物件の運営受託を発表した。「LACER OKINAWA NAHA MIEBASHI」「LACER OKINAWA NAHA TOMARIPORT」の2施設で、2025年1月下旬の同時開業を予定している。いずれも既存のホテルを取得して「LACER」にリブランドしたもので、訪日外国人客が好む多人数宿泊への対応として、1室当たりのベッド数を増やすなどバリューアップした。ほかにも8件のプロジェクトを進めているが、これらの運営実績を踏まえて、将来的にはより高価格帯のホテルブランドの展開も検討している。
ホテル運営事業では2つのソーシング(物件調達)パターンを取り扱い、既存サービスとのシナジーを追求する。1つ目は既存ホテルを購入し、インバウンド向けに部屋を拡張するなどリノベーションを実施する。この場合は「CREAL」によるファンドとして組成しGMVを拡大させ、エグジットによる収益化後もホテル運営事業を継続し、定期的なフィーを獲得する。2つ目は、土地を調達してホテルを建設する。こちらは「CREAL PRO」においてプロの投資家向けにファンドを組成し、投資家と共同運営しながら機会を見てエグジットする。その後のホテル運営の受託も想定している。インバウンド需要が年々増加するなか、ホテル物件投資スキームに興味を持つ機関投資家等のプロ投資家は今後増えると考えられ、同社の認知度向上と相まって、サービスへのニーズは今後高まることが期待される。
3. TATとの業務提携
2024年11月14日、TATとの業務提携及びTATを同年12月に同社の持分法適用関連会社とする旨を発表した。TATはホテル運営事業のほか、不動産開発・企画・設計をメインの事業としているが、特に同社のホテル運営事業が目指すインバウンド向けの長期滞在型アパートメントホテルの開発・運営実績を数多く有する。TATは次世代に対応した斬新なコンセプトとブランド戦略により、経済合理性や顧客の成長戦略を考慮した企画・設計・運営の一体開発に強みを持つことから、同社のホテル運営事業においても力強いパートナーとなることが期待される。
同社はこの業務提携に対して、既存事業との大きなシナジーを期待している。ファンド組成においてTATが運営する既存ホテルのほか新規ホテルのソーシングでTATから有効なサポートが期待でき、収益性の向上が望めるからである。特に「CREAL PRO」においては有力な機関投資家と組むことで、TATと共同で組成するファンド数の増加や規模の拡大のほか、ファンド運用中及びエグジット後のホテル運営事業でTATからの強力なバックアップが期待できそうだ。「CREAL HOTELS」においても同社の目指すインバウンド向けホテルの充実・拡大と、ホテル事業運営能力の向上、運営候補先ホテルの相互融通などファンド組成時の協力体制が期待できる。TATとの提携を通じてホテル運営事業のノウハウを高め、既存事業とのシナジーを積極的に追求し、収益基盤を拡大してさらなる成長を目指す。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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