Sシャワー Research Memo(7):新たな中期経営計画「Ignite 2027」を策定
*11:07JST Sシャワー Research Memo(7):新たな中期経営計画「Ignite 2027」を策定
■成長戦略
1. 中期経営計画「Ignite 2027」(2026年3月期~2028年3月期)
スペースシャワーSKIYAKIホールディングス<4838>はSKIYAKIと経営統合し、2024年11月13日付で新たな中期経営計画「Ignite 2027」(2026年3月期~2028年3月期)を発表した。基本方針として、コンテンツとテクノロジーの融合を通じて成長基盤のさらなる強化と収益性の向上を図り、次代のエンタテインメントの創造に取り組むとしている。エンタテインメント産業を取り巻く環境はDXの進展により多様化し、さらに一段の変革を求められているため、これまで培ってきたエンタテインメントのノウハウとテクノロジーを交わらせることで、従来の枠を超えた新たな創造力の発火点(Ignite)を生み出し、コンテンツとテクノロジーの両軸からアーティスト・クリエイターとともに新たなエンタテインメント体験を提供することを目指す。
経営目標値には、最終年度2028年3月期の売上高24,000百万円、営業利益1,600百万円(営業利益率7%)、EBITDA2,200百万円、ROE10%超、営業キャッシュ・フロー(2026年3月期~2028年3月期の3年間の累計)4,400百万円を掲げている。
資本コストや株価を意識した経営の実現については、現状の資本コストをおおむね7.6%と認識し、中期経営計画「Ignite 2027」最終年度目標ROE10%超を実現することで、早期に株価PBR1倍割れの解消を目指す方針としている。ROEの向上については、中期経営計画「Ignite 2027」に基づく事業構造改革やグループシナジー創出によって利益率及び効率性の向上を図るとともに、機動的な自社株買いの実施により自己資本の圧縮を推進する。またPBR改善に向けて、収益力の強化、資本収益性の向上、成長に向けた投資の実行とその説明の強化、株主還元を通じた資本効率の向上を図るとともに、資本コストと株価を意識した経営を行うことで企業価値の最大化を図る。
キャピタルアロケーションのイメージとしては、2025年3月期末現預金(見込み)約6,500百万円及び2028年3月期までの3ヶ年累計営業キャッシュ・フロー約4,400百万円により、株主還元に約1,300百万円~1,600百万円、設備・事業投資及びM&A投資に約3,000百万円~4,000百万円、2028年3月期末現預金(見込み)に約5,300百万円~6,600百万円の配分を計画している。
株主還元については、本中期経営計画期間中は最低配当を年間13.00円とする累進配当を行い、連結配当性向35%~45%を目標とする。また連結総還元性向45%~60%を目標に、年間200百万円を上限として自己株式取得を機動的に実施する方針とした。そして2024年11月13日には自己株式取得(上限250,000株又は100百万円、取得期間2024年12月1日~2025年11月30日)を発表した。
設備・事業投資としては、店舗事業拡張に向けた設備投資、新たなIP開発に向けたコンテンツ投資、業務効率向上のDX投資を計画している。セグメント別では、コンテンツセグメントにおいては事業ドメインの拡張、新たなIPの獲得を目的とするM&A・業務提携、ソリューションセグメントにおいてはグループDXの推進に向けて、高い開発能力を持った優秀なエンジニアを獲得するための開発環境強化やM&A・業務提携などを推進する。
2025年3月期増配予想、株主優待制度も拡充
2. 株主還元策
株主還元については2024年11月13日付で配当方針変更、2025年3月期配当予想の上方修正、自己株式取得、株主優待制度拡充を発表した。変更後の配当方針は、中期経営計画「Ignite 2027」(2026年3月期~2028年3月期)中は継続的な増配を行っていくことを最優先として、連結配当性向35%~45%を目標に累進配当を継続することを基本方針とした。さらに、事業領域の拡大に寄与する投資やM&Aを推進しつつ、財務状況やROE水準などを総合的に勘案し、収益拡大に伴って得た成果を「配当」という形で株主に直接還元する方針とした。この基本方針により、2025年3月期の配当予想は、経営統合記念配当3.00円を含めて前期比3.00円増配の13.00円(期末一括=普通配当10.00円+記念配当3.00円)とした。予想配当性向は53.4%となる。
株主優待制度については、従来から毎年3月末現在の同社株式100株(1単元)以上保有株主を対象としてクオカード500円分を贈呈しているが、さらに2025年9月末基準日より追加優待を実施し、毎年9月末現在の保有株式数に応じて同社グループが開催する音楽ライブ・イベントへの招待抽選権を贈呈する。
音楽エンタテインメント関連事業を通じて社会的課題解決に貢献
3. サステナビリティ経営
サステナビリティ経営に関しては、2023年3月にサステナビリティ基本方針を策定してコーポレート・ガバナンスを強化するとともに、音楽エンタテインメント関連事業を通じて社会的課題解決に貢献する方針としている。創業以来、アーティストのクリエイティビティを尊重し、その価値を高め広げる事業を展開しており、多様性や創造性が重要視されるこれからの未来においても、音楽カルチャーの持続可能な発展とともに、全ての人々が人種、民族及び文化的多様性、ジェンダーの平等を尊重される、公正で、平等で寛容な開かれた世界を目指すとしている。
新たな成長ステージに向かう可能性を評価
4.弊社の視点
同社に対する投資家目線としては「音楽専門チャンネルの会社」という印象が強い可能性があるが、同社の特徴・強みは、あらゆる音楽エンタテインメント関連事業を展開していることであり、さらにSKIYAKIとの経営統合によって事業基盤が一段と強化された。音楽エンタテインメント関連市場については、ライブエンタメ市場、映像制作市場、「オタク」市場、クリエイターエコノミー市場などが今後も高い成長性を見込まれており、同社にとって事業環境は良好と言えるだろう。そしてSKIYAKIとの経営統合による事業ポートフォリオ最適化や、シナジー創出(コンテンツとテクノロジーの融合)により、2026年3月期には経営統合効果の本格化が期待され、同社が新しいエンタテインメントカンパニーとして、新たな成長ステージに向かう可能性が高いと弊社では評価している。したがって中期経営計画「Ignite 2027」の進捗状況に注目したいと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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