マイクロアド Research Memo(1):デジタルサイネージの落ち込みを好調な「UNIVERSE」がカバー
*13:31JST マイクロアド Research Memo(1):デジタルサイネージの落ち込みを好調な「UNIVERSE」がカバー
■要約
マイクロアド<9553>はデータとテクノロジーの力を活用し、顧客が抱えるマーケティング課題の解決に貢献している企業である。具体的にはマーケティングプロダクト「UNIVERSE」では、外部企業とメディアが保有する大量のデータを収集・蓄積、データから多種多様な特性を持つ消費者の購買行動を分析したうえで、顧客ごとに適切な広告配信を行っている。また、Webメディアにおける総合的な収益化支援を目的としたプロダクト「MicroAd COMPASS」、デジタルサイネージによる広告配信やコンテンツ配信を一元管理する「MONOLITHS」なども提供している。海外子会社においてはデジタルマーケティングの総合的なコンサルティングサービスも手掛けている。
1. 2024年9月期第2四半期の業績概要
2024年9月期第2四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比1.4%減の7,086百万円、営業利益が同41.9%減の411百万円、経常利益が同39.6%減の418百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同35.3%減の329百万円と減収減益だった。主力サービスの1つである「UNIVERSE」は増収増益と好調だったものの、タクシーサイネージ契約更改の影響を受け、デジタルサイネージが減収減益となったことが大きく影響した。ただ、通期業績予想に対する進捗率は、営業利益以下の各利益が想定を上回る推移を見せた。2024年9月期に関しては、期初の時点からタクシーサイネージの契約更改などが減益要因となることを想定していた。そうしたなかで「UNIVERSE」の業績がデジタルサイネージの落ち込みをカバーした格好だ。
2. 2024年9月期の業績見通し
2024年9月期の業績に関して同社は、売上高で前期比15.3%増の14,837百万円、営業利益で同10.9%減の742百万円、経常利益で同0.1%増の739百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同0.3%増の566百万円を見込んでおり、期初時点の業績予想から変更はない。売上高に関しては、引き続き「UNIVERSE」の業績が好調に推移することを見込んでいる。加えて、デジタルサイネージサービスで新たに市場投入した美容サロン専用タブレットメディア「OCTAVE」が期末に向けて収益化することも売上拡大に寄与する見通しだ。「UNIVERSE」を牽引役に新サービスも加わり、売上高の増加率は前期を上回ることを見込んでいる。一方で、利益面に関しては、第2四半期終了時点において、営業利益以下の各利益が想定を上回る進捗率であるものの、減益予想を据え置いている。「OCTAVE」が下期から利益貢献するものの、デジタルサイネージを提供する(株)MADSでの新サービス「OCTAVE」への先行投資や前期に発生したタクシーサイネージの契約更改などが影響する見通しだ。
3. 中長期の成長戦略
中長期の成長戦略として同社は「アドテクノロジーの企業から、総合データカンパニーへ」というスローガンのもとに、データ活用を軸とした成長戦略を描いている。具体的には「データプロダクトの拡大」「PostCookieに向けた対応」「新領域へのデータ活用」という3つの基本戦略により、業績の拡大と企業価値の向上を目指す。「データプロダクトの拡大」に関しては、自社開発プロダクトであり収穫逓増・高収益が見込める「データプロダクト」に注力する。販売体制の強化と新製品の投入を継続的に実施することによって「UNIVERSE」の稼働アカウント数を増やしていくほか、人材への投資によって付加価値の高い製品を継続的に生み出すことができる質の高い人材プールを構築する方針だ。「PostCookieに向けた対応」に関しては、Googleが提供するChromeブラウザにおいて、3rd Party Cookieのサポートが停止される予定であることを受け、いち早く対応することによって先行者利益を獲得していく。さらに、最終的には広告サービスという枠にとどまらず、保有している膨大なデータや分析技術を活用し、新領域へ参入することを積極的に模索している。インバウンドや越境EC関連の新規サービスも順調に立ち上げており、直近では2024年4月に、中国人アクティブシニア層を対象にインバウンド・アウトバウンド支援事業を手掛ける合弁会社を設立している。
中長期の成長戦略のもと、利益率の高いデータプロダクトに注力すること、同社の強みを生かせる新プロダクトを開発していくことによって、業績の拡大と収益性の向上が期待される。
■Key Points
・2024年9月期第2四半期は減収減益も計画を上回る進捗
・好調な「UNIVERSE」がデジタルサイネージの落ち込みをカバー
・2024年9月期は増収減益を見込む。先行投資とタクシーサイネージの契約更改が影響
・中長期の成長戦略のもとで業績の拡大と企業価値の向上を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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