マイクロアド Research Memo(7):2024年9月期は増収減益予想
*16:57JST マイクロアド Research Memo(7):2024年9月期は増収減益予想
■今後の見通し
● 2024年9月期の業績見通し
2024年9月期の業績見通しに関してマイクロアド<9553>は、売上高で前期比15.3%増の14,837百万円、営業利益で同10.9%減の742百万円、経常利益で同0.1%増の739百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で同0.3%増の566百万円を見込んでいる。売上高に関しては、主力サービスである「UNIVERSE」の業績が引き続き好調に推移することに加えて、デジタルサイネージにおいて美容サロン専用タブレットメディアの「OCTAVE」を新たに市場投入することなどにより、2023年9月期の伸びを上回るトップラインの成長を見込んでいる。一方で、利益面に関しては、デジタルサイネージを提供するMADSでの新サービスへの先行投資や2023年9月期に発生したタクシーサイネージの契約更改などを受け、営業利益が前期比で減益となることを見込んでいる。ただ、前述のデジタルサイネージを提供するMADSの業績全体を除いた場合、営業利益は前期比23.0%増、経常利益で同42.4%増、親会社株主に帰属する当期純利益で同28.2%増を見込んでおり、同社単体での事業自体は好調に推移する見通しだ。また、デジタルサイネージへの先行投資に関しては、上半期の先行投資を下半期に回収することを想定している。一時的な先行投資により減益となるものの、下半期、来期以降にかけて同サービスの成長を加速させていく構えだ。
(1) データプロダクト
a) UNIVERSE
同サービスは売上高で前期比34.4%増の6,702百万円、売上総利益で同28.7%増の2,462百万円を見込んでおり、2023年9月期に引き続き、好調な推移を見込んでいる。特にPostCookieにいち早く対応することにより、下半期にかけて同サービスの業績拡大を加速させ、PostCookie市場のリーディングカンパニーとなることを目指していく。PostCookieへの対応に関しては、Cookieの代替ソリューションを提供する提携パートナーとの連携およびGoogleが提供する代替技術であるPrivacySandboxの3つの機能のうち、既に2つの機能への対応を完了しており、Cookie廃止が想定される2024年後半に向けてPostCookie対応の開発に引き続きリソースを投入し、対応している機能のさらなるブラッシュアップとTopics APIへの対応に注力していく方針だ。Cookie廃止はインターネット広告市場が始まって以来の劇的な変化であり、いち早く各機能に対応することにより、新規顧客の獲得を加速させていく方針だ。また同社は従来、主に顧客企業の外部に存在するデータを用いて、潜在顧客向けのマーケティングサービスを提供してきた。PostCookieという流れを受け、相対的に顧客企業が保有するデータの価値があがるなか、顕在顧客に対するマーケティングサービスの領域へも事業領域を拡大させていくことを企図している。サービス領域の拡大については、M&Aや資本提携などを積極的に模索し、トップラインを迅速に伸ばしていく方針だ。
b) デジタルサイネージ
同サービスは売上高で前期比17.0%増の1,193百万円、売上総利益で同37.9%減の244百万円を見込んでいる。売上高に関しては、美容サロン向け専用タブレットメディアである「OCTAVE」の市場投入が寄与することを見込んでおり、広告市況の影響を受け、外部環境が不透明ななかにあってもしっかりとトップラインを伸ばしていく。一方で、利益面に関しては先述の通り、上半期にタブレットの設置費用が先行投資として発生することを受け、減益予想となっている。新サービスである「OCTAVE」は美容サロンに来た消費者がタブレットを通じて動画コンテンツを楽しむことができるもので、タブレットに配信された動画広告をタブレット搭載のカメラで視認状態を検知し、顧客に広告掲載料を課金するという収益モデルとなっている。ビューアブル課金により顧客の効率的な広告配信を支援するサービスだ。
(2) コンサルティング
a) メディア向けコンサルティング
同サービスは売上高で前期比4.8%増の2,367百万円、売上総利益で同2.6%減の686百万円を見込んでいる。売上高に関しては、ログリー(株)との資本業務提携(2023年7月)などにより緩やかに拡大することを見込んでいる。一方で、利益面に関しては、広告市況悪化の影響を受け、利益率の高い製品の売上が鈍化していることなどを背景に減益予想となっている。
b) 海外コンサルティング
同サービスは売上高で前期比1.8%増の3,032百万円、売上総利益で同9.9%減の617百万円を見込む。提携パートナーからの販売インセンティブが減少することなどを受け、粗利率が低下することを見込んでいる。一方で、新たに開始しているクロスボーダー事業に対する需要の拡大が予想されるものの、中国からのインバウンドが本格的な回復には至っていないため、業績予想には織り込んでいない。クロスボーダー事業に関しては、中国からのインバウンドが本格的に回復してくる段階で、業績拡大スピードも上がっていくことを想定している。加えて、同サービスの収益性は相対的に高いことから、売上高に占めるクロスボーダー関連事業の割合が高まるにつれ、中長期的には海外コンサルティングサービスの収益性も高まっていくことが想定される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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