飯野海運 Research Memo(10):中期経営計画の進捗は順調(2)
*14:50JST 飯野海運 Research Memo(10):中期経営計画の進捗は順調(2)
■飯野海運<9119>の成長戦略
3. サステナビリティ経営
サステナビリティ経営の一環として、一層の人的資本の強化や人権尊重への対応に取り組んでいる。人的資本の強化では、職場・労働環境の整備、多様な人材の確保、人材育成・リスキリングの強化、能力発掘の機会の提供、成果評価・処遇への反映など、人材投資とその価値を引き出す戦略を推進し、会社と従業員が共に成長する好循環の確立を目指す。なお2024年3月に「飯野海運グループ サステナビリティ基本方針」を策定し、サステナビリティに関する取り組みを加速させる方針を打ち出している。
人的資本強化の主要KPIとしては、育児休業取得率(2025年度目標100%、2023年度実績83%、以下同順)、総合職(管理職候補者)に占める女性比率(20%、17.68%)、海外短期研修・海外駐在経験者(2025年度末累計目標75名、2023年度末累計実績61名)を設定している。
人権尊重への対応では、飯野海運グループ人権方針を策定している。中期経営計画期間中には、人権デューデリジェンス(人権DD)を継続的に実施するとともに、調達方針・サプライヤー行動規範策定(2023年5月に策定済み)、サステナビリティ評価機関の認定取得、外部通報窓口の設置、社内人権教育研修の実施などを推進する。さらにサプライチェーンも含めた人権対応体制を確立し、人権尊重への取り組みを強化する方針だ。人権対応に関する主要KPIとしては、人権に関する研修の受講率(2023〜2025年度100%、2023年度実績78.7%)を設定した。
またDXの推進では、IINO DXタスクフォースを組織変更し、2023年6月にDX推進部を設置した。専任者を配置した独立した組織として社内外関係先と連携しながらDX推進を行い、船舶・ビル管理の品質向上(安全・安心の提供)、ESG推進サポート、競争力強化のための事業変革を目指す。なお、スタートアップとのコラボレーション強化に向けて2022年5月に、米国シリコンバレーに本拠地を置く世界最大のアクセラレーター(事業成長を促進する企業やプログラム)であるPlug and Play社の起用を決定した。2023年10月には、シンガポールのテクノロジー・スタートアップGreywing社との協働プロジェクトで開発したAI配乗計画作成プログラム(Crew Matrix Planning)を導入した。船員配乗計画作成プロセス自動化に向けて、Plug and Play社と協力しGreywing社を選定、構想から約9ヶ月でAI配乗計画作成プログラムの完成に至った。本プログラム導入により、船舶管理部門の業務負担を軽減し、海技者の持つ専門性をより経済的付加価値の高いプロジェクト等へのリソース再配分していく。
コーポレート・ガバナンスの強化では、取締役会の独立性・多様性確保への取り組みとして、2023年6月に女性社外取締役を1名増員し、社外取締役比率は50.0%、女性取締役比率は25.0%となった。
こうしたESG・SDGs経営への積極的な取り組みや財務状況改善への取り組みが評価され、2023年7月にはロンドン証券取引所のグループ会社であるFTSE Russellが構築したESG指数「FTSE Blossom Japan Index」及び「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に前年に続いて選定された。同年8月には「JPX日経中小型株指数」の構成銘柄に選定された。2024年4月には国際的な評価機関であるEcoVadisのサステナブル評価において、受審企業全体のうち上位17%に位置するスコアを獲得し、ブロンズ評価(上位35%以内)を取得した。また格付に関しても同月に、日本格付研究所(JCR)による格付が「BBB+(ポジティブ)」から「A-(安定的)」に格上げされ、格付投資情報センター(R&I)による格付が「BBB(ポジティブ)」から「BBB+(安定的)」に格上げされた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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