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銘柄/投資戦略 2024/07/01 15:07 一覧へ

APAMAN Research Memo(7):事業の着実な成長と財務基盤強化に取り組む

*15:07JST APAMAN Research Memo(7):事業の着実な成長と財務基盤強化に取り組む ■今後の見通し

2. 成長戦略
APAMAN<8889>は「不動産×Technology価値あるサービスを社会へ」をビジョンに掲げ、Platform事業、Technology事業を主軸に持続的な成長を目指す戦略を打ち出している。成長戦略としては従来と変わらず、賃貸管理の収益向上、賃貸管理物件の獲得、借上社宅の拡大の3点となる。また、新たに店舗等のテナント物件専門の検索サイト「店舗ネットワーク」を運営するTEMPO NETWORKの全株式をアーキテクツ・スタジオ・ジャパンから取得し子会社化しており、当第3四半期から連結業績に組み込まれる(Technology事業)。運営を開始してまだ2年程度のため業績への影響は軽微だが、住宅分野だけでなく店舗等のテナント物件の取り組みも強化していくものと思われ、今後の動向が注目される。

(1) Platform事業
Platform事業では、DXの推進による業務効率の向上や顧客サービスの品質向上に取り組み、賃貸管理や斡旋事業の収益力を強化するとともに、不動産オーナーとのコミュニケーションの促進、管理受託の強化等により管理戸数を積み上げることで賃貸管理事業の収益拡大を進めていく戦略だ。また、成長余地の大きい借上社宅事業も注力分野として人的リソースを投下し、さらなる売上成長を目指す。

a) 賃貸管理・斡旋事業の収益力強化
賃貸管理部門の収益力強化施策として、付加価値の高いサブリース契約の比率を高める方針で、引き続き契約条件の悪い物件に関して不動産オーナーと交渉し契約内容の見直しを進めている。前述のとおり、交渉の過程でサブリース契約から賃貸管理契約への切り替わりや解約が発生しているが、利益面でのマイナス影響はほとんどなく、契約条件の見直しが進んだ場合には増益要因となる。また、サブリース物件の入居率を高めることで収益性の向上を図る。入居率が1%上昇すると売上総利益で年間3億円弱の増益要因となるため、入居率上昇による利益改善余地は大きい。現在の入居率は92%台だが、2015年頃には95%台で推移していたこともあり、店舗で自社管理物件の斡旋に注力することで同水準まで引き上げるのは可能と弊社では見ている。自社管理物件は仲介手数料が不要となるため、斡旋収入の減少要因となるが利益への影響はない。

一方、斡旋事業の収益力強化施策としてはDXの推進が挙げられる。「アパマンショップ」店舗におけるオンラインサービスの拡充を図ることで集客力及び成約率を高めていく。それと同時に、店舗スタッフの生産性向上によって収益性を高めていく。接客に関しては物件の探索から予約、内見、重要事項説明、契約、鍵の受け渡しに至るまですべてオンライン(=来店不要)で完結する仕組みも業界に先駆けて構築しており、今後もサービス品質を向上していくことで集客力の維持向上を図る。また、店舗の閑散期に管理物件の受託営業も推進、店舗の収益力強化につなげる戦略だ。

2023年6月より直営店1~2店舗で試験運用を続けてきた「次世代AOS」も、2024年6月から直営店の一部より導入を開始し、FC店には年末までに全店導入を完了する予定となっている。従来の「AOS」と比べて業務処理スピードが格段に速くなるほか、入力ミスやコンプライアンス違反などの発生を防ぐ機能も実装しており、同システムの稼働によって業務効率も格段に向上するものと期待される。

b) 賃貸管理戸数の積み上げ
賃貸管理戸数については、2024年9月期も前期比で若干減少を見込んでいる。サブリース契約条件の見直し交渉を継続しており、一定程度の解約が発生するリスクを織り込んでいることや、M&Aによる新規取得を想定していないためだ。第2四半期まではほぼ想定の範囲内で解約が発生したものと見られる。ただ、一方で自力での賃貸管理戸数の積み上げに関してはあまり進んでいないようで、今後の課題となっている。M&Aについては現状、案件の持ち込みはあるものの価格が割高な水準のものが多く、当面は様子見方針としている。このため、今後も解約率の低減が重要になると見られる。不動産オーナーとのコミュニケーションを密に行い、要望などをヒアリングして解決につながるサービスを提供するなど地道な取り組みを進めていくことで顧客満足度の向上を図る。新規獲得については既存オーナーの追加取得物件や紹介物件などを確実に取り込み、管理戸数を積み上げていくことにしている。営業体制については現状の水準を維持する。弊社では、管理戸数1千戸当たりの営業利益は年間で20~30百万円程度になると試算しており、年間1千戸ペースで積み上げることができれば、20~30百万円の営業利益の増加要因となると予想している。

c) 借上社宅事業の育成
2021年9月期より本格的に開始した借上社宅事業については、提携社数を広げながら転貸サービス契約件数を伸ばし、2024年9月期以降も4割増とハイペースでの成長を目指す。借上社宅の業界最大手はリログループ<8876>の子会社(株)リロケーション・インターナショナルであり、2024年3月末のグループ管理戸数は約25.9万戸(前期比9.1%増)と増加基調が続いている。借上社宅管理事業の2024年3月期業績も売上収益で前期比11.6%増の28,917百万円、営業利益で同7.3%増の6,039百万円と増収増益が続いている。同社は後発となるものの業界全体が拡大を続けていることや、社宅斡旋では多くの顧客基盤を有していること、全国に1,000店舗を超えるFC加盟店舗数があり、これら加盟企業と協業していくことで同事業が収益柱の1つに育つ可能性は十分にあると弊社では見ている。管理業務手数料が550円/月(税込)と少額となるため、付帯商品・サービスを提供することで付加価値を高める戦略だ。

(2) Technology事業
Technology事業ではAPAMAN DXのさらなる推進拡大に取り組む。DXが遅れている不動産業界のなかで、同社はITを活用した先進的なサービスを積極的に活用することで事業を拡大してきた。具体的には、2006年に物件掲載から接客まで1台の端末でこなせる賃貸斡旋システム「AOS」を開発し仲介・斡旋業務の効率化を推進してきたほか、業界最大級のお部屋探しサイト「apamanshop.com」を立ち上げWebによる集客で先鞭をつけた。

2020年以降はAI技術を活用して適正な賃料を算出する「査定クラウド」や、IoT技術を活用したキーレスシステム「Selkeyクラウド」など顧客の利便性向上につながるサービスを相次いで開発・導入している。また、賃貸斡旋会社や賃貸管理会社の業務効率向上につながる各種サービスを統合したプラットフォーム「SKIPS※」を2021年より同社直営店やFC加盟店などで導入、利用を開始し、生産性向上につなげている(FC加盟店は通常のシステム利用料のみで利用可能)。また、「次世代AOS」についても順次導入を開始しており、2024年末までにFC加盟店すべての店舗に導入を完了する予定で、2025年以降に導入効果が顕在化するものと期待される。

※「SKIPS」は空室確認や内見予約、入居申込等をオンラインで可能とするクラウドサービス。2021年2月より運用を開始した。開発元はシステムソフトの子会社であるSS Technologies(株)で、同社はFC店舗のほか外部顧客への販売を行っている。


なお、FC店舗数はここ数年横ばい水準が続いている。同社の方針として、既存加盟店とのつながりを重視し新規加盟を積極的に取っていないことが要因となっている。オンライン化の進展で店舗形態も今後変わってくる可能性があり、こうした状況を見極めながら各加盟店で店舗戦略を検討しているものと思われる。同社は生産性向上に寄与するクラウドサービス「SKIPS」の提供や「次世代AOS」の導入により、これら加盟店の収益力強化を支援することにしている。

なお、新たにグループに加わったTEMPO NETWORKは、日本最大級の店舗賃貸斡旋件数を誇るACRE(株)と提携して展開する店舗斡旋・管理のフランチャイズ本部であり、FCサービスとしてテナント物件検索サイト「店舗ネットワーク」の運営や加盟店向けの各種クラウドサービスや研修サービス、情報提供サービスなどを行っている。2年ほど前から事業を開始し、まだ売上規模は小さいもののFC加盟店は約150店舗(アパマンショップFC店も一部加盟)で、北海道から沖縄までカバーしていることから、今後さらに増えていくものと予想される。アパマンショップでも店舗等のテナント物件は取り扱っていたが、テナント物件専門の運営会社をグループ化したことにより、今後店舗等のテナント物件の斡旋や管理についても今まで以上に強化していくものと予想され、今後の動向が注目される。

(3) 財務戦略
財務戦略としては、保有資産の圧縮を進めて資金効率を高めるなど、キャッシュ・フロー経営を継続することで、実質無借金経営(ネット有利子負債ゼロ)を目指す。不動産物件などの固定資産の整理についてはほぼ一巡したものと見られ、今後は営業投資有価証券(2024年9月期第2四半期末1,055百万円)のうち、IPOする企業が出てくれば売却して投資を回収することにしている。ここ数年のネット有利子負債の推移を見ると、新型コロナウイルス感染症拡大で資金需要が増した2021年9月期第2四半期末に前年同期比1,465百万円増加の13,633百万円と一時的に増加したものの、その後は順調に削減が進んでおり、2024年9月期第2四半期末は9,088百万円となっている。

同社はストック型ビジネスが売上総利益の約7割を占めていることから、営業キャッシュ・フローは現在の収益力で年間25億円程度を稼ぎ出す力があると見ている。これに対して設備投資額(直近5期間の実績で年平均13億円)や配当金3.5億円などキャッシュ・アウト分を考慮すれば、実質無借金経営を実現するまでに11年程度かかる計算だが、前述した成長戦略により収益を拡大することで前倒しするのは十分可能と弊社では見ている(M&Aなどで大型の資金需要が発生した場合を除く)。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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