スパークス G Research Memo(5):大幅増収増益、残高報酬、期末運用資産残高は過去最高を更新(1)
*13:45JST スパークス G Research Memo(5):大幅増収増益、残高報酬、期末運用資産残高は過去最高を更新(1)
■スパークス・グループ<8739>の業績動向
1. 2024年3月期の業績概要
2024年3月期の連結業績は、営業収益が前期比23.5%増の16,498百万円、営業利益が同31.1%増の7,476百万円、経常利益が同28.6%増の8,090百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同44.2%増の6,519百万円と大幅な増収増益だった。マーケットの環境が総じて好調に推移するなか、同社の注力分野である4本柱のうち、プライベート・エクイティを除くすべての分野が順調に運用資産残高を増加させた。期末運用資産残高が同25.9%増の18,893億円と過去最高水準となるなか、残高報酬も同12.0%増の14,258百万円に膨らんだ。加えて、マーケットの環境が総じて好調だったことで、成功報酬が同463.8%増の2,054百万円と急伸したことも営業収益の拡大に寄与した。同社の投資ポートフォリオには成功報酬が付帯しているものが多い。マーケット環境が好調な時には成功報酬の急伸が連結ベースの業績を押し上げる効果も期待でき、この点も同社ビジネスモデルの魅力だと弊社は考える。残高報酬と成功報酬が順調に増加するなか、人件費などのコストの増加を適切にコントロールし、営業利益は同31.1%増とトップラインの成長率を上回る伸びを見せた。この結果、営業利益率も同プラス2.6ポイントの45.3%となり、収益性がさらに高まった。同社が事業の持続的かつ安定的基盤となる収益力を示す指標として重視している基礎収益に関しても、同5.7%増の6,348百万円と過去最高を更新した。親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券売却益1,335百万円の計上により、同44.2%増と急伸した。これは医療、量子コンピュータなどの投資先株式を売却したことによるものである。同社の新事業領域育成に向けた取り組みが、着実に利益の増大に寄与していることが窺える。
(1) 日本株式
2024年3月期末の運用資産残高は、前期比37.8%増の13,131億円となった。新NISAの開始など、株式市場が好調に推移するなか、マーケット・ニュートラル投資戦略を除くすべての投資戦略が順調に運用資産残高を増加させた。特に運用資産残高が7,844億円と大きい長期厳選投資戦略では、堅調なマーケット環境下で投資先資産の時価が上昇したことに加えて、年度の後半に海外の大口機関投資家からの追加の資金設定があったことも運用資産残高の拡大に寄与した。海外機関投資家の日本株式に対する注目度が高まるなかで、同戦略のパフォーマンスが好調だったことを受け、追加資金を受託した格好だ。また、2023年5月にスパークス・企業価値創造日本株ファンドを新たに設定したことで、価値創造投資戦略の運用資産残高も前期末の25億円から1,078億円へと急拡大した。なお、マーケット・ニュートラル投資戦略の運用資産残高減少に関しては、マーケットが上昇基調のなか、相対的に同戦略に対するニーズが低下したことが要因であり、同投資戦略の有効性自体に変化はないと弊社は見ている。
(2) OneAsia
2024年3月期末の運用資産残高は、前期比40.2%増の1,262億円だった。韓国、アジア地域ともにマーケットの環境が総じて好調だった。加えて、海外拠点のファンドマネージャーに対して、同社の投資フィロソフィーがさらに浸透したことも運用資産残高の増加に寄与した。
(3) 実物資産
2024年3月期末の運用資産残高は、前期末比7.9%増の2,855億円となった。日本全国347箇所に及ぶ太陽光発電を初めとした再生可能エネルギー発電事業への投資を推進した。2023年10月のバイオマス発電所案件への投資や、安定稼働した太陽光発電所などへの投資が運用資産残高の増加に寄与した。トピックスとしては、カーボンニュートラル社会の実現に貢献するための取り組みとして2024年2月、スパークス・グリーン蓄電所ファンドを新たに設立した。同ファンドも今後の運用資産残高の増加に寄与してくる見込みである。
(4) プライベート・エクイティ
2024年3月期末の運用資産残高は、前期末比15.0%減の1,643億円となった。未来創生2号ファンドの投資期間が満了となり、残高報酬の計算基礎となる額の変更により運用資産残高が減少したことが影響した。宇宙フロンティアファンドでは、1号ファンドがフルインベストメントとなったため2号ファンドを2024年4月に設立した。同2号ファンドに関しては、2025年3月期の運用資産残高に寄与してくる見込みだ。日本ものづくり未来ファンドでは、同社初となるTOBを2024年1月に無事完了した。非公開化して企業価値を高めた後、再上場を目指すもので、今後はファンドを通じたTOBによる運用資産残高の拡大や、再上場時の株式売却による利益の積み上げも積極的に検討していく方針だ。
2. 過去の業績推移
(1) 運用資産残高
「OneAsia」の期末運用資産残高は一時大きく減少したものの、ここ数年は回復傾向にあり、特に2024年3月期は好調なマーケットの追い風もあり、前期比40.2%増と急伸した。「日本株式」も途中、軟調なマーケット環境下で、減少に転じる場面もあったものの、総じて順調に拡大した。「実物資産」「プライベート・エクイティ」に関しても、総じて順調に運用資産残高を積み上げてきている状況だ。全体の運用資産残高は高水準を維持していることから、「マクロはミクロの集積である」という投資哲学が投資・運用手法として優れており、投資家から支持を得ていると弊社では見ている。
(2) 営業収益
営業収益については、徹底した企業調査によるハイリターンの実現と比較的報酬料率の高いファンドの設定によって残高報酬が順調に増加した。「マクロはミクロの集積である」という投資哲学に則って運用されるファンドは、今後も高リターンを期待できるため、結果として残高報酬料率も高水準で推移していくと弊社では予想している。また、2024年3月期は成功報酬の急伸が営業収益の伸長に寄与した。同社のファンドは成功報酬が付帯しているものが多いため、マーケットが好調な時には成功報酬の増加によって営業収益の急伸が期待できる。この点もビジネスモデル上の魅力であると弊社は考える。
(3) 基礎収益
持続的かつ安定的な収益力を示す指標である「基礎収益」(「手数料控除後の残高報酬-固定費などの経常的経費」)は2008年3月期にリーマンショックの影響を受けて一時的にマイナスになったものの、その後は右肩上がりで回復している。特に企業の業績が新型コロナウイルス感染症拡大、ウクライナ情勢、各国中央銀行の金融政策などの影響により、金融市場の先行きについても不確実性が非常に高かったなかでも、基礎収益が順調に拡大してきたことは特筆に値する。独自の投資哲学から生まれる目利き力によって市場が軟調な中にあっても運用資産残高を順調に拡大させてきたことや、コストコントロールを適切に実施してきたことなどを考慮すると、基礎収益は今後も好調に推移することが期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
<SO>