粧美堂 Research Memo(6):2026年9月期に営業利益率10%が目標。株主還元は配当性向40%を目途
*12:06JST 粧美堂 Research Memo(6):2026年9月期に営業利益率10%が目標。株主還元は配当性向40%を目途
■成長戦略
1. 2019年9月期~2021年9月期の改革期の「選択と集中」戦略で大きな成果
粧美堂<7819>は2019年9月期より、問屋的ビジネスからメーカー的ビジネスへ転換して収益力向上を図るため、経営基盤の改革に取り組んでいる。経営目標として2026年9月期売上高200億円、営業利益20億円、営業利益率10%を掲げ、2020年1月には社名を創業時の粧美堂に変更し、2019年9月期~2021年9月期を創業的再出発による改革期と位置付けた。そして各小売業態のトップ企業との深いパイプを生かした「モノづくりのパートナー」として成長するため、重点施策として固定費の圧縮によって損益分岐点の引き下げを図るとともに、販売先と商品の「選択と集中」戦略、並びに美と健康の「ニッチ分野シェアNO.1メーカーの集合体」戦略を推進している。固定費の圧縮による損益分岐点の引き下げについては、2019年9月期~2021年9月期の3年間で2018年9月期比9億円圧縮(社内管理用数値)し、企業体質を大幅に強化した。
販売先と商品の「選択と集中」戦略では、販売先数を2018年9月期の605社から2021年9月期の220社に絞り込み、商品企画数も2018年9月期の1,481から2021年9月期の700に絞り込んだ。そして重点販売先20社向け売上高(ビューティードア除く国内のみ)は2019年9月期の約87億円から2022年9月期には約115億円まで拡大(2020年9月期はコロナ禍の影響で減少)し、売上構成比も2019年9月期の53%から2022年9月期には71%まで上昇した。また、中小小売店を中心とする販売先数の絞り込みや自社EC通販の拡大による営業効率化の効果に加えて、自社企画商品の拡販(自社企画商品比率は2018年9月期の72.6%から2021年9月期には77.0%に上昇)効果も寄与して、社員1人当たりの営業利益は2019年9月期の885千円から2022年9月期の2,616千円へと飛躍的に増加した。さらに、受注生産のため返品・在庫リスクがないOEMビジネスの拡大によって、在庫処分リスクも低減している。在庫廃棄金額は2018年9月期を100として指数化すると、2020年9月期にコロナ禍の影響で218まで上昇した後、2021年9月期には133、2022年9月期には89まで低下した。
2. 2022年9月期~2026年9月期は発展期
2019年9月期~2021年9月期の改革期に得られた成果をベースに、2022年9月期~2026年9月期を発展期と位置付けている。総合メーカー化の促進、経営基盤のさらなる強化により、「心と体の美と健康をサポートする」総合企画メーカーとして「粧美堂」ブランドを確立する方針としている。
取り扱い商品の中でも、特に強みを発揮しているのが同社のプチプラコスメ※だろう。プチプラコスメは、昨今のSNS全盛の時代において韓国コスメなどと同様に特に若い世代を中心に広まり、新しい時代の潮流になっていくものと考えられる。同社では、こうしたプチプラコスメを短期間に企画し、適正な品質管理の下で大量に供給するノウハウに長けていることが、顧客に受け入れられている要因と思われ、同社の成長を支えている。
※petit-price cosmeticの略で、低価格でありながら流行のデザイン、色味、実際の使用感など品質面も備えた化粧品のこと。デパコスと呼ばれる一般的にデパートで販売されている高価格帯のブランド化粧品と比較されることが多い。
キャラクターコスメについては、ディズニーやサンリオを始めとする多くのキャラクターのライセンサーと契約があり、浮き沈みなくその時々の人気キャラクターを使用した商品企画ができるうえ、“キャラクターコスメは粧美堂”という認識が業界やライセンサーに広まっていることが、競合他社よる参入障壁となっており、販売先に対する価格競争力なども含めて差別化要因にもなっている。
営業利益率10%に向けて今後深堀する重点施策として、売上高の拡大ではデータ・マーケティング機能のさらなる充実により販売精度を向上し、ニッチ分野シェアNO.1カテゴリー数を拡大する。売上総利益率の向上ではヒット商品の企画開発と集中販売による発注ロットの大型化、高付加価値・高価格商品に挑戦する。販管費率の低下では売れ筋商品の拡販による販売効率の向上、DX等の活用による生産性の向上を推進する。
物流戦略として、現在は大阪府箕面市に2拠点を保有しているが、施設の老朽化などを考慮して、今後は出荷業務などを3PL専門事業者に業務委託することにより、物流コストの変動費化や低減を進めていく。
なお、創業家出身である3代目社長の寺田正秀氏は現在45歳と若く、過去数年間の同社の体質改善において陣頭指揮を執り高い指導力を発揮してきた。創業家の持ち株比率は約6割と高いことから大胆かつ迅速な意思決定が可能でありM&Aや業務提携など変化の大きいマーケットにおいても柔軟に対応可能であることも大きな魅力だ。
3. 株主還元策
同社は株主還元の基本方針として、配当性向40%を目途として、今後の利益成長に合わせて増配を積極的に行っていく予定である。この基本方針に基づいて、2023年9月期の配当予想は前期と同額の10.00円(第2四半期末5.00円、期末5.00円)としている。予想配当性向は34.8%となるため、計画どおりの業績が達成されれば、増配の可能性もあるだろうと弊社では考えている。
株主優待制度については、毎年9月30日現在の300株以上保有株主を対象として自社企画商品を贈呈する。また長期保有株主優待として、300株以上を3年以上継続保有している株主に対して自社オリジナルデザインのクオカード1,000円分を贈呈する。
4. 弊社の視点
同社は、改革期と位置付けた2019年9月期~2021年9月期の「選択と集中」戦略により、2022年9月期には社員1人当たりの営業利益が飛躍的に増加するという成果を実現した。この点は高く評価できると弊社では考えている。また、同社の重点販売先20社の多くは売上高が数千億円以上の規模を誇る各小売業態のトップ企業であることから、こうした大企業との太いパイプを活用し、顧客のPB商品の企画段階から参入することで販売シェアを伸ばすことは可能と思われ、まだまだ成長の伸びしろは大きいと考えて良いだろう。化粧品・化粧雑貨や服飾雑貨の市場は人気・トレンドの変化が激しいうえに、為替変動リスクなどにも注意が必要となるが、同社は発展期と位置付ける2023年9月期以降も、引き続き「モノづくりのパートナー」としてOEMビジネス拡大を含む重点販売先戦略や、ニッチ分野シェアNO.1に向けた注力カテゴリーの商品開発・プロモーションを強化する方針としており、その進捗状況が注目点になるだろうと弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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