GMO-GS Research Memo(7):「認証×AI」を成長軸に、2035年12月期売上高1,000億円へ(2)
*12:07JST GMO-GS Research Memo(7):「認証×AI」を成長軸に、2035年12月期売上高1,000億円へ(2)
■今後の見通し
3. 中長期の成長戦略
GMOグローバルサイン・ホールディングス<3788>は中期経営計画の数値目標を開示していないが、2022年12月期から2026年12月期までの5ヶ年を「長期的な企業価値向上のための土台構築期」と位置付け、中期経営方針として表明している。この期間において、事業領域を「電子認証・印鑑事業」「クラウドインフラ事業」「DX事業」の3つに区分し、それぞれを「重点成長分野」「持続成長分野」「次期成長分野」と定義し、提供サービス及び体制基盤の強化を進めてきた。なかでも2026年は、AIの急速な普及という事業環境の変化を踏まえ、事業ポートフォリオの選択と集中を一段と進めた転換点となった。同社はGMOデジタルラボをグループ内のGMOコマースへ譲渡する一方、ストラテジットを連結子会社化し、GMO AIコネクトへ商号変更した。限られた経営資源を、成長性が高く自社の強みを生かせる領域へ再配分することで、資本効率と事業成長性の双方を高める方針だ。
(1) 事業領域の再定義
事業ポートフォリオの再構築によって、中長期的な成長戦略の軸も「認証」と「AI」の融合へと明確になりつつある。AIエージェントが企業活動へ本格的に実装されれば、AIが様々なSaaSや社内システムへアクセスし、自律的に業務を実行する機会が増加する。その際には「誰が利用できるのか」「何を実行してよいのか」といった認証・権限管理の重要性が一段と高まる。同社は長年蓄積してきた認証・セキュリティ技術とGMO AIコネクトのAI・データ連携技術を組み合わせ、AI時代における新たな「信頼インフラ」の構築を目指している。
a) 重点成長分野
重点成長分野である電子認証・印鑑事業では、トップシェアのストック型サービス基盤を確立するとともに、グローバル拠点の継続的成長を実現するため、経営資源を集中的に投入し、成長循環の活性化を図る。また、AIエージェントの普及を新たな事業機会と捉え、「GMOトラスト・ログイン」や「GMOサイン」とAIとの連携を進める。「GMOトラスト・ログイン」では2026年4月からMCP対応を開始しており、「GMOサイン」でもMCPサーバーの提供を予定している。これにより、従来の「人に使われるSaaS」から「AIにも使われるSaaS」への進化を図る。
b) 持続成長分野
持続成長分野であるクラウドインフラ事業では、安定的な収益源としての役割を果たすべく、成長領域であるマネージドクラウドサービス「CloudCREW byGMO」へのシフトを進める。AWSとの連携を強化し、クラウド移行や運用・監視、セキュリティ対応に加えて生成AIの導入支援までサービス領域を広げることで、ストック型収益の拡大を目指す。一方、既存のプライベートクラウドサービスを終了するなど事業の入れ替えも進めており、成長領域への人材再配置を含めた収益構造の転換を推進する。
c) 次期成長分野
次期成長分野は、従来の幅広いDX領域からAIを中核とする事業領域へと大きく方向性を変えつつある。その中核を担うのがGMO AIコネクトであり、同社が展開する「JOINT AI Flow byGMO」を通じて、AIエージェントと企業のSaaS、基幹システム、オンプレミス環境などを安全に連携する基盤を提供する。GMO AIコネクトが持つAI・データ連携技術と、同社が培ってきた認証・セキュリティ技術を融合することで、安全なAIの社会実装を支援する「認証×AI」の事業モデルを構築する方針だ。
既に「GMOトラスト・ログイン」や「GMOサイン」へのMCPサーバー提供など既存サービスとの連携が具体化しており、単独のAI事業を育成するだけでなく、既存の認証サービスをAI時代に対応したサービスへ進化させる役割も担う。GMO AIコネクトではグループ内からの受注も想定以上に拡大しており、2026年12月期はおおむね収支均衡、2027年12月期から本格的な利益貢献を見込んでいる。弊社では、2026年に実施した一連の事業ポートフォリオの再構築は、次期成長分野を「DX」から「AI」へと具体化すると同時に、電子認証を核とする既存事業との成長循環を構築する重要な転換点になったと評価している。
また、成長の源泉は人財であるとの認識に基づき、自律型人財が育つ風土の醸成を図る。具体的には、働き方改革の推進、システム刷新によるコミュニケーション強化、制度と環境の整備を通じて、組織力の強化を推進する。また、長期的な企業価値向上には、環境・社会課題への対応が不可欠である。同社は、働く環境の強化、セキュリティリスク対応の徹底に加え、クラウドインフラやSSLをはじめとするセキュリティサービス、さらにはAI・DX支援サービスを通じて、社会課題の解決に貢献する。
長期的には、こうした取り組みにより2035年12月期には売上高1,000億円を目指す。その成長イメージはオーガニック成長とM&Aがそれぞれ約半分を担うものであり、既存事業の成長と外部資源の獲得を組み合わせて長期目標の達成を目指す。2040年には電子認証関連サービスにおいて世界一となることを目指しており、認証局のみならず、「GMOサイン」や「eシール」などを含む電子認証を中心としたIT企業として成長していく方針である。
(2) 収益力向上の取り組み
収益力向上の取り組みでは、顧客単価向上と利益率向上を重視する。電子契約サービス「GMOサイン」では、2025年に実施したプラン改定により高セキュリティプランの提供を開始し、既に平均顧客単価の向上を確認している。医療や建築業界といった高度なセキュリティと信頼性が求められる領域への展開を推進し、電子署名の利用シーン拡大を図る。全国267自治体(2026年6月末時点)に広がるネットワークを生かし、周辺事業者への利用拡大を通じたエコシステム戦略も加速させる。
ログイン認証サービス「GMOトラスト・ログイン」では、従来のIDaaS中心のサービスから、SaaS管理サービスへと事業領域を拡大している。ID数の拡大に加え、新機能の追加に伴うオプション利用の増加によって顧客単価も上昇している。サプライチェーン全体のID管理や、親会社がグループ会社を含めてIDを一元管理するサービスへの引き合いも好調であり、新たな成長ドライバーとして期待される。また、AIエージェントの普及を見据え、人だけでなくAIエージェントのID管理へ対象を広げることで、新たな収益機会の創出を目指す。マネージドクラウドサービス「CloudCREW byGMO」では、AWSとの連携強化を生かした新規顧客獲得に加え、生成AIの導入支援、クラウド移行、運用・監視、セキュリティ対応などサービス領域を拡大し、一段上の成長軌道を目指す。
(3) 領域拡大の取り組み
領域拡大の取り組みでは、海外販売の強化を掲げる。企業ロゴ所有証明書(VMC)は、国内外で積極的な販促活動を実施する。VMCを発行できる電子認証局は世界で3社のみであり、国内企業では同社が唯一の存在である。2024年6月以降、競合他社がVMC市場から段階的に撤退したことを受け、同社の代理店を獲得し、販売網の拡大につなげている。
また、耐量子計算機暗号(PQC)やデジタルコンテンツの真正性・来歴を検証する技術C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)など、次世代技術への先行投資も継続する。特に生成AIの普及に伴い、AIによって生成・加工された画像や動画などが急増するなか、デジタルコンテンツの真正性を証明する技術の重要性は一段と高まると考えられる。C2PAはコンテンツの生成・編集履歴や出所を確認するための国際的な技術規格であり、同社が長年培ってきた電子認証技術をAI時代の新たな領域へ展開する機会となる。同社は国際的な実証実験にも参加しており、今後の市場拡大を見据えて取り組みを進めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 中西 哲)
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