ディーエムソリュ Research Memo(8):全事業が利益を押し上げ、収益バランスが改善
*15:08JST ディーエムソリュ Research Memo(8):全事業が利益を押し上げ、収益バランスが改善
■ディーエムソリューションズ<6549>の業績動向
1. 2024年3月期の業績動向
2024年3月期の業績は、売上高が18,207百万円(前期比1.9%増)、営業利益が568百万円(同22.9%増)、経常利益が575百万円(同20.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が402百万円(同27.7%増)となった。売上高はフルフィルメントサービスがけん引する格好で過去最高を更新、営業利益も過去2番目の大きさとなった。営業利益については、過去最高の2021年3月期はバーティカルメディアサービスがグーグルのアルゴリズムにフィットしたことが要因のため、全セグメントで押し上げた今回の方が収益のバランスはむしろ良好ということができるだろう。
日本経済は、ウクライナや中東の情勢不安、世界的な原材料・エネルギー価格の高騰、物価の上昇により、先行きの不透明な状況で推移した。このような環境下、同社は積極的な人材採用を行い、営業力と提供サービスの強化に取り組むとともに、ダイレクトマーケティングを実施する顧客企業に対して、マーケティングの各局面において最適なソリューションを提供することに努めた。この結果、DM発送代行サービスの堅調、高採算フルフィルメントサービスの拡大、インターネット事業の利益回復、アパレルの採算改善と全セグメントで収益が改善、DX推進による営業活動の効率化もあって、人件費や採用関連費、広告費、国立フルフィルメントセンター用土地建物の取得費用といった経費増をカバーして大幅増益となった。
なお、期初計画との比較では、売上高で1,599百万円の未達となったものの、営業利益で68百万円、経常利益で63百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で72百万円の超過達成となった。これは、売上高未達はバーティカルメディアサービスで他社提携メディアが苦戦したこと、利益過達は、国立フルフィルメントセンター用地の取得で新たな費用が発生したが、フルフィルメントサービスの大幅伸長、バーティカルメディアサービスで高採算の自社メディアが想定以上に伸びたことなどが要因である。
セグメント利益は各事業で大きく伸びた
2. セグメント業績の状況
2024年3月期のセグメント別の業績は、ダイレクトメール事業が売上高15,904百万円(前期比2.8%増)、セグメント利益882百万円(同4.8%増)、インターネット事業が売上高1,316百万円(同0.7%減)、セグメント利益268百万円(同43.7%増)、アパレル事業が売上高986百万円(同6.8%減)、セグメント利益53百万円(同122.2%増)となった。売上高の伸びはさほどでもなかったが、セグメント利益は各事業で大きく伸びた。
(1) ダイレクトメール事業
DM発送代行サービスでは、強みである90人体制の充実した営業を基盤に、企画制作からデザイン、印刷、封入・封緘作業を一括して手がけるワンストップサービスの提供や、郵便やゆうメールのスケールメリットを生かした提案型営業を積極的に展開した。このため、一部既存顧客の売上減はあったものの、その他の既存顧客や新規案件獲得が堅調に推移、また、Web受発注サービス「セルマーケ」も強みのSEOノウハウを生かしてWeb広告からランディングページへの導入を増やしたことで順調に拡大した。フルフィルメントサービスでは、EC通販市場の拡大に伴い宅配便などの小口貨物の取り扱いが引き続き増加するなか、発送後のカスタマーサービスの強化などEC事業者向け物流代行サービス「ウルロジ」のサービスを拡大するとともに、「ウルロジ」という商材の認知度向上へ向けてWeb広告やEC関連のセミナー、ニュース配信を通じて訴求を強めた。この結果、受注難易度が高いと言われる新規受注が好調で、売上高は20%を超える伸びを続けることができた。
売上面では新規顧客の開拓や既存顧客からの受注が堅調に推移、利益面では、2023年中盤から提案してきた値上げが少しずつ浸透してきたこと、「セルマーケ」、「DM WEB」経由の受注が全案件の3割を占めるようになって業務の効率化が進んだこと、売上高構成比がまだ1割程度と低いが高採算のフルフィルメントサービスの売上構成比が上昇していることから、国立フルフィルメントセンターの土地建物を取得したことによる関連費用の発生を吸収することができた。
(2) インターネット事業
デジタルマーケティングサービスでは、優位性があり高採算のSEOコンサルに関して、コンサル人員の強化や営業との連携により全案件に対して的確な提案をするなどサービスを強化したことで、新規受注が増え収益性も向上した。バーティカルメディアサービスでは、既存の他社提携メディアがアルゴリズムの変更によって苦戦する一方、粗利率が非常に高い自社メディア「Collect.」が大きく伸長。また、猛暑で人気となったウォーターサーバー比較サイトも好調に推移した。この結果、SEOコンサルが着実に収益を拡大するなか、低採算の他社メディアにおいて売上を落とすも、高採算の自社メディアが好調だったため、インターネット事業全体では微減収となったものの、大幅な増益を達成することができた。
(3) アパレル事業
子会社のビアトランスポーツでは、非効率なビジネスを改革し、売れ筋に絞って船便で大量に買い付けて販売するというビジネスにシフトしたことで販売効率が良化、コスト削減にもつながった。加えて、自社企画商品の好調や2024年3月期下期に開始した他社ファッションサイトを通じた小売の貢献もあり、原材料高や調達元である米国のインフレ、円安といった外部環境悪化の影響を吸収、利益率を大きく改善することができた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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