新晃工業 Research Memo(9):「move.2025」はおおむね1年前倒し達成の見込み
*16:29JST 新晃工業 Research Memo(9):「move.2025」はおおむね1年前倒し達成の見込み
■新晃工業<6458>の新中期経営計画
1. 中期経営計画「move.2025」の振り返り
2025年3月期に売上高520億円、営業利益75億円を目指した「move.2025」は、データセンター空調や産業空調の好調により2024年3月期業績予想が上方修正されたことで、おおむね1年前倒しで達成する見込みとなった。定量目標は、非常に順調に推移したと言うことができる。SIMAプロジェクトによる労働集約的な生産体制からの脱却、AHUシェアNo.1堅持、ヒートポンプAHUシェアNo.1奪取、ESG経営の推進による社会課題解決への貢献といった、中長期の土台構築に向けた定性目標もそれぞれが着実に進行した。特に、SIMAプロジェクトにより構築された新しい製販体制は既に大きな効果をあげている。また、水AHU強化も水AHUという基盤事業の圧倒的な競争優位を維持・向上することができ、ヒートポンプAHU強化は「オクージオ」ブランドにより市場シェアを拡大、工事・サービス事業の強化では新晃アトモスによる空調工事業への拡張、中国事業強化では市場戦略の見直しと利益体質の構築が進展した。技術深耕や品質向上、ESG経営の推進も順調に進行した。こうした「move.2025」の成果により、産業空調、データセンター空調での事業拡大の道筋が明確となったことで、攻めに転じるべき局面を迎えたと言えよう。
2027年3月期に営業利益86億円などを目指す
2. 新中期経営計画「move.2027」
こうした状況を背景に、同社は戦略を積極化すべきと判断、新たな成長ストーリーの推進と資本コストに基づく高度な経営を目指す新中期経営計画「move.2027」(2025年3月期~2027年3月期)を策定した。新中期経営計画では、現中期経営計画の下で進めてきたSIMAプロジェクトによって構築中の事業基盤を土台に、既存市場におけるさらなる収益性の向上と新市場への挑戦を進める方針で、「空気で未来を拓く」長期ビジョンのなかでバリューチェーンをアップデートする加速ステージとして位置付けた。また、PBRが低迷する上場企業に対する東京証券取引所の改善要請を受け、資本コストや資本収益性をより強く意識した経営にもシフトしており、企業価値の向上に向け、収益を拡大する一方で株主還元の強化と大胆な資本構成の見直しなどを具体的に進めることとなった。
そのため、事業戦略で、水AHUのバリューチェーンを生かした成長領域の拡大と既存事業の深耕による利益成長を実現し、財務戦略では、利益の拡大と資本の見直しによるROEの向上及び市場との対話強化による株主資本コストの低減を背景に企業価値の向上を図る。非財務戦略では、ESG戦略を軸に、予測される気候変動リスクを緩和し事業機会を獲得するとともに、人的資本経営によって誰もが幸せになる環境を構築、コーポレート・ガバナンスの実効性を強化する方針である。その結果、2027年3月期に売上高560億円、営業利益86億円、ROE10%以上、配当性向50%、DOE下限3.5%、PBR1倍以上を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
<HH>