アズワン:研究支援領域で持続的成長を続ける商社機能型プラットフォーマー
*16:01JST アズワン:研究支援領域で持続的成長を続ける商社機能型プラットフォーマー
アズワン<7476>は、研究用・産業用機器や消耗品をワンストップで提供する専門商社であり、研究者や医療従事者に対して「見える・つながる・手に入る」を実現する独自のプラットフォーム戦略を強みに持つ。研究機材や消耗品の調達において高い利便性を提供し、業界内でも圧倒的なトップシェアを築いてきた。同社の事業は「ラボ・インダストリー」「メディカル」「その他」に区分されており、ラボ・インダストリー部門が主力として全体の売上を牽引する。電子商取引(EC)やオリジナル品の拡充、さらにサービス領域(レンタル・校正)の成長が収益基盤を厚くしており、16年連続の増収、14年連続の過去最高売上更新という実績を誇る。
同社の強みは、第一に商社でありながら粗利率30%を安定的に維持できる収益構造である。業界内で圧倒的なトップシェアを誇る上、さらなる商品点数の拡大とEC基盤の強化を進めており、顧客が最適な調達手段を選択できるだけでなく、輸入品やプライベートブランドなどの収益性の高い商品を積極的に拡販することができている。第二に、商社機能を基盤に展開している研究機器販売とそのメンテナンスサービスである。商社機能で持つ全国の研究室へのチャネルを活用し、高額な研究装置やそのレンタルを行い、またそうした高度な機器のメンテナンスサービスまで内製化することで、機器のライフサイクルに応じた包括的なサポートを提供している。第三に、物流網の強化である。九州DCの拡張や棚搬送AGVの導入により省人化を進め、在庫の可視化とサプライチェーン効率化を通じて、安定供給と資産効率改善を両立している。さらに、オリジナル商品の開発を強化し、全社売上に占める比率を高めることで高収益体質を維持している点も特徴的だ。
2026年3月期第1四半期の業績は、売上高25,637百万円(前年同期比6.1%増)、営業利益3,126百万円(同14.0%増)と、過去最高を更新した。部門別では、ラボ・インダストリー部門が21,519百万円(同9.4%増)と堅調に推移し、特にラボラトリー分野の需要が拡大した。一方で、メディカル部門は3,978百万円(同8.9%減)と反動減を受けたが、これは感染症関連需要の一巡や病院経営環境の悪化による一時的要因であり、長期的には安定需要が見込まれる。中計施策別では、シェア拡大中のECが8,714百万円(同9.1%増)、サービスが920百万円(同14.6%増)、プライベートブランド品が8,335百万円(同5.7%増)と、いずれも成長を継続している。
同社は「AS ONE VISION-2035」において、連結売上高3,000億円、ROE17%以上を長期目標に掲げている。その実現に向け、中期経営計画(FY2025-27)では売上高1,300億円、営業利益148億円、ROE13%以上を目標としている。重点施策として、ECの進化(AXEL 2.0の刷新、商品データベースの充実)、商品点数の拡充(1,700万点への拡大)、物流機能の強化(新センター設立、省人化推進)、サービス事業基盤の拡充(レンタル・校正センター新設)、オリジナル商品の投入加速などを掲げ、研究支援商社から研究基盤プラットフォーマーへの進化を目指している。
株主還元については、これまで50%の配当性向の維持に加え、今後は自己株式取得を実施し総還元性向を60-75%の水準に引き上げる方針を示している。一方ROEは2025年3月期実績で12.55%と高水準を維持しており、M&Aなどの事業戦略も積極的に検討していくこととしている。このようにして、株主価値の向上と持続的成長を両立・加速させていくことが期待される。
総じて、同社は研究・産業分野のインフラを支える独自のビジネスモデルを強みに、安定した成長基盤と高い収益性を兼ね備えている。ECの進化とデータプラットフォーム構築、物流・サービスの高度化を軸に、2035年に向けた長期的な成長が期待される。今後も同社の持続的な業績拡大と企業価値向上に注目していきたい。
<HM>