トリプルアイズ Research Memo(3):AIソリューション事業とGPUサーバー事業で構成(1)
*13:03JST トリプルアイズ Research Memo(3):AIソリューション事業とGPUサーバー事業で構成(1)
■トリプルアイズ<5026>の事業概要
1. セグメント情報
同社は、同社と連結子会社4社((株)シンプルプラン、(株)所司一門将棋センター、ゼロフィールド、BEX)の計5社で構成されている。セグメントは、AIソリューション事業とGPUサーバー事業の2つであり、AIソリューション事業は、AIインテグレーション、エンジニアリング、AIプロダクト、その他により構成されている。GPUサーバー事業は、ゼロフィールドを2023年9月に連結子会社化し創設された。なお、同社は事業セグメントの区分方法を変更し、報告セグメントを従来の「AIソリューション事業」「研修事業」から、「AIソリューション事業」「GPUサーバー事業」に変更している。
(1) AIソリューション事業
(a) AIインテグレーション
AIインテグレーションは、LAMP※1技術、OSS※2開発技術をベースとした基幹システム・決済システムなどの開発を中心に、金融、流通、不動産、サービス、医療などの様々な業界において実績を有している。大手SIerからの一次請けやエンドユーザーからの直接取引によるシステム開発が主な案件となっている
※1 LAMPとは、「Linux」、「Apache」、「MySQL」、「Perl・PHP・Python」の4種類の技術の頭文字をとった総称であり、Webサイト構築技術を指す。
※2 OSS(Open Source Software:オープンソースソフトウェア)とは、ソースコードの改変や再配布が自由に認められている無償のソースコードやソフトウェアなどのこと。
同社では、システムの開発からネットワーク構築まで開発における様々な分野に精通したフルスタックエンジニア※の育成に注力している。あらゆる工程に対応できる技術者を揃えており、システムの設計から、システム開発、システム運用のためのインフラ構築、運用・保守まで一連のサービスをワンストップで提供できる体制を構築している。顧客のニーズに合わせて、柔軟に対応し、高クオリティかつコストパフォーマンスの高いサービスを提供することで、競合他社に対して優位性を築いている。
※ フルスタックエンジニアとは、システムエンジニア・ネットワークエンジニアなどの特定の技術を専門とする技術者に対し、システム開発・ソフトウェア開発などのエンジニアリング業務において、設計から環境構築、開発、運用までの全ての行程を手掛けることができるエンジニアのことを指す。
さらに、AI、ブロックチェーン※1、IoTなどの研究開発成果を生かした最先端技術によるソリューションを提携先SIerと協働し、顧客先に提案できるのも同社の特徴である。AIエンジン※2を独自に設計、構築することができるシステム開発会社として、顧客先のニーズに最適なAIシステムをトータルで提供し差別化を図っている。
※1 ブロックチェーンとは、データが地理的に離れたサーバーに分散保持され、一定の形式や内容のデータの塊(ブロック)を改ざん困難な形で時系列に連結していく技術。
※2 エンジンとは、特定の情報処理を実行するためのひとまとまりになったソフトウェアやシステムなどのこと。
(b) AIプロダクト
AIプロダクトでは、同社が独自に開発したAIエンジンによるサービスを展開している。同社のAIエンジンは、画像認識を中心に、特に顔認証のサービスを充実させている。なお同社のAIエンジンは、画像認識に留まらず言語処理、需要予測、経路探索などに活用されている。これらのAIエンジンは、他社のデバイスへの組み込みが可能で実績も増加している。
同社が注力する画像認識プラットフォーム・AIZEは、顔認証、画像認識を行うソリューションとして、流通小売業を中心に店舗や工場など、業種・業態を問わないサービス提供を行っている。なかでも顔認証については、512次元の特徴量※を顔画像から検出し、正面静止画像であれば認証率99%超という高精度を誇っている。横や斜めからの顔画像の認証、ウォークスルー環境での認証、マスク着用時の本人認証も可能で、写真によるなりすまし認証も防ぐことができる認証精度を有している。年齢・性別・感情を推測できるAIエンジンは、マーケティングやおもてなし、安全管理といった分野で貢献している。
※ 特徴量とは、コンピュータが学習するデータにどのような特徴が含まれているのか数値化したもの。
AIZEは画像認識プラットフォームとして豊富なサービスレイヤーを備え、拡張性に優れており、個別の企業ニーズに合ったサービスラインナップに留まらず、既存システムに即したカスタマイズも可能である。
AIZEは画像を取得するデバイスを問わない。防犯カメラ、スマートフォン、PCカメラ、サーモ機器、ロボットなど、カメラ付きのデバイスと、通信環境さえあればクラウド上のAIエンジンが画像を解析する。短期間に導入することができ、ローコストで始められる顔認証システムは、AI導入のスモールスタートに最適である。AIZEには記録保存できる画像枚数の上限がないため大量のデータの処理が可能で、AIによる企業のDX推進を容易にする。
AIZEが提供する自社プロダクトは、以下のとおりである。
・店舗などでの顔画像の認識によるマーケティングサービス(AIZE Research)
・従業員の勤怠管理・会員管理・入退室管理などを行う顔認証勤怠サービス(AIZE Biz)
・顔認証勤怠サービスにアルコールチェック機能を付加し、道路交通法改正に対応したサービス(AIZE Breath)
・太陽光発電所の銅線ケーブル盗難対策のための侵入検知AIシステム
(c) エンジニアリング
同社は2024年7月にBEXを買収し、100%子会社化した。BEXは自動車分野における機械設計開発事業、先端技術領域の研究・実装(AI研究、EV設計)、ITシステムの設計開発事業などを手掛けており、主要取引先はアイシン<7259>、小島プレス工業(株)、住友電装(株)、デンソー<6902>、トヨタ自動車<7203>、トヨタ車体(株)など大手自動車メーカーやティア1などが多くを占めている。事業規模としては2023年3月期が売上高1,551百万円、営業利益86百万円であり、買収価格の約650百万円は割安に映る。同社がBEXをグループ化した背景には、BEXの自動車設計業務において、自動車産業の特性上、CAD図面の法規チェックが煩雑化しており、今後両社がタイアップすることで早期のAI実装が可能となる点が挙げられる。これらが実現できれば、既存取引先の拡大やBEX自身の業務効率化につながり、収益性の向上が進むなどメリットは大きいと見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
<HN>