節目迎えたベトナム株【フィスコ・コラム】
*09:00JST 節目迎えたベトナム株【フィスコ・コラム】
ベトナムの代表的な株価指数VNが節目の水準付近に浮上し、次のステージが注目されています。高い経済成長率を維持すれば、さらに過去最高値を目指す可能性があります。逆に、国際情勢の変化に対応できなければ、株価は失速しそうです。
2025年のVN指数は1260ポイント台で寄り付き、1月半ばに1220ポイント台に下落した後は反転。旧正月(テト)を挟んで上昇基調を強め、節目の1300ポイントを上抜けました。このレベルは2022年半ばに割り込んでから、その後の上昇基調でレジスタンスラインとなり、一段の上昇を阻止してきました。昨年も何度か上抜けをトライしたものの、明確に突破できない「ガラスの天井」となりました。
ベトナム市場の活況は2022年春ごろまで続いていました。コロナ禍からの回復を背景に、VN指数は年初1500ポイント付近の過去最高値圏に浮揚。ところが、不動産大手の幹部による自社株取引の株価操縦が明らかになると、投資ブームは急激に縮小していきました。同年後半には心理的節目の1000ポイントを割り込み、2020年後半からの上昇分を帳消しにしてしまいました。
しかし、最近のベトナム経済は、政府が進める経済自由化や対外開放、インフラの整備によって牽引され、成長を加速させています。その結果、海外からの直接投資が増え、製造業やサービス業を中心に企業活動が活発化。また、米中対立などの地政学的な不安定さが高まる中、中国や韓国の大手企業はリスクを分散するためにベトナムへの投資を拡大しており、新たな生産拠点としての評価も高めました。
ベトナム政府は2025年の国内総生産(GDP)伸び率の目標について、輸出入がそれぞれ10%超増加を見込めるとし、従来の+6.5-7.0%から+8.0%に上方修正。2024年の伸び率+7.09%は東南アジア主要国のトップでしたが、それを上回るとの見立てです。工業生産と外国投資が今年のベトナム経済を牽引するとみられます。そのシナリオなら、VN指数は次の節目1400を目指しても不自然ではありません。
ただ、ベトナム経済は海外からの直接投資や輸出に大きく依存しているため、世界経済の不透明感やサプライチェーンの混乱といった国際情勢の変化に影響を受けるリスクがあります。加えて、国内の制度改革や金融システムの整備が進まなければ、海外の景気後退や市場の変動に耐え切れず、投資家の信頼が揺らいだり、資本が流出したりする可能性が指摘されています。VN指数はそれを見極め、徐々に上値を試していく展開とみます。
(吉池 威)
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