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銘柄/投資戦略 2024/06/07 13:51 一覧へ

Jストリーム Research Memo(11):企業体制の充実などを背景に2025年3月期は業績回復へ

*13:51JST Jストリーム Research Memo(11):企業体制の充実などを背景に2025年3月期は業績回復へ ■業績動向

4. 2025年3月期の業績見通し
2025年3月期の業績についてJストリーム<4308>は、売上高11,720百万円(前期比4.0%増)、営業利益698百万円(同23.2%増)、経常利益709百万円(同21.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益365百万円(同22.5%増)を見込んでいる。より一層スピードを増して顧客ニーズに対応するとともに需要の拡大に応えるため、案件対応能力や開発能力など企業体制を充実させていく。一方で、動画を利用して業務DXを図るSaaS企業などを主なターゲットにしてM&Aを実行し、事業領域の拡大を追求する考えである。この結果、売上高は、OTT領域が引き続き好調、アフターコロナの反動減から一巡が期待されるEVC領域が増収を予想している。営業利益は、増収効果に加え、医薬系企業を主力顧客とするグループ子会社で、本社移転効果の発揮や人員整理などコストダウンによる黒字転換を計画しており、増益予想としている。一部保守的な印象もあるが、期初業績予想未達で減収減益となった2024年3月期の直後であることから、達成可能な予想としたようだ。

コロナ禍以降、DXによる産業構造の変化は著しいものがある。新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴いリアル回帰が大きく進行したが、アフターコロナにおいては、コロナ禍でのWeb関連施策によって得られた知見を活かし、ハイブリッドで事業展開することが一般的な企業戦略と言える。同社は、DXの目的達成に最適化されたソリューションや、リアルと合わせたユーザー体験の高レベル化、セキュリティの強化を推進し、業容を拡大する方針である。医薬領域ではデジタルマーケティングを中心としたサービスの提供、EVC領域ではビジネス全般における動画ソリューションの開発・提供、OTT領域では拡大が見込まれるネットコンテンツ配信サービスへの関与を強める。

市場別戦略としては、医薬領域では、2024年3月期下期にプロジェクト化し2024年4月に発足したDET(製薬メーカー向けデータ活用支援チーム)という専門組織によって、Web講演会の主要顧客の薬剤ごとの営業やデジタルマーケティングの提案を強化する方針である。薬剤ごとの営業では、未開拓の大手・中堅の製薬企業にもアプローチし、ニーズが強いハイブリッド講演会やユーザー利便性の高いオンデマンドを訴求することで業績の底上げにつなげる。また、コミュニケーションに有効なメタバース、XR映像ソリューションなどを通じて提供価値を高め、新規顧客開拓を推進していく。デジタルマーケティングでは、「WebinarAnalytics」のデータ連携やAIを活用した講演内容の要約、講演会後のコミュニケーションツールなどによって医療従事者のエンゲージメントを向上させる方針である。現状、コロナ禍からの反動減による販促活動の抑制が依然続いているが、引き続きデジタルマーケティングへの関心は高く、顧客によってはブランドごとや新薬ごとのプロモーションが復活しつつあるようだ。また、2024年4月からは医師の働き方改革の新制度が施行されることから、それをフックにオンデマンドへのニーズも強まりそうだ。同社は医薬領域の売上高を前期比微減で見ているが、医療従事者のオンラインニーズは強く、やや保守的な予想と言えよう。

EVC領域では、教育・トレーニングや社内情報共有は引き続き堅調である。イベント・セミナーは企業活動のリアル回帰が進んだ一方でユーザーのオンラインニーズが引き続き強いことから、今後ハイブリッド化が進む可能性が高いと考えられる。また、コロナ禍を背景に動画などのリソースが蓄積されたが、それらを適切に管理・共有して活用ができている企業は少ないようで、セキュアな情報共有の場を手軽に構築できるEQポータルは有効だと考えられる。このため同社は、EQポータルを主軸に、2024年4月に立ち上げたプロダクト専任チームと代理販売店チームを使い分けて販売促進活動を強化し、大口顧客の育成を進める方針である。このうちプロダクト専任チームは、EQポータルを使った動画の利用用途別の施策を実施、代理販売店チームは、パートナーの種別やレベルに応じた支援施策で活動を促進する一方、パッケージ化されたサービスを中心にパートナーを通じた販売ルートの拡大を図る。大口顧客に関しては、動画利用拡大の見込みのある顧客をターゲットに、企業活動の年間スケジュールに合わせた動画活用を複数の部署をまたいで提案、動画作成の内製化を支援する際は常駐や業務受託を通じて継続的な取引につなげる考えである。「VideoStep」では「J-Stream Equipmedia」と連携するとともに、新たな市場であるデスクレスワーカー向けの教育・トレーニングの支援の拡大を進める方針である。以上から、EVC領域の売上高は前期比1ケタ増の伸びが期待される。

OTT領域では、DXの加速やネットコンテンツ視聴の活性化を受け、単に動画配信を支援するだけでなく、マネタイズニーズへの対応など、動画ビジネスにおけるトータルテックパートナーを目指す。大規模配信やサイト運用などを総合的に担当するキー局などに対しては、マルチCDNなどを利用した配信品質の向上や、安定したサイト運用体制の提供を行い、既存顧客の維持と新規顧客へのサービス導入を図る方針である。五輪などの大型イベントについては、信頼性や実績をアピールして関連案件の獲得を進める。BS/CS局やスポーツ、各種公営競技などのコンテンツ事業者に対しては、マルチアングル配信などの映像機能に加え、コンテンツ配信用のCMSや課金機能、キャンペーン展開ツールなど、海外SaaSを利用した動画配信とも組み合わせて利用できる各種の機能・ソリューションを提供し、顧客獲得につなげる。また、商品に封入されたシリアルコードを使って動画の限定配信を行うマストバイソリューション、動画ファイルのアップロードとメタ情報の登録が一度にできるメタマスタ管理ソリューション、KDDIとの協業深化によるデータセンター接続容量拡大などのサービス基盤整備も図る。以上から、引き続き好調なOTT領域は前期比2ケタ増を継続する可能性が高いと言える。

なお、同社はM&Aや出資をほぼ毎年1件のペースで積極的に実施している。M&Aによる2024年3月期の増収効果としては、ビッグエムズワイ、イノコス、VideoStepの3社で2,213百万円、連結売上高の20%を占めている。M&Aの目的は、医薬領域では製薬企業への提案力強化、EVC領域では既存事業の規模拡大や新規市場の獲得など、OTT領域ではAWS・クラウド専門開発としている。M&A対象である動画SaaSは、バリュエーションが高騰しているため、検討対象が減少しているようだ。一方、AIなどの発達によりSaaSをベースとしたスタートアップが増加すると想定しており、同社もターゲットとして重視している。なお、2025年3月期についてはM&Aを業績予想に織り込んでいないことから、時期にもよるが、実現すれば収益への貢献も期待できる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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