日産東HD Research Memo(3):100年に1度の大変革をもたらす「CASE」「MaaS」
*16:13JST 日産東HD Research Memo(3):100年に1度の大変革をもたらす「CASE」「MaaS」
■日産東京販売ホールディングス<8291>の会社概要
3. 自動車業界の動向
新型コロナウイルス感染症拡大(以下、コロナ禍)やウクライナ情勢などによる生産や流通の混乱が落ち着きを見せても、自動車業界は先端技術化やCO2排出削減など課題は尽きない。こうした状況のなか、「CASE」と「MaaS」という潮流が、自動車業界に100年に1度の大変革をもたらすと注目されている。「CASE」とは、自動車のIoT化(C:Connected)、自動運転(A:Autonomous)、所有から共有へ(S:Shared & Services)、EV(E:Electric)のことで、自動車業界に大変革を引き起こす一連の技術進化を指す。一方「MaaS(Mobility as a Service)」は、移動自体をサービスとして捉えた「モビリティ」という考え方に基づき、様々な交通手段を最適に組み合わせて予定・予約・決済をワンストップで提供、個人単位の移動ニーズにまで対応したサービスである。自動車業界の大変革期における適応の1つと考えられる。
こうした大変革に即してEVを急速に普及させたのが欧米や中国で、日本では話題が先行するばかりで必ずしも普及しているとは言い難い。EVに本格的に参入している国内メーカーが日産自動車くらいで、国内の新車販売台数に占めるEVの構成比が非常に小さいからだ。このため、業界全体に急速充電器を増やすというモチベーションが働かず、消費者にEV購入の二の足を踏ませているともいえる。こうした環境ではあるが、同社は早い段階からEVやe-POWER※1といった電動車※2の普及に取り組み、電動車と相性がいいと言われるIoTには先端技術化で、自動運転にはプロパイロット(ProPILOT:運転支援技術)などの技術進化で対応してきた。他社メーカー製のEVも利用可能な急速充電器を各店舗に設置するなど、インフラ投資も積極的に続けており、先進性などの面で同社の電動車は優位性を持つに至った。さらに、「MaaS」に対してはリースやレンタカーなどモビリティ事業の強化を進めている。このように同社は、「CASE」や「MaaS」といった潮流に即して事業体制を構築しているため、本来肥沃な市場といえる日本でEV需要が急拡大する際には、先行者メリットを享受することができると思われる。
※1 e-POWER:日産自動車独自のハイブリッドユニット。発電のみにエンジンを使用するため、EVと同様のドライビングフィールを味わえる。
※2 電動車:電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV、PHV)、ハイブリッド車(HEV、HV)、燃料電池車(FCEV、FCV)などの総称。同社の場合はEVとe-POWER、ハイブリッド車を指す。
近年、EVの需要が鈍化していると言われるが、これは中国や欧米などEVの市場シェアが高い国に限った現象で、しかも中国は新エネ車シフト、欧米は各国それぞれの理由で補助金打ち切りと個別の要因がある。したがって、EVの市場シェアが低く、補助金も継続している日本には当てはまらない話である。また、EVのリスクについて、バッテリー寿命・交換コスト、航続距離・充電インフラ・充電時間への不安、車体価格の高さなどが喧伝されているが、アーリーアダプターによる需要が一巡し、機能やインフラが向上して価格がこなれてくれば、日本を含めてアーリーマジョリティによる購買が始まると予想される。もちろん普及のためには、特にキーテクノロジーであるバッテリーにおいて技術進化や量産面でのブレークスルーが必要となるが、全個体電池の実用化が視野に入りつつある今、アーリーマジョリティが動き出す日も遠い未来のことではなさそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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