芙蓉リース Research Memo(4):事業分野別の業績及び活動実績、2025年3月期中間期の総括
*14:04JST 芙蓉リース Research Memo(4):事業分野別の業績及び活動実績、2025年3月期中間期の総括
■芙蓉総合リース<8424>の決算動向
4. 事業分野別の業績及び活動実績
(1) モビリティ物流(RT分野)
2025年3月期中間期末の営業資産残高は2,001億円(前年同期末比61億円増)に拡大し、ROAも4.0%(前年同期は3.4%)に改善したことで、経常利益は40億円(前年同期比10億円増)となった。米国子会社Pacific Rim Capital※1を中心とした海外事業の伸びに加え、国内事業も順調に推移し増益基調が継続した。一方、日本におけるEV普及率は緩やかな状況が続いており、非財務目標である「EV/FCV保有比率」は横ばいにとどまった。活動面ではEV領域における協業を通じた取り組み※2が拡大したほか、物流領域においても、サブスクリプション型自動搬送サービスの共同事業を目的とする業務提携締結※3やタイの物流ソリューション会社PLICの連結化などを行った。
※1 マテリアル・ハンドリング(運搬)機器等を手掛けるオペレーティング・リース会社。
※2 具体的には、「EVライフサイクルサービス」(ヤマトグループとの協業)や電気バスのサブスクリプションサービス「九電でんきバスサービス」(九州電力<9508>、(株)EVモーターズ・ジャパンとの協業)、社用EVを活用したVPP実証事業(横河レンタ・リース、(株)REXEVとの協業)などがあげられる。そのうち「EVライフサイクルサービス」は、ヤマトグループが商用車ユーザーの脱炭素化支援を目的として提供開始(2024年10月)したものであり、同サービス内のEV・充電器の導入支援において機能連携を実施している。
※3 自動運転技術を活用した自動搬送ソリューションを提供する(株)eve autonomyと自動搬送サービスの共同事業を目的とする業務提携を締結した。eve autonomyが提供するレベル4の自動運転システムを活用した自動搬送サービス「eve auto」に、同社のファイナンス面・アセット管理面におけるサービス・ノウハウを組み込み、サブスクリプション型自動搬送サービス「eve auto Re Fine」を共同で提供する。
(2) エネルギー環境(AT分野)
2025年3月期中間期末の営業資産残高は1,956億円(前年同期末比135億円増)に拡大し、ROAも1.4%(前年同期は1.1%)に改善したことで、経常利益は14億円(前年同期比6億円増)となった。外貨コストの増加を打ち返し、増益を確保した。また、国内外のアライアンス先との協業案件が順調に拡大しているほか、開発型案件においてもおおむね順調に推移し、非財務目標である再エネ発電容量1,000MV達成に向けてハイペースで進捗している。蓄エネルギー領域においては、多種多様な企業とのパートナーシップの構築に加え、国内初となる系統用蓄電池専業ファンド※1への出資参画や同社が初めて手掛ける大規模系統用蓄電池事業※2でも成果を残すことができた。
※1 ジーアイエナジーストレージマネジメント(株)(伊藤忠商事と英国Gore Street Capital Limitedの共同運営)が運営する東京都蓄電所投資事業有限責任組合(2024年2月29日設立)。東京都も出資する日本初の専業ファンドである。
※2 大和エネジー・インフラ(株)及びアストマックス<7162>との共同事業となる。
(3) BPO/ICT(AT分野)
2025年3月期中間期の経常利益は22億円(前年同期比4億円増)となった。旺盛なIT投資が下支えとなり、子会社WorkVisionなどICT事業を中心に利益が伸長した。非財務目標である「顧客の業務量削減時間(2022年3月期比)」についても64万時間(前年同期は33万時間)と順調に進展している(中期経営計画目標値は100万時間)。また、活動面では、パートナーとの連携を通じたサービスメニューの拡充※などで成果を残した。
※ (株)梓総合研究所との施設総合管理システム「AIR-Plate」に係る業務提携締結のほか、決済サービスを手掛ける三菱UFJファクター(株)と子会社FOCとの業務提携による一貫したBPOサービスの提供など。
(4) ヘルスケア(AT分野)
2025年3月期中間期末の営業資産残高は874億円(前年同期末比横ばい)にとどまり、ROAは1.7%(前年同期は1.9%)に低下したことから、経常利益は7億円(前年同期比1億円減)となった。営業資産の積み上げは進まなかったものの、アクリーティブの提供する診療・介護報酬ファクタリングは地域金融機関・コンサル等との連携強化により増加基調で推移している。ヘルスケア事業施設については、非財務目標である「高齢者介護施設(新規提供室数)」が1,011室と前年同期末比で328室増加、アライアンス先と連携した取り組みも拡大しており、好転が見込まれるマーケット環境において、引き続きヘルスケアプラットフォーム※の提供と営業資産の積み上げを図る。
※ ファイナンス(設備投資、運転資金)からサービス(BPO、業務改善等)に至るまで、アライアンス先との協業を含む、ワンストップソリューションの提供により、医療・介護・調剤等のヘルスケアマーケットにおいて事業者支援を行う構想。
(5) 不動産(GP分野)
2025年3月期中間期末の営業資産残高は1兆656億円(前年同期末比283億円減)に、ROAは2.3%(前年同期は2.9%)に低下したことから、経常利益は125億円(前年同期比25億円減)となった。収益性やポートフォリオのバランスを意識したアセットコントロールを継続するなかで、前期計上した大口売却益のはく落による影響もあり減益となった。ただ、中期経営計画(最終年度目標)の達成に向けては順調に進捗している。パートナー企業との協働を含め、幅広いディールソースからの引き合いにより案件パイプラインも着実に拡大しているようだ。また、アライアンス先との協業による海外不動産への取り組み※も開始した。
※ 住友林業<1911>、小田急電鉄<9007>とともに米国不動産デベロッパーとの集合住宅開発をスタートした。
(6) 航空機(GP分野)
2025年3月期中間期末の営業資産残高は3,775億円(前年同期末比696億円増)に拡大し、ROAは3.1%(前年同期は2.4%)に改善したことから、経常利益は54億円(前年同期比24億円増)となった。良好な事業環境が続くなか、国内・北米を中心に自社保有機7機の積み上げを進めたことや、円安効果も重なり大幅な増益となった。活動面でも、マーケット環境に応じた回転型ビジネスの推進や、ヤマトホールディングス向けフレイター(貨物専用機)※についても3号機のリースを開始した。
※ ビジネス領域の拡大に向けたP2F(Passenger to Freighter)事業への取り組みとして注目される。
5. 2025年3月期中間期の総括
2025年3月期中間期を総括すると、資金原価の増加に加え、大口売却益のはく落といった特殊要因による影響を受けたものの、成長領域の伸びにより打ち返し、増益基調を維持できたところは評価すべきポイントと言える。また、将来に対してもさらなる業容拡大に向けた取り組みが、各パートナーとの協業により各方面で順調に進捗している。特に「モビリティ物流」におけるEV領域(EVライフサイクルサービス等)や「エネルギー環境」における新領域(蓄電池関連等)、「航空機」におけるP2F事業など、次世代の成長軸となり得る分野(ビジネスモデル)が具体的に動き出してきた。また、「エネルギー環境」では海外(欧州・北米等)における協業案件を中心に再生可能エネルギー事業をさらに拡大する計画が進行中である。足元の業績と将来利益の両にらみでバランスよく成果をあげることができたと評価しても良いであろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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