シュッピン Research Memo(7):新たな中期経営計画で「カメラ事業」の安定成長と「時計事業」の強化に取り組む
*13:47JST シュッピン Research Memo(7):新たな中期経営計画で「カメラ事業」の安定成長と「時計事業」の強化に取り組む
■中長期の成長戦略
1. 目指す姿(長期ビジョン)
シュッピン<3179>は、EC小売企業からの変革により、最先端テクノロジーを駆使し続ける「Electronic Intelligent Commerce企業」を目指しており、リバリューとテクノロジーの掛け合わせをさらに進化させる考えだ。特に、「カメラ事業」で先行してきたAIMDやAIコンテンツレコメンド、AI顔認証システムの精度をさらに高めるとともに、「時計事業」への展開を推進し、「カメラ事業」と「時計事業」の両軸で独自の事業モデル(プラットフォーム)の完成度をさらに高めていく方針である。
2. 中期経営計画(ローリング)の方向性
同社は毎年、経営環境の変化を迅速に反映するため、向こう3ヶ年の中期経営計画を更新しており、2026年5月にも新たな中期経営計画を公表した。長期ビジョンの実現に向けたファーストステップとして位置付けており、ECプラットフォーマーとしての「独自のビジネスモデル」をさらに進化させ、利益を積み上げるフェーズへとシフトさせる方向性である。1) カメラ事業の安定成長、2) 時計事業の強化、3) 海外ビジネス(越境EC)強化の3つの成長戦略に取り組む。特に「カメラ事業」で安定的に利益を計上するとともに、より高い成長が見込まれる「時計事業」に経営資源を投入し、2本目の柱へ育てるシナリオである。また、海外ビジネス(越境EC)にも引き続き積極的に取り組み、グローバルな市場の伸びを取り込む考えだ。
最終年度(2029年3月期)の目標として、売上高63,300百万円(3年間の平均成長率は6.8%)、営業利益3,700百万円(営業利益率5.9%)を掲げるとともに、ROE20%を目指す。また、中長期的にはROE30%以上も視野に入れる。特に「時計事業」の年間の平均成長率を売上高で18.0%、営業利益で53.7%と見込んでおり、今後の収益ドライバーに位置付けている。
3. 成長戦略
(1) カメラ事業の安定成長
デジタルカメラ市場は、ソーシャルメディア及びコンテンツ制作の人気の高まりなどを背景として、フリークエントユーザー(愛好者)の広がりや優れたデジタル写真機器への需要拡大(シフトを含む)が見込まれている。同社では新規・既存顧客の囲い込みに向けて、シュッピンポイントプログラムの活性化(シュッピン商圏の確立)やAI及びテクノロジーを活用したサービスの開発(アクティブ率の向上)に加え、新たな世界観の訴求※により新たな市場でのシェア獲得にも取り組む戦略である。
※ その一環として、「Camera is Fashion」をテーマとする特別イベント「TOP NOTCH」を2025年3月より開催している。第2回目の開催(2025年9月)では、「融合」をテーマとするファッションショーを実施し、イベント会場からのSNS拡散などを通じて、アパレル市場からの顧客獲得に取り組んだ。
(2) 時計事業の強化
世界の中古高級時計市場の拡大が見込まれるなかで、同時に進むEC化や富裕層化率の上昇は同社にとってまさに追い風であり、来るべき「ブルーオーシャン」への種まきをしっかりとやり遂げ、2本目の柱へと成長させる考えだ。特に、カメラ事業での成功体験(記事や動画の豊富なコンテンツ作成など)を生かすとともに、高価格帯、希少価値の高い商品を中心とするラインナップの充実、富裕層向けSR・CRM施策の展開により、独自のポジショニングを確立し、ECでの高級機械式時計No.1を目指す。
(3) 海外ビジネス(越境EC)強化
新たな軸を育成すべく、越境ECの強化にも取り組む。まずは主要KPIを購入者評価(eBay等のフィードバック)とし、高クオリティを維持することで高いブランド力の醸成と売上拡大を目指す。また、将来的には現地企業のM&Aによる海外での買取体制の構築も視野に入れており、実現すれば、日本における成功モデルの展開を通じて海外ビジネスの拡大につながるポテンシャルを秘めている。
4. 財務方針
3年間の営業CF(合計80億円)と有利子負債の活用(13億円)により得た資金を、株主還元に36億円(配当性向40%〜50%)、商品の仕入れに32億円(特に時計事業における商品ラインナップ拡充への投入)、システム投資等に7億円(ECプラットフォーム強化/リプレイス)、その他投資等に18億円(人材投資、M&A等)配分していく方針である。3年後のバランスシートのイメージとして、商品在庫が122億円(前期末比+32億円)に増加するものの、財務規律にも注意を払い、自己資本比率は60%水準を維持していく。
5. 中長期的な注目点
AIの活用や様々な価値の追求により特定分野でさらにプレゼンスを高め、利益成長を重視する同社の戦略は、弊社でも合理性があると評価している。今回公表された中期経営計画では、より「時計事業」に注力する戦略が鮮明に打ち出された。主力である「カメラ事業」は効率的で収益性の高い独自の事業モデルが既に確立されているが、そこで稼いだ資金や蓄積したノウハウをどう有効活用するのか、持続的な成長やリスク分散(事業のライフサイクルマネジメントを含む)に向けて2本目の柱をどう育てるかは同社の長年にわたる構造的な課題であり、いよいよ本格的に舵を切る姿勢を示したと言える。この数年の失敗を含めた試行錯誤を通じて、一定の手応えや道筋が見えてきた証と捉えることもできるだろう。弊社でも、「カメラ事業」との親和性の高さ、すなわち、1) 商品自体の類似性(小型・高付加価値商品、販売効率の高さ、ストックコストの低さ等)、2) オペレーションの類似性(商品仕入れから保管、販売に至るまで、システム面を含むノウハウの共有)、3) 既存顧客基盤の親和性(富裕層マーケティング、LTVの向上)、4) EC×専門性(真贋判定、商品知識やデータ活用ノウハウ等)、5) グローバル展開(世界共通のブランド、越境ECの拡張余地)などを考慮すれば、「時計事業」に注力する合理性は十分にあると考えられる。一方、懸念されるのは時計特有の難しさ(投機的な動きを含む相場変動の大きさなど)をいかに同社ならではの事業モデルで克服するかにある。「カメラ事業」と同様にAIやテクノロジーを導入し、事業モデルの精度を高めることができれば、他社との差別化を図るうえでも大きなチャンスだろう。上場会社としての信頼や強固な財務基盤は高額な商品の取り扱いやラインナップの拡充に向けても大きなアドバンテージになる。いずれにしても、巨大かつグローバルな成長が見込まれる市場であることから、ニッチなポジションを確立するだけで大きな業績インパクトが期待できる。
「カメラ事業」についても、AIやデータ活用を含め、プラットフォームとしての進化の余地はまだ十分にあり、将来的には新たな収益源の創出(例えば、情報力及び会員基盤を生かした有料サービスの導入、メディア事業への展開など)についても注目したい。そのためにはロイヤリティ(熱量)が高く、質・量ともに充実した会員基盤をはじめ、愛好者にとって魅力的なコンテンツ情報が集まる仕組みを、いかに収益化していくのかがカギを握るだろう。新たな基幹システム及びデータウェアハウスのリプレイスが事業モデルのさらなる進化に向けて大きな転機となる可能性があり、今後の動向や効果の発現に注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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