SFP Research Memo(4):積極的な店舗数の拡大とともに高い成長性と収益性を実現(2)
*16:24JST SFP Research Memo(4):積極的な店舗数の拡大とともに高い成長性と収益性を実現(2)
■決算動向
2. 2024年2月期の業績
SFPホールディングス<3198>の2024年2月期の業績は、売上高が前期比26.9%増の29,079百万円、営業利益が2,026百万円(前期は754百万円の損失)、経常利益が同41.2%増の2,236百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同214.9%増の1,731百万円と計画を上回る大幅な増収増益となり、営業利益の黒字化を実現した。
売上高は、コロナ禍の終息に伴う国内消費の回復やインバウンド需要の取り込み等による既存店の伸びが増収に寄与した。実質既存店売上高(通期平均)はコロナ禍前比(2020年2月期比)90.0%弱(前期は69.2%)にまで回復※1し、とりわけ訪日客向け売上高は高単価メニュー投入等もあり前期比で大きく拡大した※2。また、人手不足の影響等により深夜帯営業(22時から翌5時)を一時見合わせていた店舗(磯丸水産)の再開を進めたことも業績の伸びに貢献したようだ※3。
※1 特に「客単価」の上昇が既存店売上高の伸びをけん引しているようだ。今後は深夜帯営業時間の伸長やマーケティング強化(話題性の創出など)により客数の拡大にも注力する。
※2 訪日客売上高(磯丸水産)の全体に占める比率は11%超にまで拡大しており、売上高全体を押し上げる要因となっている。
※3 深夜帯は、酒類の注文が多く高マージンであり、居酒屋にとっては稼ぎ時となる。同社では、外国人スタッフ採用などを含めて人手不足対策を進め、段階的に深夜帯営業の再開に取り組んできた。
出退店については、新規8店舗及び業態転換により4店舗を出店※した一方、賃貸借契約の満了を含めて13店舗(うち子会社3店舗)を退店し、2024年2月末の店舗数は205店舗(うちFC16店舗)となった。
※新規8店舗及び業態転換2店舗には、磯丸水産3店舗(長野松本、仙台、大阪京橋)、大衆酒場(五の五)4店舗(大阪駅前、京都河原町、横須賀中央、仙台)、焼きとん ふく助1店舗が含まれており、地方出店及び大衆酒場業態が軸となっている。
損益面では、物価上昇による影響を受けたものの、メニュー見直しや価格の一部改訂などにより原価率は安定的に推移した。さらには、人手不足に対応するための新規採用ならびに営業時間拡大に伴う人件費や店舗運営費※の増加分を増収によりカバーし、大幅な営業増益(黒字転換)を実現した。営業利益率も7.0%とコロナ禍前を超える水準にまで改善している。経常利益以下についても、コロナ禍に関連する助成金収入(営業外収入に計上)が剥落(約22億円)したものの、そのマイナス分を打ち返して増益を確保しており、本来の収益力がしっかりと戻ってきた。
※ただし、水道光熱費(特に電気・ガス代)は補助金制度によって145百万円の増加に留めることができた。
財政状態については、株主への利益還元の強化及び資本効率のさらなる向上、上場維持基準への適合(流通株式比率)を目的として、2023年9月12日付で自己株式の取得※を実施したことで、自己資本は前期末比38.2%減の7,744百万円に大きく減少した。また、自己株式の取得に伴い現金及び預金も減少したことから、総資産は同24.3%減の13,303百万円となり、それらの結果、自己資本比率は58.2%(前期末は71.4%)に低下した。一方、資本効率を示すROEは自己資本の減少と利益水準の底上げにより17.1%(前期は4.4%)に大きく改善した。
※普通株式3,000,000株を公開買付により1株当たり1,980円(総額5,940百万円)で取得した。なお、取得した3,000,000株のうち2,975,000株を2024年2月5日付で消却した。
事業別の業績は以下のとおりである。
(1) 鳥良事業
売上高は前期比19.3%増の5,165百万円となった。退店2店舗により2024年2月末の店舗数は35店舗となった。
(2) 磯丸事業
売上高は前期比26.5%増の17,614百万円となった。新規出店3店舗※及び退店7店舗により2024年2月末の店舗数は直営99店舗、FC16店舗となった。
※磯丸水産(仙台2号店、大阪京橋店)のほか、磯丸食堂(イオン幕張店)のFC店を含む。子会社による磯丸水産(長野松本駅前店)は含まない。
(3) その他(大衆酒場業態を含む)
売上高は前期比35.4%増の4,253百万円となった。新規出店3店舗及び業態転換2店舗※により、2024年2月末の店舗数は30店舗となった。また、そのうち注力している大衆酒場業態の店舗数は16店舗となっている。
※「五の五」を新規で3店舗(京都河原町三条、横須賀中央、仙台)及び業態転換で1店舗(大阪駅前)、「焼きとん ふく助」を業態転換で1店舗(池袋)出店した。
(4) フードアライアンスメンバー(連結子会社)
売上高は前期比35.2%増の2,046百万円となった。業態転換2店舗※1、新規出店2店舗※2及び退店4店舗により、2024年2月末の店舗数は25店舗となった。
※1 「前川珈琲レストラン」1店舗を「光の森珈琲」へ、「前川水軍」1店舗を「天草水軍」へ業態転換した。
※2 磯丸水産(長野松本駅前店)を含む。
3. 2024年2月期の総括
以上から、2024年2月期を総括すると、コロナ禍の終息とともに大幅な営業増益(黒字転換)を達成したことはもちろん、アフターコロナに向けても、同社業態(収益モデル)の優位性が失われていないことが確認できた点は大きなプラス材料として評価できる。特に、1) 好調なインバウンド需要が続くなかで、図らずも「磯丸水産」スタイルが訪日客を惹きつける誘引力となり、新たな収益ドライバーになってきたこと、2) 地方出店についても、新規出店した長野松本、仙台、大阪京橋店の3店舗が全体平均を大きく上回る売上水準を確保しており、今後の地方展開に弾みをつけたこと、3) 注力している大衆酒場業態(五の五)も着実に軌道に乗ってきたこと、4) ボトルネックとなっていた人手不足問題についても、外国籍の従業員(特定技能)を含めた積極採用が奏功し、深夜帯営業時間の伸長や新規出店に向けて体制が整ってきたことは、今後に向けても注目すべき成果として評価できる。収益モデルの本質的な優位性を残しつつ、市場の動向に合わせながら変容していく姿は、まさに同社の真骨頂と言えるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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