山田コンサル Research Memo(5):中期経営計画は順調に進捗
*13:05JST 山田コンサル Research Memo(5):中期経営計画は順調に進捗
■山田コンサルティンググループ<4792>の今後の見通し
2. 中期経営計画
同社は2023年5月に発表した3ヶ年の中期経営計画のなかで基本方針として、持続的成長を実現するための経営基盤を構築する期間と位置付け、成長の源泉となる人的リソースの強化、社内連携の強化、新規・成長分野の育成に取り組む方針を掲げた。新規・成長分野としては、海外コンサルティングや投資事業、DXコンサルティングなどに注力しており、ピナクル及びTakenaka Partnersの子会社化もその一環となる。
最終年度となる2026年3月期の業績目標として、売上高22,700百万円、売上総利益17,800百万円、営業利益4,200百万円を掲げた。経営コンサルティング事業で5.0%の安定成長を見込み、M&Aアドバイザリー事業で10.0%、投資事業で65.8%を計画している。コンサルティング事業が安定的に成長する一方で、ボラティリティの高い投資事業は、投資残高を一定金額以上に維持することで収益を安定化する意向だ。ただ、投資事業に関しては規模が小さいため、投資案件の売却時期や投資利回りによって収益変動が大きくなる可能性がある。
中期計画に対する業績の進捗状況について見ると、2024年3月期は期初計画に対して売上高、各利益ともに超過した。2年目となる2025年3月期も中間期までは順調に進んでおり、売上総利益に関しては目標を1年前倒しで達成する見通しとなっている。今後も市場環境に大きな変化がなければ、最終年度の業績目標は上方修正される可能性も考えられる。
(1) 主要事業の年平均成長率と基本方針
経営コンサルティング事業は、「量的拡充から質的拡充への転換」に取り組むべくコンサルティングサービスの拡充と強化、幅広いソリューション提供による顧客との長期的な関係構築、案件協働・ナレッジ共有の強化による拠点及び案件におけるサービス品質の均一化に取り組み、売上総利益で年率5.0%成長の7,530百万円を見込む。
M&Aアドバイザリー事業は、「潜在ニーズ顧客への継続的なフォロー」に取り組むことで、良質案件の構成比を高めていくほか、安定的なM&A案件創出のための基盤を構築していく。また、子会社も含めた事業関連携による業界・専門知識の習得により付加価値向上を図り、M&A案件の創出をすべての事業拠点で実施していく。これら取り組みにより、売上総利益で年率10.0%成長の6,860百万円を目指す。
事業承継コンサルティング事業では、「更なる専門性向上による差別化」に取り組み、ナレッジ共有の強化による拠点間の品質均一化や他事業との連携を推進し、売上総利益で年率6.1%成長の1,900百万円を目指す。また。投資事業に関しては「投資案件の発掘と体制整備」に取り組む。グループの多様なコンサルティングサービスとの連携やアライアンス強化によって投資案件を発掘し、売上総利益で年率65.8%成長を目指す。
(2) 新規・成長分野の取り組み
新規・成長分野としては、海外コンサルティングや投資事業、DXコンサルティングなどに注力しており、なかでも海外コンサルティングに関しては新たに2社を子会社化したことから成長ポテンシャルが高まったと弊社では見ている。
同社は2009年から海外コンサルティング事業を展開し、顧客企業の海外進出を支援するために、200名以上の専門チームと世界30ヶ国以上のネットワークを活用し、コンサルティング事業を展開している。自社拠点の展開にこだわることで現地の一次情報を収集し、戦略策定から実行支援までをサポートをする独自の体制を構築しているのが特徴だ。マーケットリサーチにおいては2016年にアジア地域で事業展開していたSpire Research and Consulting Pte Ltd.を子会社化することでそのノウハウを蓄積し、各拠点で現地スタッフが市場調査と戦略策定を行う現在のスタイルを確立した。
シンガポール、インドネシア、インド、タイ、ベトナム、韓国、マレーシア、中国、米国、UAEに事業拠点を展開し、米国や中国に関しては日系企業が顧客となり、それ以外の地域ではローカル企業に対してもサービス提供を行っている。また、欧州でも地元提携先企業とともにM&Aを核としたサービスを提供している。顧客獲得チャネルは現地の金融機関(日系、ローカル含む)のほか、子会社が発行するリサーチレポートを顧客獲得ツールとして活用している。海外市場では日系企業の脱中国の動きが継続するほか、グローバル戦略を掲げる企業が増加すると見られ、同社のビジネスチャンスも一層広がるものと予想される。
(3) 人材戦略の基本方針
同社は成長の源泉となる人材の育成と定着率の向上を経営の重要課題と位置付け強化している。人材育成に関しては、社員がそれぞれの得意分野や専門領域を見つけ、磨いていくための長期的なキャリア形成を支援するための研修プログラムの充実や安心して働ける職場環境づくりに取り組んでいる。コンサルタントの拡充と生産性向上を図るため、データ分析やリサーチ業務を専門に行う「専門コンサルタント職」を2022年4月に新設し、2023年3月末の178名から2024年9月末は209名と順調に増加している。総合コンサルタント職の人員についても同期間において577名から655名と増加しており、2024年9月末の社員数1,055名のうち864名がコンサルタント職となっている。
なお、社員の平均勤続年数(単体ベース)は2024年9月末時点で6.8年となっており、コンサルティング業界の平均(3~4年)を上回っている。2023年3月末時点は6.3年だったので、徐々に長期化している格好だ。働き方改革や処遇改善に取り組んでいる効果が出ているものと思われる。特に、コンサルタントについては5年で戦力化すると言われているが、同社においては勤続年数5年以上の社員比率が56%と2023年3月末の49%から7ポイント上昇しており、戦力の充実化が進んでいるものと思われる。なお、コンサルタントの離職者の勤続年数を見ると3年未満が最も多い。コンサルタント職が合わないというのが離職理由の大半を占めており、競合会社に転職するケースはほとんどない。同社では、今後も新卒社員や中途社員(大半がメーカーや金融機関出身者)を継続的に採用し、コンサルタントの拡充を進めていく方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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