CAICAD Research Memo(5):2023年10月期上期は「ITサービス事業」は好調な受注環境が継続
*12:05JST CAICAD Research Memo(5):2023年10月期上期は「ITサービス事業」は好調な受注環境が継続
■決算概要
1. 2023年10月期上期決算の概要
CAICA DIGITAL<2315>の2023年10月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比31.9%減の2,494百万円、営業損失が1,397百万円(前年同期は64百万円の利益)、経常損失が1,534百万円(同59百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失が1,350百万円(同515百万円の利益)と、暗号資産市場全体の取引高低迷に伴う「金融サービス事業」の落ち込みにより減収減益となり、各段階利益で損失を計上した。
売上高は、好調な受注環境を背景として「ITサービス事業」が堅調に推移した。一方、構造改革を進めている「金融サービス事業」については、世界的なインフレ進行や各国の急速な金融引き締め、さらにはFTX Tradingの経営破綻などの影響を受け、前期から続く暗号資産市場の低迷により「Zaif」を中心に大きく落ち込んだ。
利益面でも、「Zaif」における次世代システム投資の一巡やのれん償却費の負担解消※に加え、構造改革による経費圧縮を進めているものの、売上高の大幅な落ち込みを補うことはできず営業損失を計上した。
※前期においてカイカエクスチェンジののれんの全額減損処理を行ったことにより、当期からはのれん償却費は発生していない。
財政状態については、「Zaif」における利用者暗号資産の一定の回復等により、総資産が前期末比6.0%増の62,562百万円に増加した一方、最終損失の計上により自己資本が同16.3%減の4,088百万円に縮小したことから、自己資本比率は6.5%(前期末は8.3%)に低下した。
各事業別の業績及び活動実績は以下のとおりである。
(1) ITサービス事業
売上高(内部取引を含む)は前年同期比7.9%増の2,675百万円、セグメント利益は同47.9%減の145百万円と増収ながら減益となった。金融機関向けのシステム開発分野が活況を呈しており、とりわけ一次請けである保険会社向け案件が拡大した。銀行向け案件についても、一次ベンダーからのメガバンク案件を中心に受注が拡大しているようだ。非金融向けシステム開発分野についても、顧客のIT投資意欲は強く、新規案件の引き合いも常に確保できている状況にある。また、暗号資産を含むFinTech関連のシステム開発分野では、決済系のシステム開発案件を安定的に受注できているほか、暗号資産交換所システムについても引き合いを複数件獲得し、商談が進行中である。ただ、利益面で減益となったのは、仕掛り案件の規模拡大に伴って収益認識の期ずれが発生し、一時的に原価率が上昇したことが理由のようだ。セグメント利益率も5.4%(前年同期は11.2%)に一旦低下したものの、通期では回復する見通しとしている。
(2) 金融サービス事業
売上高(内部取引を含む)は-180百万円(前年同期は1,283百万円)、セグメント損失は1,363百万円(同27百万円の損失)と売上高はマイナスとなり、損失幅も大きく拡大した。暗号資産市場の低迷や構造改革の取り組みにより、1) カイカ証券、2) カイカエクスチェンジ、3) カイカキャピタルの子会社3社がそろって低調に推移した。1) カイカ証券は、海外の大手暗号資産交換所の経営破綻などを発端とする暗号資産相場の混乱をはじめ、デリバティブ派生商品に対する投資家の意欲の衰退など外部環境を考慮し、業態転換を図るべく、現在、既存商品の早期終了を進めており、業績への寄与は期待できない状態となっている。2) カイカエクスチェンジについても、暗号資産市場全体の取引高低迷による影響を受け、「Zaif」における受け入れ手数料は前年同期の半分以下の水準にとどまっているようだ。3) カイカキャピタルにおいては、レンディングサービスを活発化させる一方、暗号資産の投融資・運用については慎重に行っているものの、保有する暗号資産の評価損を計上したことで売上高はマイナスとなった。また、カイカフィナンシャルホールディングスが運営する「Zaif INO」については順調に立ち上がってきたものの、スタートして間もないため、業績への寄与はしばらく時間を要する見通しである。利益面でも、一定の経費削減に努めたものの、売上高がマイナスになったことに加え、子会社3社の固定費負担が重荷となり大幅なセグメント損失を計上する結果となった。
2. 2023年10月期上期の総括
以上から、2023年10月期上期を総括すると、前期からの暗号資産市場の混乱による影響が続き、依然として取引高が回復していないことに尽きる。カイカ証券の抜本的な見直しや「Zaif」におけるサービスの選択と集中など、構造改革による固定費削減に着手し、暗号資産市場が回復しなくても利益を出せる収益構造へと転換を図っているものの、まだ道半ばであり、まさにここが踏ん張りどころと言える。一方、好調な受注環境に支えられて「ITサービス事業」が堅調に推移しているところは、今後に向けても明るい材料である。メガバンク向けを中心に受注残が順調に積み上がっていることから、実態としては上期の業績以上の成果があがっているとの見方もできる。クラウド化を進める金融機関等においてもサイバーセキュリティ対策は喫緊の課題となっており、同社が「Zaif」のシステム構築や運営などで培ってきたセキュリティ対策の経験と実績が高く評価されているようだ。また、活動面でも、後述するとおり、Web3事業へ参入する法人向けサービス「CAICA Web3 For Biz」の提供開始や、凸版印刷とのWeb3領域での連携をはじめ、様々なWeb3企業とのアライアンス締結などに取り組んでおり、今後の成長の軸となるWeb3事業の拡大に向けて、具体的な動きが出てきたところは注目すべきポイントと評価できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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