日本電技 Research Memo(1):新中期経営計画では人的資本の強化と生産性の向上を図る
*15:31JST 日本電技 Research Memo(1):新中期経営計画では人的資本の強化と生産性の向上を図る
■要約
1. 「計装エンジニアリング」技術をベースに空調計装と産業システムを展開
日本電技<1723>は「計装エンジニアリング」専業企業である。計装(Instrumentation)とは、ビルや工場において、空調や生産ラインなどの各種設備・機械装置を、計測・監視・制御といった手法によってコントロールすることである。主力の空調計装関連事業では、空調設備を自動制御することでオフィスビルなど非居住用建築物の省エネ化を支援しており、自動制御機器大手であるアズビル<6845>の最大手特約店として、また業界の草分け的な存在として、豊富な実績と技術を誇っている。成長が期待される産業システム関連事業では、スマートファクトリー化による最適化・省人化を支援するサービスを提供、工場の生産ラインや搬送ラインの自動化やロボットの導入・運用などを手掛けている。
2. 計装技術とエンジニアリング技術を併せ持つ「計装エンジニアリング」に強み
同社の強みは、計装技術とエンジニアリング技術を併せ持つところにある。空調計装関連事業では、旺盛な首都圏再開発などを背景に新規工事の受注が積み上がっている。これは、不断に進化するアズビルの新製品や年々複雑化する大型物件に対応するには、取り扱い販売店のなかでも同社しか持っていないエンジニアリング技術が必要となるためである。築年数の経過とともに大型改修案件の受注が増加しているのも、同様の理由からである。産業システム関連事業は、「計装エンジニアリング」の強みをより発揮しやすい分野と言える。工場のスマートファクトリー化には、生産ラインや搬送ラインにおける計測機器やロボットなどを有機的につないで全体を自動制御するシステムが必要で、それには同社の「計装エンジニアリング」技術が最適と言える。
3. 2024年3月期は、首都圏再開発など空調計装関連事業が想定以上に好調だった
2024年3月期の業績は、受注高が41,071百万円(前期比5.1%増)、売上高が38,894百万円(同13.4%増)、営業利益が6,248百万円(同38.8%増)と非常に好調だった。業績好調は、空調計装関連事業において首都圏再開発や半導体工場など大型の新設工事や既設工事が想定以上に好調だったうえ、選別受注が進展したことで高採算工事が増えたことによる。同社は2025年3月期の業績見通しについて、受注高39,500百万円(前期比3.8%減)、売上高41,500百万円(同6.7%増)、営業利益6,200百万円(同0.8%減)を見込んでいる。空調計装関連事業の新設工事が引き続き順調、産業システム関連事業も回復が予想される。ただし、空調計装関連事業の既設工事や利益率の見方に関してやや保守的な印象があり、例年通り、期末に向けて上方修正を期待したい。
4. 足元の事業環境及び業績を踏まえ長期経営指針の業績目標を上方修正検討中
「第1フェーズ」最終年度の2024年3月期業績が好調で、長期経営指針「ND For The Next 2030」の2031年3月期目標数値を超えた。また、「ND For The Next 2030」の「第2フェーズ」として、2025年3月期を初年度とする4ヶ年の新中期経営計画をスタート、2028年3月期に売上高420億円、営業利益65億円を目指している。伸びがやや低く見えるが、「第3フェーズ」の飛躍に向けて成長基盤の拡大と生産性の向上を図るため、人的資本の強化やDXの進展に向けて積極的に投資を進めていくことが要因である。特に中長期的な課題である人手不足に対しては、人材教育の専門部署「電技アカデミー」を新たに開設するほか、協力会社も巻き込んで人材の強化を図る考えである。
同社では、現状の環境を勘案して2031年3月期の目標数値の見直しを検討中である。当然、上方修正となるため、その目標数値に期待したい。
■Key Points
・「計装エンジニアリング」を強みに空調計装の受注を拡大、産業システム分野にも進出
・「第1フェーズ」最終年度は首都圏再開発などが好調
・「第2フェーズ」では「第3フェーズ」の飛躍に向け、特に人的資本の強化を進める方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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