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Jトラスト Research Memo(10):新3ヶ年計画で2025年12月期以降に増益基調を目指す(2)

2024年09月12日 11:10 銘柄/投資戦略

*11:10JST Jトラスト Research Memo(10):新3ヶ年計画で2025年12月期以降に増益基調を目指す(2) ■Jトラスト<8508>の中長期の成長戦略

(3) 東南アジア金融事業
同社グループ成長のけん引役になると期待されるJトラスト銀行インドネシアでは、収益確保のために積極的な貸出残高の増加、NPL(不良債権)比率の低下による貸倒費用の削減、COF(調達金利)の低下、CASA(流動比率)の増加を主要課題としている。マーケティング活動として1億人獲得プロジェクトを実施し、「新規預金獲得」のほか、「開設した口座の利用」「預金残高の増加」を目的として預金口座開設を促進する。住宅ローンについても積極的に業務提携を展開することで、収益拡大につなげる計画だ。

同行は2021年11月以降、日系企業傘下にある現地法人と住宅ローンの業務提携を行っており、住宅ローン残高の伸長が期待される。2024年6月には(株)香川銀行と業務提携契約を締結し、インドネシアに進出済または進出予定の香川銀行取引先事業者をJトラスト銀行インドネシアに紹介する仕組みを構築した。日系銀行との提携は3行目となる。今後40年以上にわたり人口ボーナス期に入ることが予想されるインドネシアにおいて、それぞれの経営資源を相互活用することにより、海外進出事業者の企業価値を高めるとともに、インドネシアの経済発展に寄与するものと考えている。

インドネシアは年率5〜6%の実質GDP成長が継続している(コロナ禍の2020〜2021年を除く)。インドネシアの人口は約2億7千万人と世界第4位であり、マーケット規模が大きい。加えてニッケル・天然ゴム・石炭など豊かな天然資源を有しておりその領域への貸出機会が豊富であることから、インドネシア銀行業界の成長ポテンシャルは高いと言える。そのなかでJトラスト銀行インドネシアは、現地に同社の代表取締役副社長が常駐し、スピーディーな決裁が可能な点で取引先から評価されているようだ。ただ、同行はまだ復調の途上であり、インドネシア商業銀行全体に比べてROAと純金利マージンの上昇余地が大きい。一方で、不良債権比率は業界水準を大きく下回る。これは国営企業や大企業など信用力の高い企業に低金利で融資をしており、優良貸出残高を伸ばすことで不良債権費用を発生させずに利益を確保する戦略をとっているためだ。今後も同行が加速度的に利益を拡大することで、グループの成長ドライバーになると期待される。

インドネシアの債権回収業務では、債権買取回収及び債権回収受託のプレイヤーの増加に伴い債権価格が上昇することも見込まれるが、回収力や資金調達力で実績のある同社グループは先行者利益を得て、ビジネスチャンスが拡大する見通しである。

カンボジアのJトラストロイヤル銀行では、生産性を向上させるとともに、デジタル分野を強化してよりスピーディーなサービス提供ができるよう取り組んでいる。引き続き富裕層顧客を主な基盤とし、リレーションシップマネージャー(顧客担当)と顧客との強固なリレーション力による貸出並びに運用提案により他行との差別化を図るとともに、ニーズを汲み取った商品開発やデジタル対応にも注力する。不良債権の回収や新規不良債権の抑制にも取り組み、収益拡大を目指す計画だ。カンボジアでは、コロナ禍以降に中国からの不動産投資が減少した影響などがあり同行の営業利益は買収前の25〜30億円の水準に戻っていないが、引き続き安定した利益を計上している。首都プノンペンでは中断していた建設工事の再開・着工の動きもあり、資金需要の回復が期待される。

以上の施策を推進することで東南アジア金融事業の営業利益は、2023年12月期の1,019百万円の損失から2024年12月期は1,732百万円の利益に転換し、2025年12月期は4,503百万円、2026年12月期も7,630百万円へと利益拡大を計画している。

以上のように、同社グループでは日本金融事業で安定的に利益を確保・拡大する一方で、韓国及びモンゴル金融事業での黒字化に加えて、成長可能性が大きい東南アジア金融事業の利益拡大を実現するとともに、不動産事業の貢献により持続的な成長を目指す。また今後も企業価値を高めるために、既存の成功事業をさらに成長させることができる事業や既存事業とのシナジーを期待できる事業、金融機関と協業できる事業などへ投資する方針と見られ、引き続き同社グループの成長戦略に注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)

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