ティア Research Memo(5):葬祭事業はM&A効果で過去最高を大幅更新
*12:05JST ティア Research Memo(5):葬祭事業はM&A効果で過去最高を大幅更新
■ティア<2485>の業績動向
2. 事業セグメント別動向
(1) 葬祭事業
葬祭事業の売上高は前期比30.9%増の17,745百万円、営業利益は同41.3%増の3,295百万円と4期連続の増収増益となり、過去最高を大きく更新した。前述の通り「ティア」直営店が葬儀件数の増加や葬儀単価の上昇により順調に拡大したことに加えて、第2四半期より八光殿と東海典礼の業績が上乗せされたことが主因だ。
「ティア」直営店の葬儀件数は前期比6.8%増の15,424件、葬儀単価は同1.8%上昇し、葬儀売上高は約9%の増収となった。地域別葬儀件数の前年同期比伸び率を見ると、名古屋市内が9.4%増、愛知県(名古屋市除く)が7.0%増、大阪府が16.9%増となり、首都圏が13.7%減と地域別では唯一落ち込んだ。名古屋市内については「ティアシンプル」の受注増が貢献し、関西圏については専任マネージャーを配置するなど営業体制を強化した効果が出た。一方、首都圏の減少は他社ポータルサイト経由の低価格プランの案件が大きく減少したことが主因となっている。
葬儀単価の上昇率が小幅にとどまったのは、「ティアシンプル」の葬儀件数が1,500件超と好調に推移したことが主因だが、傾向としては2極化が進んでいるようで、50万円以下のプランと100万円を超えるプランの構成比がそれぞれ上昇した。「ティア」直営店の葬儀単価伸び率の内訳は、祭壇が0.7%増、葬儀付帯品が1.5%増、供花・供物が0.4%減となった。なお、「ティア」の葬儀単価が84.6万円だったのに対して、八光殿は100.6万円、東海典礼は96.0万円とやや高い水準となっている。これは社葬など大規模葬の比率がやや高かったことが一因と見られる。
(2) FC事業
FC事業の売上高は前期比9.1%増の560百万円、営業利益は同16.9%増の78百万円となった。FC店舗が前期から6店舗増加の70店舗に拡大したことにより、ロイヤリティ売上や物品販売が増加し、売上高は4期連続増収となり過去最高を更新した。また、営業利益も増収効果により2期連続の増益となった。
(3) その他事業
その他事業は、不動産事業とリユース事業などで構成され、売上高は533百万円、営業利益は15百万円となった。不動産事業については、遺族からの不動産の相続、売却などの相談ニーズに応えるべく、2024年2月より開始した事業で、実際に物件を仕入れて販売まで行う。遺産相続において不動産の売却を検討する遺族は多く、従来はこうしたニーズに対して不動産事業者を紹介するにとどまっていたが、ワンストップでこれらのニーズに対応していく。相続・不動産関連事業の売上高として、前期比2.4倍増の212百万円となった。
一方、八光殿が展開しているリユース事業では、中古品の買取専門店「リサイクルマート」を2店舗運営しているほか、2024年7月には買取専門店「かんてい局 じゃんぼスクエア香芝店」をオープンした。買い取った商品はECサイトを通じて販売するか専門事業者に販売している。また、葬儀との親和性を高めるべく遺産整理・買取サービスも手掛けており、買取額の1割程度を占めていると見られる。利益面への影響はまだ軽微だが、グループでの展開も検討している。
M&A資金の借入れにより財務体質は一時的に悪化したものの今後は改善に向かう見通し
3. 財務状況と経営指標
2024年9月期末の財務状況を見ると、M&Aを実施したことで資産合計は前期末比11,949百万円増加の27,326百万円と大きく増加した。主な増加要因を見ると、流動資産では現金及び預金が1,352百万円、売掛金及び契約資産が354百万円増加した。固定資産ではM&Aの実施に伴い、無形固定資産でのれんを5,740百万円、顧客関連資産を1,125百万円計上したほか、有形固定資産が2,736百万円増加した。
一方、負債合計は前期末比11,643百万円増加の19,140百万円となった。M&A資金を銀行からの借入金で調達したことにより有利子負債が9,416百万円増加したことが主因だ。そのほか、契約負債が388百万円、資産除去債務が670百万円それぞれ増加した。純資産合計は同306百万円増加の8,186百万円となった。主に親会社株主に帰属する当期純利益752百万円の計上と剰余金の配当450百万円による。
経営指標を見ると、自己資本比率が前期末比21.3ポイント低下の30.0%、有利子負債比率が同113.8ポイント上昇の145.4%となり、ネットキャッシュ(現金及び預金−有利子負債)も7,613百万円のマイナスに転じるなど、M&Aを実施したことにより財務体質が悪化した。ただ、今回のM&Aは両社とも同社が展開する営業エリアのなかでも手薄だった地域に多く店舗展開しており、グループ化によって得られるシナジー効果も大きいと弊社では見ている。当面は大きな資金需要も予定していないことから、2025年9月期以降は収益拡大に伴って財務体質も徐々に改善に向かうことが予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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