nms Research Memo(4):2025年3月期は期初の営業利益予想を下方修正。HS事業の収益改善がカギに
*11:04JST nms Research Memo(4):2025年3月期は期初の営業利益予想を下方修正。HS事業の収益改善がカギに
■nmsホールディングス<2162>の今後の見通し
1. 2025年3月期通期の業績見通し
2025年3月期通期の連結業績予想は、売上高が75,400百万円(前期比3.5%増)、営業利益が1,650百万円(同12.6%減)、経常利益が1,800百万円(同14.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益が1,050百万円(同42.5%増)で、期初に発表した売上高75,000百万円、営業利益2,100百万円、経常利益1,900百万円、親会社に帰属する当期純利益1,300百万円を2025年1月14日に修正した。売上高予想はわずかな修正に留まったが、営業利益は2,100百万円から1,650百万円へと大きく下方修正されている。同社は今期業績予想の組み立てとして、期初時点では各事業ともに上期に比べると下期に事業環境が大きく好転することを見込んでいたが、特に自動車関連において引き続き減産影響や顧客の販売戦略変更による生産調整などの影響が続く見通しで、期初想定に比べると回復が遅れることを主に織り込んだ形だ。一方で、同社が戦略投資を実施し力を入れるEMS事業に関しては、ベトナムや北米事業において新規受注の立ち上げ及び量産開始などが奏功しており、今後のさらなる収益拡大に対して期待が持てるだろう。
2. 事業別業績概況
(1) HS事業
国内では自動車関連における減産等の影響はあったものの、全体として需要は2025年3月期においても引き続き高水準で推移することが見込まれる。高度エンジニア人材育成を目的とした技術センターの開設等、戦略投資における初期費用の発生はあったが、既存取引における原価率の改善や適性販管費の管理強化等、基盤強化策の実行を進め、収益性の改善に取り組んできた。一方、海外においては、基盤強化策の効果に加え、中国やタイ、ラオスにおける販売増加や為替による数字の押し上げ効果もあり、売上高・セグメント利益ともに堅調に推移した。同社では引き続き顧客ニーズに合わせた多様なサービス・人材の提案・提供、製造業の海外進出・製造支援サービス事業の拡大、デジタルプラットフォームの構築・展開を主眼に据え、事業規模拡大を図っていく。事業環境の変化に対応する形でグループ内製造受託インフラ・ノウハウを顧客ニーズに合わせて提案・提供するほか、製造業のファブレス化に即応するため、シニアエキスパート人材の雇用促進にも注力し、幅広い人材の雇用機会を創出することで、採用枠を拡大し生産性の向上をさらに推し進める。人材教育・育成に関しては、エンジニア採用・育成プログラムの強化、ジョブグレードアップ制度の高度化と効果の可視化を行う。外国人技能実習生については、同社独自のスキームを有しており、引き続き注力する方針だ。
(2) EMS事業
EMS事業は、中国やマレーシア、ベトナムなどのASEAN拠点、メキシコなど北米拠点で主に生産活動を展開しており、顧客の販売戦略変更による生産調整等の影響はあったものの、戦略投資拠点であるベトナムや北米において、新規受注の立ち上げや量産開始による生産数量の増加恩恵を享受した。また、利益面についても、各拠点における生産性改善やコスト構造見直しの成果もあり、大幅に改善した。北米事業は市場領域拡大を担う重点施策であり、顧客からの引き合いも増加していることから、業績改善に向けた基盤強化策を着実に実行することで来期以降のさらなる業績拡大に弾みをつけたい考えだ。特にトランプ政権誕生により、これまで以上に米国に生産回帰を進める製造業が多くなると見られ、EMSメーカーに対しての引き合いも強くなることが求められることから、生産拠点としての能力拡充や顧客との長期供給契約の締結などが期待されよう。また、2021年6月に新規品生産立ち上げを開始したベトナム拠点では、車載用ワイヤレス充電器関連やAV・音響機器関連など、プレス技術を核に完成品まで生産できる特長を生かし、ベトナムへの生産移管を進める日系企業のニーズに合わせた対応に注力する。チャイナプラスワンとしてベトナムの重要性が高まっており、需要が好調に推移することが見込まれる。メキシコ拠点では、主軸の車載関連部品に加え、産業機器などの顧客にフォーカスし事業を推進する。こうしたなか、利益確保に向けて基盤強化策による収益性の向上に引き続き取り組む。戦略投資による量産立ち上げも順調に進行しており、堅調なニーズが業績に取り込まれることが期待される。
(3) PS事業
PS事業においても需要が高水準で推移することが想定される。こうしたなか、カスタム電源やマグネットロールを中心に引き続き安定した収益体質への転換を図る。また、産業機器市場への製品展開、新規顧客の獲得・拡販にも引き続き注力する方針だ。さらに、省人化・自動化ニーズによるロボティクス市場の拡大や、コロナ禍を背景とした殺菌・滅菌機器市場への製品展開など、新市場の開拓にも注力する。ロボティクス市場や産業機器市場への展開は確実に進捗しており、さらなる新市場の開拓が期待される。利益面に関しても生産性向上のための各種施策を実行し、収益確保に注力する。加えて、部材の調達ソース拡大によって、生産活動の安定化も進める計画だ。同事業では、2025年3月期以降も売上高の大幅な拡大は見込んでいないが、戦略投資や基盤強化策の着実な実行によって収益性改善に取り組み、着実に利益を積み上げる計画だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 永岡宏樹)
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