ラクトJPN Research Memo(7):2024年11月期の売上高、利益も過去最高の更新を見込む
*15:07JST ラクトJPN Research Memo(7):2024年11月期の売上高、利益も過去最高の更新を見込む
■ラクト・ジャパン<3139>の今後の見通し
1. 2024年11月期の業績見通し
2024年11月期通期の連結業績は、2024年7月12日付で期初予想を上方修正し、売上高は前期比3.6%増の164,000百万円、経常利益は同44.0%増の4,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同46.4%増の3,000百万円と過去最高の売上高、利益の更新を見込む。下期は、乳業メーカーなどによる価格引き上げが消費に及ぼす影響、2024年2月以降の生乳生産の増産傾向が国内の脱脂粉乳在庫に及ぼす影響などが懸念されるため、上期に比べるとやや保守的な計画としているが、通期では過去最高の売上高、利益を予想する。なかでも、市場が拡大する機能性食品原料部門は上期の2倍以上の売上高、販売数量を見込む。また、猛暑の影響を受けて、アイスクリームなど乳製品の消費増加や、暑さに弱い牛の生乳生産量の減少が輸入原料の需要増加に結びつく可能性もあるが、これらのシナリオは計画には織り込んでいない。配当予想も期初予想の1株当たり前期比14.0円増を2倍の28.0円増とし、76.0円配当に上方修正した。
2. 事業部門別の業績見通し
(1) 乳原料・チーズ部門
下期は売上高、販売数量ともに上期を下回る水準を見込むが、通期の売上高は113,000百万円と前期比1.0%増、販売数量は180,000トンと同7.5%増を見込む。期初予想に対して売上高は7.4%、販売数量は4.1%引き上げた。乳原料、チーズともに輸入原料の引き合いは多いが、大手乳業メーカーを筆頭に乳原料の販売先の多くが秋口にかけてアイスクリーム、チーズなど最終製品の価格改定を予定しており、消費者の買い控えを懸念している。また、主力商品である粉乳調製品は回復基調にあるが、期初想定ほどの力強さはなく、生乳生産の増産傾向が国内の脱脂粉乳在庫に及ぼす影響や、輸入原料価格の上昇による買い控えなども懸念されるため、保守的に上期並みを見込んでいる。なお、バターなど脂肪系原料は需要が強く好調な販売を見込む。農林水産省は、2024年6月に需要が好調なバターの2024年度政府輸入枠を当初より4,000トン追加し、合計14,000トンとすることを公表しており、同社にとっては入札機会が増加しビジネスチャンスが広がったと言えよう。
国産脱脂粉乳の在庫水準は、2022年3月よりスタートした官民による過剰在庫対策が進み、2022年3月末の98,000トンから2023年11月末には50,000トンまで低下し、以降も50,000トン前後で推移している。しかし、2024年度(2024年4月~2025年3月)の生乳生産はコロナ禍での需給調製のための生産抑制を経て3年ぶりに増産に転ずる見通しで、2024年2月以降の生乳生産量は前年比プラスが続いている。なお、同社は、価格競争力を維持しており輸入原料の引き合いは強い状況にあるが、輸入原料価格が上昇するという不確定要素があり、下期を保守的に見積もっている。
また、想定を超える猛暑の影響を受けて、アイスクリームなど乳製品の消費増加や、生乳生産量の減少が輸入原料への需要増加に結び付く可能性もある。
(2) 食肉食材部門
下期は売上高、販売数量ともに上期を下回る水準を見込むが、通期の売上高は20,000百万円と前期比9.5%増、販売数量は30,000トンと同6.7%増を見込む。期初予想に対して販売数量は据え置いたが、売上高は豚肉相場の上昇に伴い20.5%引き上げた。加工食品向けのフローズンポークや鶏肉・鶏肉加工品は下期も引き続き好調な販売を見込むが、小売流通向けなどのチルドポークは豚肉相場の上昇や輸入価格の上昇が需要を冷やす懸念があるため、保守的な計画だ。
(3) 機能性食品原料部門
同事業においては、プロテイン市場の拡大の勢いが強く、高たんぱく原料中心の営業に注力し、通期では、売上高は5,000百万円と前期比27.6%増、販売数量は4,300トンと同53.2%増を見込む。
(4) アジア事業(乳原料販売部門)
下期には日本向けの乳調製品の原料販売や現地企業向けの乳原料販売の拡大を想定していた。しかし、国内における乳製品価格上昇に伴う消費の停滞や、生乳生産の増産傾向に伴う輸入調製品の需要減少が懸念されるため、下期は売上高、販売数量ともに上期を下回る水準を見込む。通期の売上高は18,500百万円と前期比2.2%減、販売数量は35,500トンと同4.7%減を見込み、売上高、販売数量ともに前期を上回るとした期初予想を大きく引き下げた(期初予想に対して売上高は26.0%、販売数量は34.6%下方修正)。前期における日本からの脱脂粉乳の輸出減少や、一部現地企業向けの価格訴求品の販売減少が大きく響いた。一方、現地日系メーカー向けの原料販売は下期も好調に推移すると見込んでおり、加えて要員配置の見直しによるタイ及び周辺国に対する乳原料販売の営業体制の強化や、インドネシアにおけるオセアニア乳業メーカーの販売代理店としての販売拡大の期待もある。また、商品ミックスが改善されるため、利益率の改善が期待される。
(5) アジア事業(チーズ製造販売部門)
下期は売上高、販売数量ともに上期を上回る水準を計画し、通期の売上高は5,500百万円と前期比13.9%増、販売数量は5,200トンと同7.7%増を見込むが、それぞれ期初予想を引き下げた(期初予想に対して売上高は5.2%、販売数量は16.1%下方修正)。シンガポール、インドネシアでは外食向けなどが堅調に推移しており、ナチュラルチーズは順調に販売が進むと見込んでいる。プロセスチーズは回復傾向にはあるが、中国の景気低迷の影響を受け需要減少が長期化すると見込む。加えて、回復を期待していたタイの加工食品メーカー向けの販売は、USドルに対する現地通貨安の影響を受けて苦戦しており、見通しを下方修正した。
(6) その他
下期にラクト・アメリカが直接外販する乳製品原料を上期比12.7%減の932百万円見込み、通期の売上高は2,000百万円と前期比267.1%増を計画している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 松本章弘)
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