シュッピン Research Memo(5):「カメラ事業」が順調に拡大し、過去最高業績(上期ベース)を更新(2)
*13:05JST シュッピン Research Memo(5):「カメラ事業」が順調に拡大し、過去最高業績(上期ベース)を更新(2)
■シュッピン<3179>の決算概要
4. 四半期業績とKPIの推移
(1) 四半期業績の推移
2022年3月期からの四半期推移を見ると、コロナ禍における「巣ごもり需要」の追い風や各施策の効果もありEC売上高が大きく拡大したほか、戦略的な商品ラインナップの拡充により「時計事業」の免税売上も大きく貢献し、第4四半期は過去最高水準(四半期ベース)を更新した。2023年3月期は中国におけるロックダウンの影響などを受けて免税売上が低迷したことに加え、世界的な価格相場の下落により「時計事業」が落ち込むも「カメラ事業」は引き続き拡大基調にあり、全体ではEC売上高を中心に高い水準を維持した。2025年3月期に入ってからも、第1四半期は好調に推移し過去最高水準(四半期ベース)をさらに更新したものの、第2四半期は8月以降の円高基調の影響を受け「時計事業」が落ち込んだ。ただ、「カメラ事業」においては堅調な推移が続いている。
(2) Web会員数
2024年9月末のWeb会員数は70万名を突破し、702,559名(前期末比31,883名増)と順調に伸び続けている。InstagramなどSNSの普及などにより、手頃で身近な趣味としてカメラを始める人が増えたことに加え、これまでのEC強化策が軌道に乗り同社ブランドや運営サイトの認知度が高まってきたことが背景にあると考えられる。世代別の構成比を見ると年齢層は幅広いが10代~30代の割合は40%を占め、そのうち女性比率は24%と他年代と比べて高く、新たなターゲット層となっている※。また、若い世代の構成比が増加しているなかでも、利用平均単価が維持されているところも特筆すべき傾向と言える。
※ 全Web会員のうち女性比率は17%だが、2025年3月期に入ってからの新規加入者は女性が20%以上を占めている。
(3) 購入会員数とアクティブ率
購入会員数とアクティブ率についても新規会員数が純増するなか、引き続き高い水準を維持している。欲しいリスト登録商品数※1や入荷お知らせメール登録数※2も順調に伸びており、それらのOne to Oneマーケティング施策もアクティブ率を高い水準で維持する要因となっているようだ。特に入荷お知らせメールについては、メールやアプリだけでなくLINEでのお知らせ機能を2022年5月より開始したことにより配信数が大幅に増加※2したほか、One to OneマーケティングとAIMD、さらにはAIコンテンツレコメンドとの掛け合わせによりリクエスト配信数※3も堅調に推移しており、これらも取引機会の拡大に大きく寄与している。また動画配信を中心としたコンテンツの拡充にも注力しており、これまで獲得できていなかった若年層視聴者の獲得も進んでいるようだ※4。
※1 欲しいリストの新規登録数は約7万件/月で推移しており、2024年9月末には243万件(前期末比16万件増)に拡大した。
※2 入荷お知らせメールの登録数については2024年9月末で16.6万件(前期末比2.6万件増)と16万人を突破するとともに、月平均配信数は55万件を超えてきた。特にLINEでの配信数は約2年で17倍に増加した。
※3 スマートフォン向けに月平均500万超の配信を実現している。上記の「入荷お知らせメール」配信と合わせると四半期1,782万件の配信数となり、来店客数換算で約400店の実店舗に相当する情報発信力及び顧客接点を生み出していることになる。
※4 「コンテンツクリエイト部」を新設し、映像制作の実務経験を持つ人財を複数名配置した。今後は動画コンテンツスタジオの新設により、映像コンテンツの制作・配信にも注力する方針である。
(4) 中古カメラ買取額
中古カメラ買取額についても、これまでのAI顔認証システムやAIMDに加え、AIコンテンツレコメンドの導入などEC強化を図ってきたことが奏功し、ECでの買取比率は80%水準で推移している。また、様々な差別化要因の1つである先取交換や下取交換も好調に推移しており、EC買取比率の底上げに寄与していると言える。
5. 2025年3月期上期の総括
2025年3月期上期を総括すると、8月以降の円高基調の影響を受けて「時計事業」が軟調に転じたことを除けば、主軸の「カメラ事業」を中心に総じて好調に推移したとの見方が妥当であろう。特に、「カメラ事業」については、これまでの取り組みの効果に加え、LINEによる配信力強化やYouTubeを活用した動画コンテンツの充実などが新たなドライバー(タッチポイント創出の原動力)となっており、たゆまぬ進化を続ける姿を示したところは評価すべきポイントである。また、利益面で大きく上振れたのは、「カメラ事業」「時計事業」ともにAI活用による粗利改善が進んでいる証左と言えるだろう。一方、外部要因の影響を受けやすい「時計事業」についてはボラティリティ(不確実性)の高さを改めて認識する結果となった。すなわち、コト消費を目的とする愛好者が増えてきたカメラと比べて、時計に対する購買行動は、投機目的を含め、市況や資産効果などに敏感に反応しやすいところに特徴があり、一時のバブル相場からは落ち着きを取り戻したものの、投機的な動きは一定程度残っている。とは言え、1兆円を超える市場規模はもちろん、そのコア部分を構成する熱量の高いマニアや装飾品(ファッションアイテム)としてのこだわりを持つユーザーの存在は同社にとって魅力的なターゲットであることに変わりはなく、安定した収益を稼げるビジネスモデルや独自のポジションニングの確立が今後の課題と言えるだろう。また、活動面では、動画コンテンツスタジオの新設やレディースブランドサロン「BRILLER」のリニューアルなど、将来を見据えた施策に取り組んだ(詳細は後述)。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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