日本精機:計器事業の世界的シェアを基盤に、HUD拡大で長期的な成長を目指す
*09:49JST 日本精機:計器事業の世界的シェアを基盤に、HUD拡大で長期的な成長を目指す
日本精機<7287>は、車載計器やHUD(ヘッドアップディスプレイ)を主力とする自動車部品メーカーであり、二輪車・四輪車用計器に加え、樹脂コンパウンドや民生機器部品など多角的に事業を展開している。特にHUDは世界首位となる30%のシェアを獲得しており、国内外の自動車メーカーにおける先進運転支援システムの普及とともに継続的に需要が拡大している。売上の約8割を占める車載部品事業は同社の収益基盤であり、四輪車用計器に加えて成長余地の大きいHUDの拡販が進められている。
同社の強みは、第一に二輪・四輪の幅広い計器事業で世界的なシェアを獲得していることである。特に二輪用計器は世界トップシェアの約30%を誇り、四輪用メーターも世界シェア4位の約10%を獲得している。特に近年はアジア市場の二輪用計器需要が底堅く、インド市場を中心に拡販を継続している。第二にHUD事業の技術優位性であり、表示性能や安全性、耐久性を重視する自動車メーカーの要求に応えながら、開発から販売までの一貫した体制を黎明期から培ってきた。HUDは今後のEVシフトなどの潮流の中でも需要が高まる技術であり、今後の高付加価値製品としての成長が期待される。
2026年3月期第1四半期の連結業績は、売上収益76,224百万円(前年同期比0.2%減)、営業利益1,522百万円(同30.2%減)となった。二輪車用計器はインドやASEAN向けを中心に堅調であったが、米国市場での関税の影響による四輪車販売減少や中国における欧州車・日本車の販売不振および為替影響が響き、全体では微減収に留まった。特に欧州向けHUDにおいては新機種販売のための既存機種の値下げが業績を圧迫したが、減益は一過性のものであり、今後の新機種販売で回収される見込みである。一方、国内・アジア向けの売上は好調であり、特にインド・ASEAN向け二輪用計器の売上は大きく伸長した。
「新中期経営計画2026」では、2027年3月期に売上高330,000百万円、営業利益16,500百万円、ROE5.5%の達成を目指す。重点施策は(1)HUD事業の拡大、(2)欧州事業の収益改善、(3)新規顧客・新商材の開発である。特にHUDについては2021年3月期269億円から2024年3月期560億円へと拡大しており、今後も自動車の電子化・安全機能強化を追い風に2030年3月期に売上1000億円を達成することを目標として掲げている。また、欧州事業については2025年3月期には前期比で約14億円の赤字縮小を行っており、今後も価格適正化や量産コスト削減、拠点再編を進めることで2027年3月期を目途に赤字を解消する計画だ。また新製品については二輪用計器として新たにハンドル上に搭載する車載ディスプレイや、EVシフトを見据えたモーター状態検知センサーなどの開発を計画しており、独自の技術力を武器に新たな成長ドライバーの創出を目指す。
株主還元については、2025年3月期から2027年3月期までの3年間で総還元性向80%を掲げており、同期間の利益目標を達成した場合には還元の総額は累計で200億円から250億円となる見通しである。そのプロセスとして、2026年3月期の配当は1株当たり80円と前年の50円から大幅な増配となる見込みで、約20億円の自社株買いも計画しており、目標に向けた株主還元の強化が着実に実行されている。こうした還元施策と合わせ、現状のPBRは約0.5倍、利回りは約4.5%と、株式指標を見ても魅力的な水準にある。
総じて、短期的には北米HUD減少や欧州事業の一時費用が重しとなるものの、中期的にはHUD拡大と欧州収益改善、新規商材開発による収益力強化が進む見通しである。資本効率を意識した株主還元も加わり、持続的な企業価値向上に向けた取り組みが鮮明である。今後の業績回復と中期計画の進捗に注目していきたい。
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