サイオス Research Memo(3):「Gluegentシリーズ」はARRで2ケタ成長続く
*14:03JST サイオス Research Memo(3):「Gluegentシリーズ」はARRで2ケタ成長続く
■サイオス<3744>の業績動向
2. 事業セグメント別の動向
(1) プロダクト&サービス
プロダクト&サービスは自社開発ソフトウェアやSaaS製品が含まれる。主な製品として「LifeKeeper」や「Gluegentシリーズ」、MFP向けソフトウェア製品※などが挙げられる。
※ 「Quickスキャン」「Speedoc」等のMFP上で利用できる文書管理ソフトウェア。なお、MFPとはプリンタ、スキャナー、コピー、ファクス等複数の機能を搭載した機器(複合機)を指す。
2025年12月期中間期の売上高は前年同期比9.1%減の2,777百万円、セグメント利益は同40.7%増の259百万円となった。売上高は減収となったが、2024年12月に売却した金融機関向け経営支援システム販売事業を除いた既存事業ベースでは増収となった。利益面では、「Gluegentシリーズ」の増収効果に加えて、米子会社の収益が改善したことなどが増益要因となった。
主な製品の売上動向について見ると、主力の「Lifekeeper」は海外で堅調に推移したものの、国内でライセンス販売収入が減少し、全体では前年同期比横ばい水準にとどまった。「Gluegentシリーズ」はARRでクラウド型ワークフロー「Gluegent Flow」が前年同期比29.6%増、IDaaSの「Gluegent Gate」が同8.3%増、合計で同15.0%増の718百万円と好調が続いた。特に「Gluegent Flow」は、新たに生成AIを活用したユーザーアシスト機能の提供を開始したことにより、契約社数と利用ID数が拡大し、高成長につながった。「Gluegent Flow」は、IT製品のレビュープラットフォーム「ITreview」が2025年7月に発表した「ITreview Grid Award 2025 Summer」において、18期連続で「High Performer」を受賞した。競合製品が多くあるなかでも、ユーザーからの一定の評価を継続して獲得していることを示している。一方、「Gluegent Gate」も情報セキュリティ対策の重要性が高まるなか、シングルサインオン、多要素認証、統合ID管理等の機能を持ち、かつコストパフォーマンスの高い製品として着実に導入が広がっている。
そのほか、MFP向けソフトウェアも堅調に推移した。2025年3月より販売を開始した「AI-OCR」機能搭載のアプリケーションソフト「Quickスキャン AI」が、売上増に寄与した。「AI-OCR」機能は文書をスキャン後に文字認識を行い、従来は認識が難しかった手書き文字や低品質文字の認識精度を高めたものである。また、テキスト付きPDFとして保存することができるため、保存文書の検索も容易となる。ペーパーレス化業務の負担軽減につながる製品として、今後も拡販を進めていく。
(2) コンサルティング&インテグレーション
コンサルティング&インテグレーションは、金融機関(証券会社、銀行、暗号資産取引所等)や文教(大学)向けのシステム開発・構築支援のほか、API※ソリューション、生成AIソリューションなどが含まれる。
※ 異なるソフトウェアやアプリケーション間で情報・機能を共有するための仕組み。
2025年12月期中間期の売上高は前年同期比14.9%増の1,755百万円、セグメント利益は同19.9%増の213百万円となった。金融向けが微減収となったものの、文教向け統合認証ソリューションが伸長したほか、高成長が見込めるAPIソリューションも、協業の強化による取り扱いサービスの拡大と開発体制の強化を進めたことで増収となった。利益面では、APIソリューションで一部利益率の低い案件を受注したことや人件費等のコストが増加し利益圧迫要因となったが、金融及び文教向けシステム開発・構築支援の増益によりカバーした。
(3) ソフトウェアセールス&ソリューション
ソフトウェアセールス&ソリューションは、国内外の先端ソフトウェアの提供と高品質な技術支援サービスを提供している。主にRed Hat関連商品を手掛けており、同関連製品ではアジア・パシフィック市場でトップの販売実績を持つ。そのほか、2024年7月にElastic
※ RAG(Retrieval-Augmented Generation):検索拡張生成技術のことで、大量の学習データを持ったAIモデルに企業独自の情報を組み合わせることで、より正確で信頼性の高い最新情報を含む回答を生成することが可能となる。
2025年12月期中間期の売上高は前年同期比31.4%減の4,959百万円、セグメント利益は同31.7%増の98百万円となった。売上高は前年同期に発生したRed Hat関連商品の大型案件がなくなった影響で減収となったが、利益率を重視した受注活動と価格改定を実施した結果、売上総利益率が改善した。また、Elastic関連製品の販売と導入支援サービスも企業の生成AI利活用ニーズの高まりを背景に好調に推移し、収益に貢献した。Elastic Search AI Platformの運用に当たっては専門的な技術・知識が必要となるため、同社の高度な技術力やサポート力が生かされる分野と言え、今後の成長余地も大きい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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