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新晃工業 Research Memo(8):好環境や価格改定を背景に好決算

2024年03月18日 16:28 銘柄/投資戦略

*16:28JST 新晃工業 Research Memo(8):好環境や価格改定を背景に好決算 ■業績動向

1. 2024年3月期第2四半期の業績動向
新晃工業<6458>の2024年3月期第2四半期の業績は、売上高22,290百万円(前年同期比24.5%増)、営業利益2,527百万円(同73.2%増)、経常利益2,789百万円(同52.6%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益2,070百万円(同62.9%増)となった。期初の第2四半期予想に対して、売上高で3,290百万円、営業利益で877百万円、経常利益で889百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で770百万円の超過達成をするなど非常に好調だった。なお、投資有価証券売却益が特別利益に計上されたため、親会社株主に帰属する四半期純利益の超過達成額が比較的大きな数値となった。

日本経済は、企業収益の改善を背景に設備投資が持ち直すなか雇用・所得環境の改善もあり、緩やかに回復している。一方、インフレの抑制を目的とした世界的な金融引き締めなどが実体経済に与える影響を注視する必要のある状況が続いた。建設業界においては、鋼材を中心に原材料価格の高止まりが続いたものの、部材の納期の遅れはおおむね落ち着きを取り戻し、販売面では管工事サブコンの受注高が高水準で推移するなど良好な事業環境が続いた。なお、同社は既に対応済みだが、建設や物流の「2024年問題」の業界全体への影響がしばらく続く見込みのため、今後も価格転嫁での対応が必要となろう。

こうした環境下、同社は、引き続きSIMAプロジェクトと5つの重点取組項目を推進した。SIMAプロジェクトでは、労働集約型事業からの脱却実現へ向かっているところである。5つの重点取組項目においては、主力の水AHUで業界の活発な需要を取り込み、ヒートポンプAHUでは地方の設計事務所にも重点を置いた営業を継続し、工事・サービスではヒートポンプAHU周辺技術の強化を続けている。また、アジアでは主に中国で採算を重視した販売戦略と原価の低減を徹底する方針で、継続的に利益を確保できる体制構築を進めている。技術深耕・品質向上ではデジタル解析技術の拡充やSIMAプロジェクト周辺技術の開発を継続するとともに、高効率部品が適用できる製品の開発・拡充に注力している。2023年6月に研究開発・品質管理の高度化・効率化を目的に、神奈川工場に空調機総合実験棟を着工した(2024年9月竣工予定)。

この結果、売上面では、都市再開発や半導体工場、データセンターなどの需要が引き続き旺盛で、下期の生産キャパシティも考慮すると受注を抑制する必要がある水準に達してきたため、結果的に出荷台数としては大きく伸びない状況となった。一方、販売単価は2022年4月の新規受注から15%の値上げをしたが、受注と値上げのタイミングのズレで厳しい環境のゼネコンやサブコンが建設業界の代表としてけん引したこともあり、1年が経って値上げ効果が寄与することとなった。この間、従来のような利益が出たから即値下げという商売から、付加価値を買ってもらう商売へと業界が変わりつつあることも、値上げ効果を享受できる背景になったと思われる。東京証券取引所が要請する資本コスト経営を成り立たせるには、値下げを容易に受け入れる商売では難しいということに業界全体が気付きつつあることも一因だと思われる。なお、同社にとっての高付加価値性は、空調機器が建物に合わせてカスタマイズするなど手間のかかるビジネスにある。一方、その分労働集約的になりがちという課題があったが、同社はSIMAプロジェクトによって課題の解消も同時に進めることができた。

こうして大幅増収となったが、利益面では、原材料価格は高止まりしているものの、価格転嫁が1年をかけて徐々に浸透したため売上総利益率が大きく改善した。価格転嫁の進捗状況を考えると、今後も引き続き採算の改善が進むものと思われる。経費面では、給与上昇により人件費、人手不足などにより物流費、投資の積極化により減価償却費が増加したが、売上の伸びが大きかったため販管費率も大きく改善した。なお、期初予想に対して売上・利益ともに大幅な超過達成となった要因は、従来下期に比べて上期の物量が少なく不安定な傾向があったが、旺盛な建設意欲を背景に想定以上の物量を上期に確保できたこと、加えてこれも想定以上に価格改定が進んだことにある。こうした傾向は下期も継続することが予想されるが、キャパシティ面で伸びしろが多くなりつつあるようだ。


国内好調、中国は黒字転換
2. セグメント別の業績動向
セグメント別では、日本が売上高18,702百万円(前年同期比16.5%増)、セグメント利益2,481百万円(同66.5%増)、アジアが売上高3,597百万円(同92.1%増)、セグメント利益24百万円(前年同期は56百万円のセグメント損失)といずれも好決算となった。受注も全体で33.2%増と大きく伸びたが、国内は産業空調を中心に伸長、利益率重視へと舵を切った中国は公共インフラ向けが回復した。特に国内の価格改定効果が売上を引き上げる格好になったが、グループでの受注も奏功したようで、工事やメンテナンスを請け負う新晃アトモスの伸びも大きくなった。新晃アトモスは収益性も高く、今後の成長へ向けて採用や育成を強化しているところである。

セグメント別の詳細は、日本については、標準型が多いため付加価値を加えづらいオフィス向けも3割程度の売上を占める。数年は伸びが期待できそうな半導体工場やデータセンター、研究所などを中心に、付加価値の高い産業空調の受注を、物量の平準化を考えながらも進めた結果、2ケタ増の売上高を確保することができた。利益面では、原材料価格高騰の影響を受けたものの、価格改定や物量増加を背景に大幅増益となった。アジアでは、中国で不動産市場の停滞は続いているものの、工事込みのワンストップ受注や高付加価値品の拡大などに注力したほか、コロナ禍の影響で納期ズレしていた物件が完工したこともあって売上高が回復、増収効果を背景にセグメント利益は黒字転換を果たした。


通期業績予想を上方修正したが、依然向上の余地があり
3. 2024年3月期の業績見通し
同社は2024年3月期の業績を、売上高50,000百万円(前期比11.6%増)、営業利益7,100百万円(同18.4%増)、経常利益7,420百万円(同13.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益5,320百万円(同17.8%増)と見込んでいる。 第2四半期の好調とその後の注力事業の進捗・受注状況などを踏まえた結果、期初予想に対して、売上高で3,500百万円、営業利益で800百万円、経常利益で720百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で720百万円の上方修正となった。

第2四半期は伸びしろのある分売上が伸びやすかったが、下期はキャパシティ面から伸びしろを考慮せず、通期売上高は第2四半期の超過達成分を上乗せした格好となっている。また、利益面では、原材料価格や電気料金の高止まり、人件費や物流費、職場環境改善に伴う経費の増加を見込んだことに加え、部材の遅延や人手不足による納期ズレを一部リスクとして考慮した結果、下期の利益はほぼ横ばい圏との予想になった。しかし、地合いの強さやリスクの発生可能性を考慮すると、さらに向上の余地があると言えるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)

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