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kubell Research Memo(4):BPaaSで「働く」を変えるプラットフォームを提供(2)

2024年12月24日 14:04 銘柄/投資戦略

*14:04JST kubell Research Memo(4):BPaaSで「働く」を変えるプラットフォームを提供(2) ■事業概要

4. 同社の強み
kubell<4448>は、国内最大級のビジネスチャット「Chatwork」を中核に据えた企業であり、その強みは日本の労働市場の構造的課題に対して、的確に対応できるソリューションを提供している点にある。少子高齢化に伴う労働力不足や中小企業の労働生産性向上の必要性が叫ばれる日本において、ITリテラシーの低い中小企業層でも容易に導入・活用できるツールを提供することは、非常に重要な社会的使命を果たしていると言える。

「Chatwork」は、日本国内の中小企業を中心とした顧客基盤を背景に強固な市場シェアを獲得している。フリーミアムモデルを採用しているため顧客にとっては導入のハードルが低く、また簡単なUIと社外と接続しやすい特徴を備えていることから、既存ユーザーの紹介経由で導入が進んでいく特徴を有する。これらの特徴が高いネットワーク効果を発揮し、足元では60.5万社という業界でトップクラスの導入社数を実現している。この広範なユーザー層を持つこと自体も同社の競争力の一端であるが、特に中小企業向けにフォーカスしたことで、競合他社との差別化に成功している点が大きな強みと言える。

また、単なるチャットツールの提供に留まらず、BPaaSという新しいクラウドサービスモデルを推進している。BPaaSは、SaaSのさらに上流工程に位置し、業務プロセス自体をクラウド上でアウトソーシングする形態をとっている。これにより、ITリテラシーが低く複雑なツールを扱うのが難しいユーザー層に対して、SaaSを適切に使いこなすための支援を行うだけでなく、プロセスそのものを代行することで、中小企業のDXを強力に推進することができる。この戦略は、人口の大部分を占めるIT未熟層である「マジョリティ市場」に向けたDXの一助となり、企業の競争力を高めるために不可欠なソリューションであると評価できる。

さらに、AI技術の進展により、同社が提供するサービスの進化も期待される。「Chatwork」においては、大規模言語モデル(LLM)を活用した高度なAI機能を実装することで、過去のメッセージを学習した文章生成や要約、タスク実行の自動化が検討されており、これによりユーザーの業務効率は飛躍的に向上する見込みである。特に、AIによる自動化がBPaaSの領域に取り入れられることで、さらに多くの業務プロセスが効率化され、生産性の向上が期待できる。

これらの要因から、同社は今後の成長ポテンシャルが高い企業であると弊社では考える。特に、日本の中小企業市場におけるBPaaSの展開は、ITリテラシーが低い企業でも導入が容易であることから、今後のSaaS市場の成長に大きく寄与する可能性がある。また、BPaaSの市場規模が42.4兆円に上るという試算からも、その市場機会は大きいと言える。さらに、「Chatwork」が持つ高い顧客接点は、PLG(Product-Led Growth)モデルに基づく成長戦略と相性が良く、顧客の利用データを基にした高度なマーケティング・セールスプロセスの効率化が進むことで、より一層の売上拡大が期待できる。

競合については、ビジネスチャット事業では「Microsoft Teams」や「Slack」といったグローバル企業が提供するビジネスチャットサービスが挙げられるが、これらのサービスがエンタープライズ領域を主要顧客としているのに対し、同社の「Chatwork」は中小企業を主なターゲットとしていることから、一定の差別化には既に成功していると考える。今後は技術的競争や市場の変化に対応し、いかにしてシェアを維持・拡大していくかがポイントである。また、AI技術の進展により競争が激化するなかで、独自の付加価値をいかに維持し続けるかも注目すべき点である。また、BPaaS事業では、大企業向けのBPOサービスというのは多くあるが、中小企業に特化した同様のサービスを提供する企業は非常に少なく。また、BPaaSの定義には幅があり、自社で提供しているSaaSのカスタマーサクセスのようなサービスをBPaaSと呼ぶケースも散見される。同社が提供するサービスは、クライアントから業務を請け負い、そこに適切なSaaSを選択してDXするプロセスを提供するものであり、他にはない優位性を持っている。同社は今後も日本の中小企業市場においてポジションを築き続けることが期待されるが、技術革新とともに、柔軟な経営方針を維持しつつ、成長機会を的確に捉えることが成功のカギとなると弊社では見ている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 茂木稜司)

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