プロディライト Research Memo(5):回線から端末・アプリまでワンストップで提供できる強み
*12:05JST プロディライト Research Memo(5):回線から端末・アプリまでワンストップで提供できる強み
■プロディライト<5580>の事業概要
3. 業界環境と同社の強み
働き方の多様化、スマートデバイスの浸透、BCP対策の必要性、AIやテクノロジーの発展など様々な環境変化のなか、電話対応のための出社が不要、回線がダウンしても通話が可能、音声通話のテキスト化などによる業務効率化に対応、メンテナンスなどのコストを削減するための「電話のDX」が求められている。このため、音声通信サービス市場では、固定通信の契約数減少が続く一方、モバイルや同社の扱う0ABJ番号※をIPで使える0ABJIP電話が伸びを継続している。なかでもクラウドPBXは、直収型電話サービスや加入電話などのアナログ/ISDNから、050IP電話や0ABJIP電話などIP電話への回線のシフトが進み、法人向け固定電話サービスが頭打ちとなる一方で順調な伸びを続けている。しかし、依然ハードウェアのPBXだけを使用している企業が約8割あることから、そこからのシフトにより今後もクラウドPBXは伸び続けていくことが見込まれている。なお、2025年1月に制度改正により固定電話サービス提供事業者間における双方向番号ポータビリティが開始されるが、これによりクラウドPBXへのシフトが加速することが期待される。
※ 0ABJ番号:03や06などから始まる10桁の固定電話番号のこと。なお、IP電話を通じて0AB-J型番号を取得することもでき(0ABJIP電話)、その場合、電話加入権の購入は必要ない。
こうした音声通信サービス市場における企業の電話システムには、大きく分けてクラウドと大手有力企業が扱っているハードウェアの2種類がある。クラウドはハードウェアに対して、高度な専用システムの必要がなく、設置場所や専門知識、端末の柔軟性、機能性、メンテナンス、導入コストなどの面で優位性がある。一方、一般の企業向けクラウドPBXにも、固定端末に対応していない、品質やアフターサポートが不足しているといった課題がある。同社の「INNOVERA」は、固定電話の番号や機能をそのまま利用できるだけでなく、それ以上の品質やサポート・機能を提供しており、新たに番号を増やすことも可能だ。さらに、オフィスなど一般企業向けクラウドPBX市場には新興の小規模企業が多く、そのなかで同社は、品質やアフターサポートに対する定評に加え上場企業としての規模と信頼感があり、回線も端末・アプリもワンストップで提供していることから、優位性がある。このように同社の「INNOVERA」は様々なシステムに対して強みを発揮していると言える。なかでもワンストップ・ソリューション、ユーザー視点で開発したことによるユーザビリティ、他社サービスとの連携や拡張オプション機能といったフレキシビリティの3つが特徴的な強みだと思われる。また、「INNOVERA」はシステムすべてがクラウド上にあって、間に機械が入らないためノイズが少なく音質が鮮明で、万が一問題が発生してもその場所の特定が容易なので使い勝手が良いことも特徴だ。
KPIは「INNOVERA」アカウント、「IP-Line」チャネル、リカーリング率
4. 収益構造
同社のメインターゲットは首都圏にある従業員11人~100人の中堅企業だが、初期設定を必要としない小規模向けプランの導入により従業員10人以内の士業やスタートアップへのアプローチ、さらに「INNOVERA PBX2.0」へのアップデートにより利用ユーザー数の上限が増えたことを背景に大企業へとターゲットを拡大することも志向している。このため2022年9月に販売代理店制度「パートナープログラム」を開始し、主要都市圏のみならず地方まで、中堅企業のみならず小規模企業から大企業までを網羅できるようになった。拡大するクラウドPBX市場を同社の成長に十分に取り込んでいく体制が整ってきたと言え、既にパートナー経由の売上高構成比が7割から8割に増え、また大型案件が増加するなど、「パートナープログラム」の成果が現れ始めたようだ。
同社の収益は、クラウドPBX「INNOVERA」、回線「IP-Line」、端末の販売でおおむね構成されている。「INNOVERA」の収益は初期設定収益及びオプションを含むシステムの月額固定の利用料金からなり、アカウント数(利用端末数)の増加とオプション利用率の上昇が成長のドライバーとなる。「IP-Line」は初期設定収益と、月額固定の利用料金及び通話料に応じた課金からなり、チャネル数(同じ電話番号での同時利用可能者数)や通話時間を増やすことで成長が加速する。端末販売は「Yealink」の電話端末や電子黒板の販売代金からなり、販売台数が収益の伸びを支える。このうち市場環境が良好な「INNOVERA」と「IP-Line」は、リカーリング収益で売上高の約8割を占めることから、同社の今後の成長と安定収益を支えることが期待できる。なかでも「INNOVERA」は同社が独自に開発したシステムのため高収益で、「IP-Line」と「Yealink」はそれぞれアルテリア・ネットワークスやYealinkなどへの下払いが発生する。したがって、KPIとして「INNOVERA」アカウント、「IP-Line」チャネル、リカーリング率の3つが重視されている。なお、リカーリング率が高いことから、今後コストの比率が大きく高まる可能性は小さいと想定するが、パートナーシップを強化していることから、パートナー向けインセンティブが変動費的に増える可能性はある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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