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いい生活 Research Memo(8):顧客数5,000社、平均顧客単価10万円以上、年間売上高60億円以上を目指す

2024年07月02日 14:38 銘柄/投資戦略

*14:38JST いい生活 Research Memo(8):顧客数5,000社、平均顧客単価10万円以上、年間売上高60億円以上を目指す ■中長期の成長戦略

1. 中長期の成長戦略の概要
いい生活<3796>は中期的な目標として、顧客法人数5,000社、平均顧客単価10万円以上(月額)を目指している。売上高にすると年間60億円以上となる。これを達成するためにこれまでの事業戦略を加速して推進していく方針である。成長戦略については、「顧客基盤の拡大」「収益力の強化」「将来への布石」を挙げ、サービスの進化及び導入支援顧客サポート体制の充実を目指す。

(1) 顧客基盤の拡大
利用法人数が右肩上がりであることからも、業務の作業効率の向上・費用対効果は実証済みであり、同社のサービスに興味を持つ潜在的な顧客へのアプローチを続けていく。導入支援サービスの充実によるエンタープライズ顧客の獲得と、「いい生活Square」の無料顧客への有料顧客化が、顧客基盤拡大の大きな柱と位置付けている。

(2) 収益力の強化
マルチプロダクトのワンストップ提供による顧客単価上昇、運用支援サービスレベル向上によるLTV(顧客生涯価値)拡大を行う。不動産管理業はサービスの利用期間が長期にわたるため、LTVの高い顧客層である。同社のサービスはSaaSのため、複数のサービスを一体化して利用できることから、高い全体最適性を実現できる強みを生かして顧客満足度を高めることができる。

(3) 将来への布石
不動産プラットフォームへの進化を成長戦略として挙げ、中長期的に持続的かつ安定的な事業成長の確立を図るため、市場特化×SaaS×一元管理の最大化による高成長を推進する。加えて、豊富なサービス群とソリューションを組み合わせるなど付加価値の高いサービスを提供することで、競合他社との差別化を図っていく。

2. 将来的な戦略
同社は、中長期の戦略以外にも将来の展望として、1) 持続可能な顧客獲得サイクル、2) プロダクトビジョン、3) 不動産に関するあらゆるデータが集まるプラットフォームなどの戦略イメージを持っている。

(1) 持続可能な顧客獲得サイクル
見込顧客へのアプローチから、提案、受注、導入支援、運用、サポートというプロセスを経て既存サービスを利用する顧客に対し、追加的サービスの提案を行い、サービス全体の拡販を推進する。既に同社のサービスを利用している顧客は業務の効率化が進み、顧客満足度が高いため、追加サービスを購入して顧客単価が高まる傾向にある。これにより、既存顧客との信頼関係をより強固なものにすると同時に、売上を拡大するための事業基盤が広がる可能性も高まる。売上高については既存顧客向けにアップセル・クロスセルを通じた受注拡大を見込むと同時に、新たに稼働を開始した新規顧客の売上が上乗せされることになる。これにより、不動産管理業を中心に高いLTVを持つ顧客数を増加していく。LTVの高い顧客を獲得することで、サービス開発などのコストを相殺し、大きな利益を生み出す考えである。

(2) プロダクトビジョン
同社は、将来的にはSaaSで各ツールが人の手を介さず、リアルタイムで連携できるシステム構築を行い、会計システム、電子契約、電子決済、Web会議などサードパーティシステムとの連携、ユーザーのビジネスにおけるさらなる最適化を追求する。加えて、インボイス対応や設備・修繕管理機能、経営分析機能、金融領域など新機能や新領域についても拡充し、不動産におけるあらゆる業務領域をカバーすることを目指す。

2024年3月期第3四半期には、「いい生活Pay口座振替」の取り扱い金額が1億円を超えた。このサービスはSMBCファイナンスサービス(株)と共同で開発されたもので、家賃や駐車場料金などの支払いの口座振替登録をオンラインで完了できるものだ。これにより、不動産管理会社の資金回収作業がデジタル化され、より効率的になった。従来の振替依頼書の記入や押印が不要となり、処理ミスやその結果生じる余計な作業の削減にもつながっている。結果として、手間をかけずに迅速に家賃などを回収できるようになった。

(3) 不動産に関するあらゆるデータが集まるプラットフォーム
SaaSを媒介として、不動産に関わるあらゆるデータが蓄積されたプラットフォームを構築し、その豊富なデータに基づき、多彩な商品やサービスの取引が展開されるマーケットプレイスとなり、テクノロジーがもたらす付加価値をエンドユーザー・不動産会社に留まらない市場のすべてのプレーヤーへ届けることを目指す。

3. 人的資本拡大
同社は2023年4月、「人的資本拡大に関する基本方針」を策定した。この方針では、社会と会社、会社と従業員の双方にとって有益な関係を目指すことに焦点を当て、同社のミッションとビジョンを明確にし、組織の存在意義と目指すべき未来像を具体化している。加えて、企業が重視する価値観と、個々の人が目指すべき行動指針を6つのバリュー(行動指針)に要約している。

このバリューにおいて、同社は、新しい基準を定め、学びながら常に既成概念を疑い、経験を形式知として定着させることを目指している。好奇心を持ち、未知の探求を楽しむことで、新たな知識を組織に取り入れ、拡張していくこと。また、適切な距離感を保ちながら、誰も置き去りにせず、かつ停滞もせず、前進する道を照らすこと。優しさと易しさを大切にし、明快なコミュニケーションとシステムで信頼される存在になること、多様な人々との化学反応を通じて成長を促進すること、信頼を積み重ねて歴史を育むこと、そして挑戦と失敗を包容し支え合うことが、文化の継承と発展のために重要であると示している。さらに、「自発的な価値創造」「目標設定や達成の支援を通じた積極的な対話」「個々人の能力の顕在化とウェルビーイングの追求」「人間性の尊重」そして優れた「タレントの獲得」を促進するための社内環境整備に関する具体的な施策を提供している。

同社では、プロダクト毎に独立したスモールチームに権限を委譲し、APIプラットフォームを中核に各プロダクトチームが連携することで、生産性の高い開発環境が形成されることを推進している。このアプローチは、自律的なチーム運営を重視し、スクラムを基本としたアジャイル体制を採用している。その結果、同社は、開発生産性が優れたエンジニア組織を表彰する「Findy Team + Award 2023」で、ユーザーへの価値提供のサイクル改善において、開発生産性が高く評価され、組織別部門で受賞した。こうした取り組みにより、開発者体験が向上し、個人の能力が十分に発揮されるとともに、チーム全体の学びが促進される環境が整い、結果として人的資本の充実に直結している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 中山博詞)

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