日経平均は大幅反発、米政府機関閉鎖回避や日銀短観受けて投資家心理改善
*12:17JST 日経平均は大幅反発、米政府機関閉鎖回避や日銀短観受けて投資家心理改善
日経平均は大幅反発。448.04円高の32305.66円(出来高概算7億150万株)で前場の取引を終えている。
前週末9月29日の米国株式市場のダウ平均は158.84ドル安(-0.47%)と反落。8月コアPCE価格指数の伸び鈍化で、金利高を警戒した売りが後退した。ただ、月末、四半期末の調整売りに加えて、連邦予算案期限を翌日に控えて下院が共和党のつなぎ予算案を否決したため政府機関閉鎖への警戒感が一段と強まったほか、自動車労働組合(UAW)ストライキ長期化を警戒した売りが強まり下落に転じた。ナスダックはプラス圏を確保、まちまちとなった米株市場を横目に、本日の日経平均は上昇スタートとなった。その後はプラス圏での推移となっている。
個別では、レーザーテック<6920>やディスコ<6146>、東エレク<8035>などの半導体関連株、川崎汽船<9107>や商船三井<9104>などの海運株、三井住友<8316>や三菱UFJ<8306>、みずほ<8411>などの金融株が堅調に推移。また、三菱商事<8058>や三井物産<8031>などの商社株、ソニーG<6758>やメルカリ<4385>などのグロース株の一角も上昇。キーエンス<6861>、ソフトバンクG<9984>、ファーストリテ<9983>、神戸製鋼所<5406>、NTT<9432>、日本製鉄<5401>、なども上昇している。そのほか、業績・配当予想の上方修正を好感されたアダストリア<2685>が急騰、北川鉄工所<6317>、加藤製作所<6390>、千葉興業銀行<8337>などが値上がり率上位に顔を出した。
一方、三菱重工業<7011>、任天堂<7974>などが下落した。そのほか、イー・ガーディアン<6050>やピックルスホールディングス<2935>、スターティアホールディングス<3393>などが急落、プロトコーポレーション<4298>、エル・ティー・エス<6560>、アドバンスクリエイト<8798>などが値下がり率上位に顔を出した。
セクターでは、銀行業、輸送用機器、機械が上昇率上位となった一方で、空運業、石油・石炭製品が下落率上位となった。東証プライムの値上がり銘柄は全体の75%、対して値下がり銘柄は23%となっている。
10月2日の日経平均は前週末比244.35円高の32101.97円と大幅反発でスタートした。シカゴ日経225先物清算値(12月限)は、大阪比195円安の31825円。直近で重しとなっていた需給イベントを通過したほか、米政府機関の閉鎖を回避するためのつなぎ予算案が可決されたことでひとまず投資家心理が改善する流れとなっている。
また、日銀が朝方発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)の改善が引き続き買いを誘っている。
一方で、新興市場は上値の重い展開となっている。グロース市場の時価総額上位銘柄などで構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後にプラス圏で推移しているが、マザーズ指数は上昇スタートも上げ幅を大きく縮小してマイナス圏に転落している。東証プライム市場の主力株に注目が集まっているほか、米長期金利が依然として高水準で推移しており新興株を積極的に買い進む動きは限定的となっている。前引け時点での東証グロース市場Core指数は0.27%高、東証マザーズ指数は0.46%安となった。
さて、日銀は本日2日、9月の全国企業短期経済観測調査(短観)を発表した。大企業製造業の景況感を示す業況判断指数(DI)は、前回の6月調査(プラス5)から4ポイント改善してプラス9となり2四半期連続で改善した。供給制約の緩和で生産の回復が進む自動車や石油・石炭製品が大きく改善し、非製造業も新型コロナウイルスの影響が和らいで国内観光やインバウンド(訪日外国人)需要が回復している宿泊・飲食サービスなど幅広い業種で改善が続いた。
また、米政府機関の閉鎖問題については、米議会が30日に政府機関の閉鎖を回避するため11月17日までのつなぎ予算案を可決した。長期的な政府機関閉鎖となった場合には、米連邦準備制度理事会(FRB)の取り組みに支障が出ると予想されていたが、なんとか土壇場で回避する見通しとなった。上記2つの要因から本日の東京市場では投資家心理が改善して、日経平均は堅調に推移している。
ただ、つなぎ予算が成立してもその失効時に向けては再度、政府閉鎖の懸念が再燃する可能性もあるなど不透明感は長期化の様相とみられている。また、全米自動車労働組合(UAW)のスト長期化の可能性に加えて、足元では10年債利回りが高水準で推移しており、原油価格も再び上昇している。雇用統計をはじめ米経済指標の公表を控える中、積極的に買い進む動きは想定しにくい状況にあろう。
米国ではガソリン価格高騰が支出を妨げ、クレジットカードの支払い延滞率も過去10年余りで最も高くなっているという。また、10月からはコロナ禍で停止していた学生ローン返済が再開する予定で、さらには、S&Pグローバル・レーティングの先月のリポートによれば、サブプライム自動車ローンの60日以上の延滞率は7月に過去最高水準に達したようだ。米国の消費動向には注目が必要だが、経済や金融市場にとってマイナスとなる材料が多々くすぶっており、当面不透明感が存在していることは9月から10月に切り替わったいまだからこそ再度頭の片隅に置いておきたい。
さて、9月28日に発表された最新週(9月19日~9月22日)の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物株を3週連続で売り越した。売り越し金額は9131億円となるなか、個人投資家は買い越しに転じている。年金基金の売買動向を反映するとされる信託銀行は3週連続の売り越しとなった。今後は、海外投資家の売り越しスタンスにブレーキが掛かるか注目される。後場の日経平均はプラス圏での堅調推移を継続できるか。日銀短観を受けて自動車関連や銀行株など、プライム市場の主力株中心に物色が継続するか注目しておきたい。
(山本 泰三)
<AK>