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ティアンドエス Research Memo(6):人材採用及び持株会社化関連コストを吸収し、利益創出(2)

2025年01月14日 12:06 銘柄/投資戦略

*12:06JST ティアンドエス Research Memo(6):人材採用及び持株会社化関連コストを吸収し、利益創出(2) ■ティアンドエスグループ<4055>の業績動向

2. KPIの達成状況
2024年9月期の期初から事業本部体制に移行したことに伴い、同社は事業ごとにKPI(Key Performance Indicator)を再設定しており、システム開発事業本部と先進技術本部は年間受注工数、ITサービス事業本部はエンジニア数を重要な経営指標として新たに設定している。2024年9月期の達成率を見てみると、システム開発事業本部の年間受注工数は95%、先進技術事業本部の年間受注工数は95%、ITサービス事業本部のエンジニア数は100%となった。システム開発事業本部については、主要顧客の業績が低迷した影響を受け、わずかながらに未達となったものの、先述のとおり、足元での引き合いは増加している状況である。新卒採用の強化継続や、業務提携・M&Aによってエンジニアリソースを拡充し、受注工数を積み上げる方針だ。

3. 過去の業績推移
(1) 売上高、営業利益、営業利益率の推移
同社の売上高は、2020年11月期に前期比で若干の減少を強いられたものの、それ以降は2023年11月期まで順調に増収を継続してきた(2024年9月期は10ヶ月の変則決算のため比較対象から除外する)。また、営業利益に関しても、変則決算となった2024年9月期を除けば創業以来一度も前期割れすることなく右肩上がりで成長している点も特徴だ。

特に着目すべきは、営業利益率の高さである。2017年11月期の7.8%から2024年9月期の17.4%まで、非常に高い水準で推移している。2024年9月期は、想定していた受注案件が期ズレしたことなどを受けて営業利益率が前期比では若干下がったものの、依然として高い収益性を維持している。これは、同社が大手顧客から優良単価で案件を受注し、徹底した品質管理で余計なコストを発生させないことによって生み出された結果であり、ここでも同社の強みが発揮されていると弊社は考える。中期の戦略において同社は、AIソリューションカテゴリーを成長分野として位置付け、同事業の拡大に注力する構えである。こうした流れのなかで、高付加価値創出型のビジネスモデルへの転換を積極的に模索しており、このことが同社の収益性をさらに高めるものと弊社は見ている。

(2) カテゴリー別売上高の推移
同社は2024年9月期から事業カテゴリー区分を変更している。そのため、区分変更前である2023年11月期までの業績推移を事業カテゴリーごとに見ていく。同社売上高の大部分を占めるソリューションカテゴリーは、多少の増減はあるものの堅調に推移しており、同社収益の基盤となってきた。また、安定した収益源である半導体カテゴリーは右肩上がりで成長している。今後も企業のDX推進や生成AIの活用などを背景に、半導体への需要は底堅い推移が予想されることから、同社の主要顧客の業績も好調に推移すると想定される。こうしたなかで同社は、売上高に占める半導体関連の比率を高めていきたい考えであり、半導体関連事業は今後も成長軌道をたどると弊社は考えている。同社が成長分野と位置付けてきた先進技術ソリューションカテゴリーは、売上高に占める割合は相対的にまだ小さいものの成長率は非常に高い。AI領域での同社特有のビジネスモデルと、それを可能にする優秀な人材・高度な技術の蓄積を考えると、今後のさらなる伸びが期待されるカテゴリーである。なお、新規カテゴリー区分に基づき、2023年11月期の売上構成比を見てみると、DXソリューションカテゴリーが55.9%、半導体ソリューションが35.3%、AIソリューションが8.8%を占めた。2024年9月期の構成比に関しては、それぞれ60.6%、29.8%、9.6%となっており、DXソリューションカテゴリーが同社の安定収益基盤となっている。

2018年11月期~2023年11月期のソリューションカテゴリー、半導体カテゴリー、先進技術ソリューションカテゴリーのCAGRはそれぞれ7.1%、23.1%、23.5%となっている。基盤分野であるソリューションカテゴリーを着実に成長させながら、安定分野である半導体カテゴリーと成長分野である先進技術ソリューションカテゴリーへの投資を行い、持続的に業績を拡大させるという同社の戦略が順調に機能してきたことが窺える。

4. 財務状況
2024年9月期末の財務状況を見ると、総資産は2,921百万円となった。このうち流動資産は2,774百万円となった。主な内訳は、現金及び預金2,013百万円、売掛金432百万円、未収入金258百万円である。固定資産は146百万円となった。主な内訳は、繰延税金資産67百万円である。

負債合計は485百万円となった。このうち、流動負債は424百万円となった。主な内訳は、買掛金164百万円、未払法人税等74百万円、未払消費税等72百万円である。固定負債は60百万円となった。内訳は、退職給付に係る負債60百万円である。純資産合計は2,435百万円となった。主な内訳は、利益剰余金1,901百万円、資本剰余金567百万円である。

同社の財務状況で着目すべきは、無借金経営であることだ。そのため、財務の健全性を示す自己資本比率は2024年9月期末で83.4%と、非常に高い数字になっている。資金調達の多くを返済義務のない自己資本で賄っているということであり、財務の健全性は高いと言えるだろう。また、現金及び預金が資産合計の68.9%を占め、流動比率も653.8%と高い数値となっており、短期的な資金繰りに関しても、問題のない水準であると弊社は考える。さらに、利益剰余金もしっかりと積み上がっており、これまでの事業活動においてしっかりと利益を出してきたことが窺える。以上のことから、同社の財務状況は非常に健全であり、問題がないと弊社は考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)

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