エスプール Research Memo(2):ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業を展開(1)
*11:02JST エスプール Research Memo(2):ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業を展開(1)
■エスプール<2471>の事業概要
同社の事業セグメントは、ビジネスソリューション事業と人材ソリューション事業の2つに区分される。2024年11月期の事業セグメント別構成比は、ビジネスソリューション事業が売上収益の58.6%、営業利益の81.0%と過半を占めており、直近5期で事業構成は大きく変化した(2019年11月期は売上高で28.7%、営業利益で56.1%)。これは、ビジネスソリューション事業において障がい者雇用支援サービスの拡大が続いたことや、広域行政BPOサービス及び環境経営支援サービスといった2019年11月期以前にはなかった新規事業が順調に成長したことが主因だ。一方、人材ソリューション事業については2020年以降、コロナ禍によってコールセンター派遣需要が一時的に大きく伸張したものの、コロナ禍の収束に伴い同案件が終了したこと、AIの普及によりオペレーター需要そのものが減少したことで低迷した。売上規模を2019年11月期と比較すると、ビジネスソリューション事業が約3倍に拡大した一方で、人材ソリューション事業は0.85倍の水準に留まっており、今後もビジネスソリューション事業の構成比が上昇していくと見られる。
1. ビジネスソリューション事業
ビジネスソリューション事業は、障がい者雇用支援サービス・広域行政BPOサービス・環境経営支援サービス・ロジスティクスアウトソーシングサービス・採用支援サービス・セールスサポートサービスなどを子会社で展開するほか、本体でその他に分類される新規事業を開発している。2024年11月期の売上構成比では、障がい者雇用支援サービスが53.5%と過半を占めており、次いで広域行政BPOサービスが10.0%、環境経営支援サービスが9.5%とそれぞれ一定の規模を占めるまでに成長した。利益構成比では、障がい者雇用支援サービスが同事業セグメントの7割強、環境経営支援サービスが2割弱を占めている。
(1) 障がい者雇用支援サービス
障がい者雇用支援サービスは、子会社の(株)エスプールプラスで展開している。同子会社が賃借した土地や建物内で養液栽培施設を構築し、「わーくはぴねす農園」として企業に貸し出すとともに(栽培設備は販売)、同農園に従事する障がい者(主に知的障がい者)やその管理者を企業に紹介することで収入を得るビジネスモデルである。2010年に事業を開始し、2024年11月末までに首都圏・愛知県・大阪府で合計53農園を開設しており、契約企業664社に対して4,405人の障がい者雇用を創出している。農園は当初は屋外型で展開していたが2020年以降は猛暑などの対策として、都市部においては屋内型での展開も進めている(2024年11月末で14園)。また、自治体と連携協定を締結して農園を開設するケースもある。自治体と連携することによって、候補用地の確保や就業を希望する障がい者の募集活動が効率的に進むといったメリットがある。
基本的なビジネスモデルは、賃借した約3千坪の土地にビニルハウス農園を構築し、150~180区画程度に分割して契約企業に対して区画ごとに栽培設備の販売及び農園で就業する障がい者と管理者の人材紹介を行う仕組みで、6区画(障がい者3人、管理者1人)を1パッケージとして販売している。フロー型と月々の運営管理料を得るストック型を組み合わせたハイブリッド型のビジネスモデルである。栽培設備は約150万円/区画(屋内型の場合は約180万円)で販売していたが、物価上昇等を勘案し2024年11月期に約7%の値上げを実施した。人材紹介料(障がい者で平均約60万円、管理者で約50万円)についても、合わせて同程度の値上げを実施した。また、運営管理料は立地によって異なるが、平均で月額5万円/区画(屋内型は6.5万円/区画)程度に設定している。
仮に期初に屋外型で1農園(150区画)を販売した場合、当年度の売上は栽培設備販売で240百万円、人材紹介料で60百万円、管理収入で90百万円、合計で390百万円となる。一方で、設備投資額は約2.5億円(ビニルハウス・車両等。減価償却期間は4~14年)となる。販売初年度はフロー売上が計上されるため利益率が高くなるが、2年目以降はフロー売上がなくなり減価償却費や維持費用が残るため、利益率が低下することになる。2024年11月期の営業利益率は約34%の水準だが、ストック売上だけでは10%台と見られる。屋内型農園の場合は、設備投資額で3.5~4.5億円となるほか、電気料金や賃料負担などの固定費負担が屋外型と比べると重くなるため、開園後の販売の進捗状況によって利益率が短期的に低くなるリスクがある。
就業者の定着率は約92%(就職後1年間)と一般企業に就職するよりも高く、同社サービスの長所の1つである。就業者が安心して働ける環境の整備に取り組んでおり、顧客企業や就業者またはその家族からの評価も高い。解約は2024年11月期で13社発生したが、いずれも顧客事由(業績不振、経営体制の変更等)となっている。解約で空いた区画については、栽培設備の状態が良好な場合は定価からディスカウントして新規顧客企業に再販しているが、人材紹介料については解約先企業で就労していた人員をそのまま新規顧客企業に引き継ぐため徴収していない。利益面への影響については、栽培設備を再販することによる利益貢献額が紹介料を上回るため、解約後の区画を再販するケースのほうが利益率はやや高くなるようだ。
(2) 広域行政BPOサービス
子会社の(株)エスプールグローカルで展開する広域行政BPOサービスは、2021年11月期より開始した。人口20万人以下の小規模自治体を対象とし、今まで各自治体が個々に行っていた住民サービス(問い合わせ対応や給付金やマイナンバーカード申請等の事務処理業務)を、複数の自治体で一括して受託するシェアード型サービスとなっていることが特徴だ。大型ショッピングセンターなど利便性の良い場所に同社が行政サテライトカウンターを開設し、対面または情報端末を設置してオンラインで対応している。1拠点当たりの年間売上収益は1~1.5億円(雇用者数約30名)、営業利益率で30%程度を獲得できるビジネスモデルである。現状はスポット案件が売上の過半を占めており、その動向によって収益性も変動する傾向にあるが、将来的には自治体の定期業務を売上の主体として収益性の安定化を図る戦略だ。2024年11月末時点で全国に21のBPOセンターを開設している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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