1stコーポ Research Memo(7):再開発事業、アクティブシニア向けマンションなどの展開で収益基盤を多様化
*13:17JST 1stコーポ Research Memo(7):再開発事業、アクティブシニア向けマンションなどの展開で収益基盤を多様化
■今後の展開
1. ウェルビーイングシティ構想と分譲マンション自社ブランド「CANVAS」の推進
ファーストコーポレーション<1430>が今後注力する領域として最初に取り上げたいのが「ウェルビーイングシティ構想」である。この構想に基づき分譲マンション自社ブランド「CANVAS」を立ち上げ、現在、第1号案件の「CANVAS南大沢」の分譲が行われている。
「CANVAS」は人生100年時代に対応した、「住まい」の提供に留まらず、「豊かな暮らしを実現するための様々なサービスを提供し続けることで、持続的かつ多面的に満たされる暮らしを提供し、持続可能な社会の構築に貢献する」というミッションに基づいている。こうした物件は従来、高齢者のみを対象にしたシニアマンションが中心だったが、「CANVAS」は全世代を対象にしている点が最大の特徴である。多様な働き方を志向する単身世帯、若い家族世帯など、様々なニーズが存在する現在において、外部の機関と連携しニーズを満たす多様なサービスを提供する全世代型マンションは、今後のマンション形態のメインストリームになる可能性が十分にあると弊社は考えている。
2. アクティブシニア向けマンション
同社の将来的な成長を考えるうえで注目すべき領域は、健康な高齢者、いわゆるアクティブシニア向けマンションだ。高齢者向けのマンションにおいて、多くの業者が展開しているのは介護付きのサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)であり、アクティブシニア向けを手掛ける業者は少なく、同社はこの領域で先行している。アクティブシニア向けは、そもそも通勤仕様ではないため、駅前立地でなくて良い。さらに、温泉やジムなど付帯設備の建設で単価をアップさせることができ、収益性の観点からも期待できる。東京都稲城市のダイヤモンドライフ若葉台は、アクティブシニア層を主要ターゲットとして共同事業で建設したマンションであり、完売している。
大型案件のなかには、デベロッパーと共同事業で行うケースもある。2025年5月期中間期末時点でも、複数の案件を施工・分譲している状況だ。共同事業は効率的に収益をあげられることから、中長期的に共同事業に注力する方針で、今後はデベロッパーとジョイントする案件が多くなると考えられる。2024年7月には共同事業の推進を前提として、福岡県福岡市博多区の事業用地を購入した(2025年1月売却済)。共同事業の推進によって、トップラインの拡大と収益性の向上が期待される。
また、取引先が増加している点にも注目したい。2020年5月期の取引先は31社だったが、2021年5月期には三菱地所レジデンス(株)、野村不動産(株)、2022年5月期には(株)フージャースコーポレーション、2023年5月期には大和ハウス工業<1925>、ナイス<8089>、2024年5月期中にはヤマイチ・ユニハイムエステート<2984>、(株)トーシンパートナーズ、2025年5月期中間期にはパナソニックホームズ(株)、住友商事<8053>、相鉄不動産(株)と新たに取り引きを開始し、取引先は41社まで拡大した。このほかの取引先としては、(株)アーネストワン、東京建物<8804>、中央日本土地建物(株)、日鉄興和不動産(株)、三井不動産レジデンシャル(株)、阪急阪神不動産(株)、(株)中央住宅といった大手デベロッパーが数多く名を連ねている。今後、取引先の拡大とともに、ビジネスの幅も広がっていきそうだ。
再開発事業の開花により収益は上昇基調に
3. 再開発事業
同社は、再開発事業にも注力している。この領域では、JR前橋駅北口地区第一種市街地再開発事業に事業施行者として参画し、地上27階建ての施設を建設してきた。同プロジェクトは2024年3月に完成し、6月に顧客への引き渡しが完了した。再開発第1号案件である大型プロジェクトの完工を通して同社は、再開発事業と高層建築に関するノウハウを蓄積できた。同プロジェクトに対する周囲の評価も高いという。今後は、再開発事業とタワーマンションなどの高層建築の領域により積極的に進出する考えだ。再開発事業に関しては、青森県弘前市でも既に用地を取得し、準備組合に加盟するなど事業計画の具体化に向けて取り組んでいる。また、神奈川県横浜市緑区でも大規模事業に参画しており、デベロッパーとジョイントで計画を具現化する方針だ。さらに、2025年5月期中間期には長崎県大村市で実施される予定の「大村バスターミナル地区市街地再開発事業」に事業協力者として参画することを正式に公表している。将来的にこれらの再開発事業が次々に開花すれば、同社の収益は確実に上昇基調になると思われる。
郊外の好立地案件に引き続き注力
4. アフターコロナへの対応
コロナ禍によって普及したテレワークなどをはじめとする新しい生活様式は、マンション販売動向にも影響を及ぼした。アフターコロナに移行した現在は出社回帰などの流れはあるものの、マンションの販売価格は、都心部の高価格帯物件と郊外のリーズナブルな物件の二極化が進んでいる状況だ。好立地の郊外案件に対するニーズが旺盛な状況が継続しているなか、同社は引き続き郊外の案件に注力している。2025年5月期中間期には、新たに東京都八王子市、神奈川県海老名市、埼玉県朝霞市などで分譲マンションの建設を開始した。また、埼玉県熊谷市などでは、マンション建設のための事業用地の仕入れ・売却を行った。
コロナ禍にあっても同社は、主力のマンション建設に加え、自社ブランドの分譲マンション事業、アクティブシニア向けマンション事業、再開発事業を新たな軸に事業の拡大に注力してきた。今後も各事業を着実に成長させることによって、後述する中期経営計画「Innovation2024」の実現を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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