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ティア Research Memo(10):M&A後のPMIを推進し、早期のシナジー創出を目指す

2024年06月12日 14:10 銘柄/投資戦略

*14:10JST ティア Research Memo(10):M&A後のPMIを推進し、早期のシナジー創出を目指す ■今後の見通し

2. 2024年9月期の重点施策
ティア<2485>は2023年9月期以降の成長戦略として、1) 直営・FC会館の計画的な出店(年間で直営7~8店舗、FC6~8店舗)と既存会館の持続的な成長、2) 中核エリアのシェア向上にこだわった営業促進の実施とマーケティング力の向上、3) 葬儀付帯業務の内製化拡大と、行動力と分析能力を高めたM&Aの実行、4) 計画に則した人財確保・育成と次世代基幹システムの構築、の4点を掲げその取り組みを推進している。

このうち、出店戦略については順調に進んでおり、中核エリアのシェア向上に関しても、低価格プランである「ティアシンプル」の提供により非会員の需要取り込みに成功し、名古屋市内におけるシェア向上に貢献するなど、多様化する葬儀ニーズに対応したマルチブランド戦略が奏功しているものと評価される。

また、付帯業務の内製化についても主力の中部地区を中心に着実に進んでおり、原価率の改善要因となっている。特に2024年9月期第2四半期累計は、関西地区で「湯灌・エンバーミング」の内製化が前期の48.8%から93.3%と大きく上昇した。なお、東海典礼でも生花事業を行っており、現在30%台にとどまっている中部地区での生花の内製化率も今後上昇するものと見込まれる。

当面の注目点としては、今回実施したM&Aによってどの程度業績面でシナジーを創出できるかという点が挙げられる。業績面でシナジー効果が確認されれば、今後もM&A戦略の推進によって同社が長期目標として掲げる「ティア」ブランドの全国展開達成の可能性も高まるためだ。シナジー創出のためのPMIについては、八光殿、東海典礼それぞれと定期的に協議しながら推進している。コーポレート部門においては決算対応やガバナンス体制、内部統制システムなど上場企業の基準に準じた体制構築のほか、IT統制の構築やHRの最適化なども進める予定だ。一方、シナジー創出が期待されるブランドPMIについては、中長期の出店方針やブランドの棲み分け、オンライン・オフラインでのマーケティング戦略、葬儀付帯業務のオペレーション統合、商品・物流部門におけるグループ間取引やパートナー企業の最適化、商流の最適化などについて順次進める方針だ。

既に重複するエリアでのリブランディングについてはスタートしており、中長期出店戦略についても八光殿、東海典礼がそれぞれのエリアで地域特性に合わせたブランドで出店を進め、同社は新規出店のためのリソースを他のエリア(中部地区、首都圏)に振り向けることで、グループでの出店を拡大する。今後も各社が持つ経営リソースやノウハウの共有により、グループの事業基盤の拡大と成長を加速していく戦略だ。

また、TLD事業の育成にも注力している。同社は「ティアの会」会員51万人及び提携団体1,375団体という顧客基盤に向けて、葬儀サービス以外の周辺サービスを提供し、顧客LTVの最大化に取り組むことで収益基盤のさらなる強化を目指している。前述のとおり新たに開始したサービスは規模こそ小さいものの順調に成長しており、中長期的には一定の収益基盤を構築し、業績に貢献するものと期待される。同社では今後も新たなサービスの開発を進めていく。

そのほか、同社は人的資本経営の強化及び社員のエンゲージメント向上を目的に、2024年4月より新人事制度に移行した。制度変更の主な内容は、役割等級制度の等級細分化(6等級→8等級)、専門職制度の新設(経験・知見の共有による従業員の意識、葬儀施行品質の向上を目的に、エヴァンジェリストを新設)、人事評価項目の見直し(成果評価、役割行動評価、加点評価の3軸による評価、管理職への目標管理制度導入)、基本給の見直し(ベースアップ、等級上限賃金の見直し)、管理職手当の見直し、子ども手当の支給、有給休暇取得の柔軟化、育児短時間勤務制度の導入、定年年齢の引き上げと再雇用制度の導入、従業員のキャリア形成につながる社内公募制度の導入、などである。これら新制度の導入による中長期的な効果として、従業員のエンゲージメント向上と勤続年数の延長、一定年数経過後の新卒社員の離職率低下につながり、その結果として、サービス品質の向上や採用費・教育研修費の抑制、生産性向上などにつながるものと同社では見込んでいる。

なお、同社は中期経営計画を現在策定中であり、まとまり次第発表する予定だ。新たな計画では今後のグループ戦略や地域戦略なども、より具体的に開示されるものと予想され、その内容が注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


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